表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/59

飼育員さんのお師匠さん(6)

「よし。準備万端よ。」

「はい。では、早速になりますが西門まで向かいましょう。」


戻ってきたアスカさんは先ほどの服装に一枚上着を羽織った姿になっていて普段は下ろしている髪を後ろで括っていました。

手には一冊の本を持っています。

それが何の本かはティーアには分かりませんでした。


「ちょっとその前にいくつか確認しておきたいことがあるわ。今準備してる兵隊さんの数とドラゴンの飼育員の等級と数少なくを教えて。」

「はい。兵士が50。ドラゴンの飼育員は黒等級が4人に白等級が3人です。兵士の装備はある程度は揃っています。」


ベールニック皇太子様の言葉をふむふむとアスカさんは聞いていました。


「分かった。まあ、十分ね。そしたら…………確かドラグニア王国の西側には沼地があったわよね。」

「ええ、あります。森の中ではありますが底無し沼と言われてあまり人が立ち寄らないところが…………ですがそこがどうかしましたか?」

「うん。結構それが大事なの。」


ドラゴンとはあまり関係が無さそうな事ですがアスカさんはそれを確認すると何か確信を得たかのようにニコッと笑いました。

そして、持っていた本を脇に挟むとくるりと向きを変えてティーアの方を見ます。


「じゃあ、ティーア。私はちょっと行ってくるから後はよろしくね。私の予想が正しければ、たぶん今晩か明日の朝には帰るよ。」

「…………分かりました。」


アスカさんはティーアの顔の位置まで顔を下げるとティーアの両肩にポンと手を置きました。

本音を言えばティーアもアスカさんと一緒に行って何か手伝いをしたいと思いましたが所詮まだ見習いでしかないティーアが行ったところで足手まといになるのがオチでしょう。

今回はここにいるのが正しい選択であることは明白でした。


「じゃあ、竜舎は見ておいてね。たぶん大丈夫だとは思うけど。念のため今日は外にはドラゴンは出さないようにして。何があの子達に影響を与えるか分からないから。あと、戸締まりはしておくんだよ。」

「…………そこまで言われなくてもティーアは大丈夫です。子供じゃないですから。」

「はいはい。分かりました。アスカさんが居なくても寂しくて泣くんじゃないよ。」

「泣きません!」


…………もう。アスカさんはこんな時までこんな感じです。

大変な仕事になりそうなのに緊張感がないと言うか、平常心というか余程の自信があるのでしょうか?


「じゃあ、行ってくるね。ベール君よろしく。」

「はい。」


アスカさんはベールニック皇太子様に声をかけると外に出ました。

ティーアも玄関まで見送りをします。

外は遠くではありますがまだ鐘の音が聞こえてきています。

未だに警戒は解かれてはいないようです。


「さあ、アスカさん!捕まって。」


ベールニック皇太子様は先に馬に乗るとその後ろにアスカさんを乗せるためにアスカさんに向かって手を差し出しました。


「ありがと。皇太子様の後ろなんて自慢になるわね。」

「ははっ。そんな事は本心ではないでしょう。」


アスカさんが手を取り後ろに乗ると冗談っぽく言いました。

ベールニック皇太子様も分かっているように答えます。


「じゃあ、ティーア行ってくるね。」


アスカさんが馬の上からティーアに向かって手を振ります。

その姿はこれから遊びに行くような姿でした。

その姿はティーアの事を気遣っての姿なのかそれともアスカさんの素の姿なのか分かりません。


「アスカさーん!気を付けて下さいね!」


アスカさんを乗せたベールニック皇太子様の馬はすぐに見えなくなってしまいました。


「…………本当に行ってしまいました。」



ティーアは一人家の中に戻りました。

主の居なくなった家はしんと静かでした。


「…………そういえば、アスカさんが家に居なくてティーアが一人なんて初めてです。」


この場所にはアスカさんが常にいました。

1日足りとて空けたことはありませんでした。

ティーアには休みをくれる事はたまにありましたが、そういえばアスカさんが休みで何処かへ行くのを見たことがありませんでした。

外に出るのが買い物なんかもティーアに全部任せていたので外に出るのが嫌なのかなと思ったこともありましたがそうでもなかったようです。

そうですよね。

出不精の人が皇太子様に尊敬されるような人になるわけないですもんね。


「…………そうでした。竜舎へ行かないと。」


アスカさんが居ないからといってのんびりしてる場合ではありませんでした。

ティーアにはティーアのお仕事があります。

アスカさんが帰って来た時に笑われないように立派にやっておかないといけません。


「とりあえず、ドラゴンの様子を見て…………ご飯はまだ早いですよね。掃除は終わったし……外には今日は出さないし…………。」


自分でやるべき事をぶつぶつと呟きながら竜舎へ向かいますがいまいち何をしていいのか分かりません。

そう言えばいつもアスカさんに言われたことをローテーションでやっていたのでした。


「とにかく行ってから考えましょう。」


竜舎を開けると中は普段といたって変化はなく三匹のドラゴン達も普段通りの雰囲気で元気いっぱいでした。

普段なら散歩の時間でもあるためか外にヤットに至っては外に出たいのかティーアを見つけるなり声を上げてました。


「ごめんね。今日はちょっと外には出れないの。我慢してね。」

「グワッグググルグー。」


やはり不満ですよね。

声から分かりましたが今日は我慢してもらいましょう。

他の二匹は特に何も無いようでした。


「うーん。後は特に晩御飯まで何もないかな…………念のため上以外の窓は閉めましょう。」


竜舎には換気の意味もあっていくつか窓があります。

そのため結構外の音が入ってくるのですが今は念のため閉めておくことにしました。

外の音も聞こえますしね。

敏感なドラゴンが調子を悪くしないためです。

でも、全部閉めると換気が悪くなるのも怖いので上だけは開けておくことにしました。


「これでよしと。じゃあまた後でね。」


ティーアは窓を閉めるとドラゴン達のところを一旦離れました。


「あれ?止んでる…………」


竜舎の外に出るとティーアは鐘の音が止んでることに気が付きました。

それは、街の警戒が解かれたか何だかの事が起きたことを意味しています。

まさか、もう、アスカさんが片付けてしまったのでしょうか?とも思いましたがさすがに早すぎます。

恐らく何かしらの進展があってのことでしょう。


「大丈夫です。アスカさんなら…………」


ティーアはそう信じて家で待つことにしました。

しかし、その後は特に何が起こるわけでもなく時間だけが過ぎました。

最初はアスカさんがいない間もしっかりやろうと意気込んでいたティーアでしたが外にあまり出られずに時間をもて余してしまいました。


「本当ならドラゴンの世話やアスカさんの相手をしないといけないんですが…………」


長めのティータイムもアスカさんの事でいっぱいになります。

今はアスカさんは無事なのでしょうか?


「……そろそろ、晩御飯の準備もしないと。アスカさんが戻るかもしれないから置いてあおけるものにしましょう。早ければ今晩には戻ると言っていましたからね。」


そう思い遅くに戻ってもすぐに温めて食べられるような物を準備して待ちました。

せっかくなら一緒に食べたいですから。

しかし、夜が更けてもアスカさんは戻ってきませんでした。

ティーアは途中で諦め一人で食事を終えお風呂も済ませてしまいました。

外はもう真っ暗です。


「…………でも、明日になるかもって言ってましてしね。大丈夫ですよ。」


玄関から外に出て西の方角を見てもここからでは勿論何も見えませんでした。

しかし、あの方向に恐らくアスカさんはいるはずです。


「……まだ頑張ってるんですかね?早く終わりるといいですね。」


ティーアは西の方角に向かってアスカさんの無事と早く終わる事をを祈りました。

きっと届いてくれるはずです。


「…………もう少しだけ待ちましょうか。帰って来るかもしれませんし。」


さすがにアスカさんが帰って来たのにティーアが寝ていては可哀想です。

それにティーアが先に寝てると知ったら寝込みを襲われるかもしれませんしね。

不思議と眠くありませんし…………眠れないが正しいのかもしれませんが。

お茶を飲みながら少し待つことにしました。

自然と窓際に椅子を持ってきて外を見ながらになってしまいます。


「はあ…………しかし帰ってきませんね……どんな状況なんでしょうか?」


辺りはティーアの心配とは裏腹に夜の静けさで風の音がするくらいです。

夜ってこんなに静かだったんですね。


「それにしても…………アスカさんて何なんでしょ?ベールニック皇太子様にあんな口を利けるなんて。ティーアには恐れ多くて…………」


アスカさんがベールニック皇太子様に色々と教えて上げたと言っていましたがどんな軍時代だったのでしょう。

ベールニック皇太子様はアスカさんに怒られたとも言ってましたね。

アスカさんにもベールニック皇太子様にも聞きづらいのでフラミーさんに今度聞いてみましょう。

あの人は何でも知ってますから…………


「もし…………あの二人の……関係が……」


不覚でした。

リラックス効果のあるカモミールがいけませんでしたね。

ティーアは色々と考えているうちにそのまま眠りに落ちていきました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ