飼育員さんのお師匠さん
新しいの始めました。
また、ちょっとずつ進めます
よろしくです。
ガンガンガン!ガンガンガン!
「すみません!金等級の飼育員。アスカ殿はいらっしゃいますか?」
強く家の扉を叩く音の後に野太い男の人の声が響き渡ります。
…………あまり強く叩かないで欲しいのですが。
そもそも、この家にはあまり来客はありません。
来るのはフラミーさんくらいのものでした。
しかし、最近はめっきり変わってしまったのです。
「はい。どなた様でしょうか?」
ティーアはそっと扉を開けます。
そこにいたのは声とままといった感じのがっちりした体格をしたいかにも勇ましそうな男の人でした。
しかし、それでいて服装は綺麗な布で出来たきらびやかな装飾の付いた服装をしています。
一般庶民には決してすることの出来ない服装です。
お客様の応対は基本的には先にティーアがします。
特に最近は必ずといっていいほどティーアです。
それには理由がありました。
「失礼。我輩の名はバレス!カペー家の長兄にして軍司として名を馳せし者です。」
おお。カペー家といえばドラグニアにおいては上級貴族の一つです。
そこの長兄ということは跡継ぎの方で間違いはないでしょう。
しかし、最近はそういった類いの方がよく来られます。
「初めましてバレス様。私はティーアです。アスカさんの弟子です。ご用件は何でしょうか?」
ティーアも対応が板についてきました。
対応も下から過ぎることなくそれでいて丁寧に対応していきます。
「うむ。実はアスカ殿を当家に招きたく馳せ参じました。当人は居られますか?」
「そうでしたか…………えーっと……申し訳ございません。只今アスカさんは遠くの国で国家間の仕事の最中でして、一年は戻りません。お手紙で伝えてはおきますが直ぐに返事はしかねる状態なんです。」
「そうでしたか…………では、今はどちらに?私が自らその場に赴きます。」
うん。しつこい方ですね。
では、こうしましょう。
「すみません。秘匿の任務ゆえ誰にも言うなとの事です。もし、これが漏れると死罪です。あなた様をそうさせる訳には参りません。今回は申し訳ありませんが何卒お引き取り下さい。」
「…………そうでしたか。」
バレスさんなる方は渋い顔になってしまいました。
おっ、押しきれそうですね。
ティーアとしてはさっさと帰ってもらいたいのですが。
「…………それは手間をかけさせてしまった。ではアスカ殿がお戻りになったらカペー家までご一報をお願いしたい。」
「分かりました。」
「では失礼。」
バレスさんはティーアに頭を下げると綺麗にくるりと回って行ってしまいました。
今回の方は比較的清々しい方でした。
というか死罪になるほどの秘匿って凄いですよね。
「……ふう。」
バレスさんが見えなくなったのを確認してティーアは扉を閉めます。
上級貴族の方はいまいち何を言ってくるのか分からないところがあるので緊張します。
基本的にわがままなんですよねあの人たちは。
扉を閉めるとティーアはアスカさんの書斎兼研究室へと向かいます。
コンコンとノックをすると少しうんざりといったような雰囲気を持ちつつ中に向かってティーアは言いました。
「アスカさーん。もう帰りましたよ。」
「んー!」
「入りますよ。」
中から適当な返事がしたのでティーアは中に入りました。
アスカさんは自分のデスクで本を読んでいました。
実はさっきのアスカさんについての話は全て嘘です。
ティーアを使った居留守です。
アスカさんは遠くの国へなんて行ってないし、国家間の仕事なんて請け負ってもいません。
最近はこの書斎兼研究室に隠って読書三昧です。
「ねえねえ、ティーア。今回は何だった?」
「カペー家の長兄の方が来ました。アスカさんを招きたいそうです。」
アスカさんは本をデスクに置くとティーアに聞いてきました。
アスカさんはこの状況を少し楽しんでいるような様子でした。
「うーん。カペー家の長兄か…………悪くはないね。いい生活が出来そうだね。」
「…………じゃあ、いると伝えてきますか?」
「あーん。ティーアのいじわる!」
全く…………この人は自分が撒いた種でこうなったことを理解していないのでしょうか。
ティーアは毎日毎日こんな感じで結構うんざりしてました。
「アスカさん何時までこんな感じなんですか?」
「うーん。分かんない?飽きられるまで?」
「…………はあ。ティーアは勘弁して欲しいです。」
ドラゴンのお仕事は最低限はティーアが一人で出来ますし、アスカさんも早い時間なら出てきても大丈夫なので出来ることはしてもらっていますが、普段の生活を早く取り戻したいです。
「うーん。それにしてもやっぱり面倒な事になっちゃったね。」
「…………面倒な事にしたのはアスカさん自身ですけどね。」
そうなんです。
実はアスカさんがこんな感じで引きこもりみたいになってしまったのには訳がありました。
そう。あれは3日ほど前の話でした。
何でもない普通の日だったです。
…………少なくとも最初のうちは。




