飼育員さんの別れ(4)
「フラミーさん…………」
「…………何?」
「ティーアはアスカさんの事を理解できていないようです。そんなティーアがアスカさんのようになれるのでしょうか?」
「うーん。どうだろ?」
ティーアの問いかけに対してフラミーさんからの返答は曖昧なものでした。
「理解しなくてもいいんじゃない?」
「…………はい?」
「だから、理解しなくても大丈夫だと思うよ。」
「…………はあ。」
フラミーさんの言っていることが全くティーアには分かりませんでした。
やってることを理解出来ないでアスカさんのようになれるのでしょうか?
「だってそもそもティーアちゃんとアスカは違う人間なんだから理解出来なくて当然じゃない。私なんてティーアちゃんよりずっとアスカとは付き合い長いけど分かんない事だらけだよ。」
「それはそうですけど…………」
アスカさんがやっていることを理解出来ずにどうやってやればいいのでしょう。
今日だけでいくつもティーアはアスカさんと考えが違っています。
「それにアスカさんはさ、一つ一つの行動に対してティーアちゃんに何か言う?」
「いえ、何も…………言いません。」
そうです。
アスカさんは基本的には何も教えてくれません。
ほとんどティーアが自分で答えを探しました。
「たぶん、それが答えじゃない?アスカは何も言わないんじゃなくて何も言わなくていいと思ってるんだと私は思うよ。」
「どういうことです?」
「まあ、これは私の予想でしかないんだけどアスカが何も言わないならティーアちゃんはどうやって勉強してるの?」
「えっと……基本的には見てです。良いところはお手本にしてます。後は自分で考えてます。」
ティーアなりの勉強でやっています。
ただそれがアスカさんの考えと合っているかが分からないのです。
「アスカはそれに怒る?」
「いえ、ご飯の配合はティーアが分析しきれないと何回もやり直しですけど基本的には何も言わないです。でも、この間少しだけミーアの事で落ち込んだティーアを励ましてくれました。」
「ということはそのままでいいんじゃない?アスカはティーアちゃんのやり方を探して欲しいんだよ。自分を手本にして。だから、ティーアちゃんがやってても怒らない。でも、違っているところには厳しくやり直させる。んで、落ち込んだ時にはアスカなりに励ます。問題は無いと思うけど。」
「そうなんでしょうか?でも、それだとアスカさんのようなドラゴン飼育員にはなれません。」
アスカさんとは違ってしまいますから。
「……ティーアちゃんはアスカになりたいの?それともドラゴンの飼育員になりたいの?」
「そ、それは…………勿論ドラゴンの飼育員です。」
「じゃあ、それでいいじゃない。ティーアちゃんとアスカは違う人間なんだから。ティーアちゃんはもっとティーアちゃんらしさでドラゴンと接するべき。その素の姿をドラゴンは見てるよ。」
「そうなんでしょうか?」
まだフラミーさんの考え方が正しいのかティーアには分かりませんでした。
ティーアとアスカさんは違う人間ですが、ティーアはアスカさんみたいなドラゴンの飼育員になりたいです。
その為にはアスカさんの考え方を身に付けるのが一番の近道のように思います。
でも、それはティーア自身ではないとフラミーさんは言います。
それはドラゴンにとってはティーアの偽りの姿に見えるのでしょうか。
「まあ、まだまだティーアちゃんの先は長いんだから思う存分悩みな。答えはどっかにあるよ。師匠がいる間しか出来ないんだからね。有効に使いなよ。」
「…………はい。」
「んで、答えが見つかったら私にも教えてね。」
「はい。必ず。」
「後、この話は二人だけの秘密ね。」
「……はい!」
フラミーさんのお陰でティーアに新しい宿題が出来ました。
これはきっとアスカさんの元を卒業するまでティーアには見つける事が出来ないかもしれませんがその時は必ずフラミーさんに報告しましょう。
毎日が答え探しになりそうです。
でも、それが見つかるということはティーアは立派に成長しているはずですから苦ではないです。
「ほら、そろそろ着くよ。アスカにもミーアにもいつもの可愛いティーアちゃんの顔を見せないとね。」
「そうですね。分かりました。」
そうです。
うじうじしている訳にはいきません。
特に今日は主役はティーアではありませんから。
「はい。着いた。」
「何から何までありがとうございました。先にアスカさんを呼んできますね。」
「うん。お願い。私は馬を繋いでおくから。」
「はい。」
ティーアはフラミーさんにお礼をして馬車を降りると荷物を抱えて家に入りました。
アスカさんは恐らくは今は書斎にいるはずです。
「アスカさん!戻りましたよ。来る途中でフラミーさんに会ったので乗せてもらいました。」
「お帰りー!もう、フラミー来てるの!?相変わらず仕事熱心な。まだ時間には早いよ。」
そうでした。
実際の約束はお昼過ぎでしたがまだお昼前です。
アスカさんは頭をポリポリと掻きながら出てきました。
ティーアは台所でアスカさんに買ってきたものを見せました。
「これで大丈夫ですか?なんか色々とおまけまで貰っちゃいまして……えへへ。」
「おー。やるねえ。可愛がられてるみたいだね。感心感心。どれどれ。うん。いいんじゃない?」
アスカさんは鶏肉とブドウ酒を取り出しじっくり吟味すると満足げでした。
「それで、フラミーは?」
アスカさんはキョロキョロしながら辺りを見回しました。
「ああ、フラミーさんは今は馬を繋ぎに。何でもミーアを運ぶための竜車はまた後で来るそうで先にフラミーさんだけ来たそうです。」
「ふーん。何でそんな面倒くさいことを?」
「今日は品評会の予選会でドラゴンの運搬用に竜車は大忙しみたいですよ。」
「あっ、そっか。今日だっけ?」
アスカさんも今日が予選会であることを忘れていたようです。
無理もないでしょう。
今日はミーアの件でいっぱいのはずですから。
「アスカさんどうしますか?お昼は三人分ティーアがご飯作りますか?」
時間的にはもうお昼の時間です。
晩御飯はアスカさんが用意するとしてお昼はどうするのでしょう。
「うん。お願ーい。」
「分かりました。」
…………意外とあっさりと讓るんですね。
しかしこれで魚屋さんの魚の出番を作れました。
これで作りましょう。
「じゃあ、準備しますんでアスカさんはフラミーさんとお話でもしててください。」
「ういー。よろしくね。」
なんだかバタバタしてしまいましたがティーアはフラミーさんのおもてなしを含めて三人分のお昼を作り始めました。




