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飼育員さんのお師匠さん(3)

「はあ、はあ、やっと見えた。」

「おーい。ティーア!頑張れー!」

「はあ、アスカさん?」


流石に街から走ってくるのはティーアには厳しいものがありましたが何とか家や竜舎が見える所まで来ました。

思った通り特に何もなく、普段と変わりない姿で立っていました。

すると、何処からでしょうか遠くから声がしました。

間違いなくアスカさんです。

しかし、キョロキョロと辺りを見回しましたがアスカさんの姿はありません。


「ここ、ここ!」

「はあ、あ、あんなとこに。」


アスカさんは屋根の上にいました。

屋根の上に立ってこちらに向かって大きく手を振っていたのです。


「はあ、はあ、ふう、ア、アスカさん!何やってるんですか?こんな時に!」


息切れ切れで到着したティーアは屋根の上のアスカさんに呼び掛けました。

待ちから少し離れていてもここまで鐘の音が届いてきて、未だに緊迫した街の雰囲気が伝わってきます。

しかし、一方でアスカさんの方は…………


「んー?鐘の音がしたからここから見てたの。それにしてもティーア足遅すぎだよ。もっとこうさ、腕振って走んないとダメだよ。」


なんて言いながら屋根の上で呑気に腕を振る仕草をしていました。

アスカさんはこの緊急事態を認識していないのでしょうか?


「アスカさん!そんな事じゃなくて分かってますか?」

「んー?何が?」


ティーアがやっと呼吸を整えアスカさんに声を張り上げて問いかけます。

しかし、アスカさんはあっけらかんとした様子でした。

この人は正気なんでしょうか。


「何が?じゃないですよ!ドラゴンが出たって街は大騒ぎなんですよ!鐘の音が聞こえてるんでしょ?」

「あー、その事?まあ、とりあえず降りるね。ティーアも家に入んな。」


そう言うとアスカさんは慣れた様子でするすると屋根をおりてまたティーアの部屋の窓に入りました。

…………そこから屋根には登らないでって何度も頼んでるんですけどね。

そんな事を思ってる場合ではありませんでした。

ティーアは急いで家の中に入りました。


「アスカさん!アスカさん!」

「はいはい。ここだよ。」


ティーアが呼ぶとアスカさんは落ち着き払った様子で階段をトントンと降りてきました。


「アスカさん、何をのんびりしてるんですか?大変なんですよ。」

「分かってる分かってる、大丈夫だから。」

「何がなんです?だって…………むぎゅ。」

「はいはい、落ち着いて落ち着いて。」


興奮気味だったティーアは一瞬なんだか分かりませんでしたが、一呼吸して気がつきました。

アスカさんがティーアの事を正面から思いっきり抱き締めていました。

息を吸う度にアスカさんの良い匂いがします。

普段の汗の匂いとは違うとても落ち着くような匂いがしました。

思わずアスカさんの胸元で深呼吸をしてしまいました。

ティーアを抱き締めている間アスカさんはティーアの頭を包むようになで回していました。


「…………アスカさん。ありがとうございます。落ち着きました。ご迷惑をかけま…………むぐぅ。」

「うんうん。よしよし。あぁーっ。」

「あのー?アスカさん?」


物凄く嫌な予感がします。

アスカさんから体を離そうとしましたががっちりと捕まれて動くことすら出来ません。

まずいです。

しかもなんか奇声あげてません?


「…………あの、アスカさん?ティーアはもう落ち着きましたので、取り乱したことは謝りますから離して貰えませんか?」

「それは無理。やっとティーアが私の胸に飛び込んできたんだから。この感動は永遠のものにしないと。」

「…………はあ。」


後半は訳が分からないんですけど…………アスカさんがやっぱり変な人だということは確認できました。

こんなことをしている場合ではないのですが、今度はティーアの体が心配になってきました。

どうやらさっきまで沸騰していたティーアの頭はすっかり冷めたようです。

しかし、このままだと…………


「ひゃっ!どこ触ってるんですか?」

「ん?お尻。」

「普通に言わないで下さい。後、勝手に撫で回さないで下さい!」

「あーあ。」


ティーアがびっくりして思いっきりアスカさんを押すとようやく離してくれました。

本当になんて人なんでしょう。

ティーアのさっきのまでの感激を返して欲しいです。


「まあ、しょうがないか。とりあえず落ち着いた?」

「わざとだったんですか?」


やっぱりさっきのはティーアを心配してくれてわざとらしくやったのでしょうか?


「うーん。ティーアのお尻はもう少し弾力が…………やはり食生活が…………」

「…………じゃないみたいですね?」


アスカさんはなにかしょうもないことをぶつぶつと言っていました。

まったくいちいちアスカさんて人は………しかし、ともあれこれで冷静に話すことが出来ます。


「アスカさん、気付いているとは思いますが…………」

「はいはい。ドラゴンが西の方に現れたんでしょ?」

「はい…………そうです。」


あれ?ティーアはドラゴンが西に出たなんて言いましたっけ?

確かにドラゴンが出たのは鐘の音で分かりますが方角までは鐘の音では分かりません。

街の中なら兵隊達が叫んでいたので分かりますが流石にここまで兵隊達の声は届きません。

…………では、どうやって?


「…………なんで方角まで知ってるんですか?確かにドラゴンは西の方角に出ましたけど……」

「ん?屋根の上から見ててそう思ったの。西門ならなんとなく見えるしね。兵隊がわちゃわちゃしてたのが見えたの。」

「そう…………なんですか……」


ティーアは屋根には登ったことがないので何処まで見えるかまで知りませんでしたがアスカさんの家は少しだけ小高い丘にあるので遠くまで見渡せるのかもしれません。


「それに、あの感じなら大丈夫だよ。少なくともここにドラゴンが来ることは無いよ。」

「…………はあ。」


そこは金等級のドラゴンの飼育員の勘なのでしょうか?

でも、アスカさんがそう言うならきっとそうなのでしょう。


「それに、ドラグニアの軍はドラゴン専門だし、軍お抱えのドラゴンの飼育員がなんとかしてくれるでしょ?金等級のザハスもいることだし。」


アスカさんは他人事といった感じで言っています。

まあ、元々そこにいたアスカさんが言うのなら間違いはないでしょう。

ん?ちょっと待ってください。


「ア、アスカさん大変なこと忘れてました。」

「ん?何?あっ分かった。甘え足りない?本当にティーアは…………」

「ち・が・い・ま・す!今は軍には白と黒等級のドラゴンの飼育員しかいないんです。それに軍も半分は王様達に着いて国外に出てるんです。」


そうです。

ロックが言ってましたが、今はザハスさんを初めとした上級のドラゴンの飼育員や兵隊さん達は王様、王妃様と一緒に国外にいるのです。


「えっ?そうなの?てかなんでティーアはそんな事を知ってるの?」

「えっと…………それは……そうです。兵隊さんが言ってました。とにかく今はドラグニアは王様もザハスさんもいないんです。」


なんとなくロックに聞いたとは言いたくなくて兵隊さんのせいにしましたけど守りが薄いのは確かです。


「ふーん。じゃあ、今は誰が城の統括取ってるの?そんなに人がいないんじゃまずいんじゃないの?」


確かにアスカさんの言うことはもっともです。

しかし、ちゃんと統括をとっている人はいます。


「それは恐らく大丈夫です。なんでも、ベールニック皇太子様が今は城に戻っているらしく指揮を取られているはずです。」

「ベールニック皇太子?ベールニック…………ベールニック……ああ!そうか。なるほどね。」

「?どうしたんですか?」

「ううん。何でもない。」


アスカさんは何度も何度もベールニック皇太子の名前をぶつぶつと口にして何かを考えていましたが突然何かを納得したかのように大きな声をあげました。

もしかして、ベールニック皇太子様を知らなかったのでしょうか?

さすがにそんなわけはないでしょう。

元々あの城にアスカさんはいたのですから、何処かで接点はあったはずですから。


「まあ、でもベールニック皇太子様ならきっと上手くまとめあげて下さるはずです。ティーア達はとにかくここを守ってドラゴンが去るまで待ちましょう。」

「んー。まあ、そうだね。何とかしてくれるでしょ。じゃあ、一応竜舎でも見てこようかな。みんなデリケートだからさ。ほら、ティーアも行くよ。手伝って。」

「はい!分かりました。」


アスカさんの呼び掛けに対してティーアが応じて二人で竜舎に向かおうとしました。

その時でした。

ガンガンガン!ガンガンガン!

家の扉を強く叩く音がしました。

そして…………


「この家に金等級のドラゴンの飼育員。アスカ様はおられますか?」


扉の向こうから男の人の声が聞こえてきました。

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