表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神と、悪魔と ― ― 過去にある未来 ― ―  作者: 一ノ瀬 俊晶


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/48

断 ~ 不完全な核 ~

 学者たちは、とうとう、辿り着いた。

 オクラスの監視から、逃れる術式。

 だが――

「一時間しか、持たぬか」

「力の理が解けぬ限り、これ以上は無理だそうだ」

「……一時間あれば、十分だ」

「グロストは?」

「あの砦に、気配はない。いるのは、ヴォルガスと、デミウルゴス」

「あれのいない、今しかない」

 賢者は、地図の一点に、指を置いた。

「部隊を、砦まで一時間の地点へ、進める」


-----


 夜。

 砦に、魔物がひしめいていた。

 まず、念話の術式が、部隊に行き渡る。

 次いで、賢者が、一人、また一人と、気配を消していく。

 声もなく、足音もなく、兵たちが、闇に溶けた。


 号令は、音にならなかった。

 全員の頭の中を、ただ一言が、走り抜けた。

 ――今。


 魔物の群れを、縫う。

 誰にも見えない。誰にも、聞こえない。

 一気に、本陣の二柱へ。


 魔法使いたちの火球が、同時に、夜を割った。

「なんだと?」

「オクラス!」

 返答は、ない。

 すべてを視る眼は、その夜――何も、視ていなかった。


 炎が二柱を呑み、剣士たちが、斬り込む。

 支配の声も、歪曲の掌も、視えぬ敵には、届かない。

 一瞬の、出来事だった。


 勝った。

 誰もが、そう思った。


 その時。

 崩れかけた二つの黒が――流れた。

 水のように、互いへ。

 混ざり、膨らみ、ひとつに、なる。

 二柱が、一柱に。

 一回り大きな悪魔が、そこに、立っていた。


 賢者は、思い出していた。女神様の、言葉を。

 ――元は、悪魔は、一柱だった。

 まさか。

 戻れる、のか。


 兵が、薙がれていく。

 背後では、魔物の群れが、我に返る。

 賢者は、死を、覚悟した。


 その足元で、一人の魔法使いが、血の中から、腕を伸ばした。

「核が……不完全、だ……」

 それだけを言い残し、息絶えた。


 核が、不完全――?


 賢者は、選んだ。

 死の名誉では、なく。

 気配を消す術式を、もう一度、己に掛ける。

 仲間の骸の間を、たった一人、駆けた。

 その姿は、誰にも、見えない。

 その慟哭も、誰にも、聞こえない。


 持ち帰ったのは、ただ、一言。

 ――核が、不完全。

 その不確実な、たった、一言。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ