104 キュ
「ワタクシの名前はランメル・L・アト、『ギルド』のグランドマスター、つまりは最高権力者ですわ!」
「あの、この姿勢はどうにかならないですか?」
自己紹介を始めたのは良いが、グランドマスターのランメルは、リュウコを膝の上に座らせ、そのうえでかなり上等な素材を使っているであろう社長椅子のようなものに座ってくるくると回っている。
「あら?旦那様はワタクシの膝の上はお気に召さなかったのですか?」
「いえ、その、旦那様っていうのもよくわからないんですけど。」
「あらあらあら、説明を怠ってしまい申し訳ありません。」
スッとリュウコの脇に手を差しこみ、子供を持ち上げるように膝から下ろす。
そのまま、バチンと強く指を弾き、その音に合わせてゾロゾロと、受付嬢たちが部屋に入ってくる。
いや、ゾロゾロというのは間違いだった。
受付嬢たちの足並みは軍隊もかくやというレベルで一致しており、一つのズレも無かった。
目の前でなければ、1人分の足音と思っても不思議ではないほど。
そんな統率の取れた受付嬢たちが、広い部屋の壁際にずらっと並び、微動だにしない。
「どの娘が良いですか?」
「え?」
「旦那様の好みです。様々なコを用意いたしました。この中で好きなだけ、旦那様の専属受付嬢を選んでくださいまし。」
言われてみれば、様々なタイプ、体形や髪色だけでなく、種族まで様々な者がいる。
全部で30人ほどだが、全員が現代で言うところのアイドルや女優などにいそうなほどの美少女ばかり。歳の頃は10代後半から20代前半が多いように見える。
「へぇ、エルフとかいるんだ。初めて見た。」
「おや?こちらに来てもうかなり経つはずですが」
「んぁ、事情があって、最近まで記憶喪失してたんですよね。」
「ああ、なるほど!わかりましたわ!」
「納得はや……ん?」
当然のように流しそうになったが、リュウコはその内容の違和感を見逃さない。
「こちらに来て?」
「勇者と共にこちらに来られたのでしょう?オニガミリュウコ……それが旦那様のお名前ですわよね?」
「え、えぇ?なんで」
「『ギルド』の情報網を以てすれば、それくらいの情報は朝飯前。旦那様のお友達の事も調査済みです。」
「どぅえ……なんでギルド関係だけこんな、スペシャルエリート系なんだ」
「それはもちろん、旦那様にふさわしい者を集め、育てたからです。」
言っている意味は分からない。
そもそも、気に入った女の子を専属にするとか、突然そんな話を振られた理由も分からない。
「お好きになさって結構です。あぁ、こちらが資料です。」
バインダーのようなものにまとめられた紙の資料。
履歴書のような見た目のものに、所持スキルやステータス、属性などだけでなく、年齢身長体重スリーサイズ好物出身地血液型など、様々な個人情報が一枚ずつにまとめられている。
リュウコは率直に恐怖を感じた。
「旦那様。別に急かしてはいませんので、ゆっくりとお話をしつつ、気になった子に声を掛けてくださいまし。」
「ぁ、はぃ。」
もう恐怖しか感じず、返事とかもまともにできない。怖すぎる。ナニコレ
「ああ!気が利かずにすみません。」
亜空間のようなものから取り出したティーセットと彩り豊かな菓子。
机の上に並ぶそれらの一つ、マカロンのよう菓子を手に取ると、リュウコの口に運ぼうとする。
「あーん。」
「いや、腹減ってない。」
きっぱりと断るリュウコの態度に、まわりの受付嬢の視線が揺らぐ。
「もうっ、相変わらず素っ気ないですわ!」
「……なんでこんな感じに持て成してくる?旦那様ってどういう意味だ?」
「愚問ですわ。それは、ワタクシと旦那様が、運命に定められた恋人であり夫婦であるからですわ。」
「はぁ?」
「ですので、ワタクシは旦那様が幸せになるために、『ギルド』というハーレムを作って待っていたのです。」
◇◆◇
結局、専属候補と言われた受付嬢は、大量にいたらしい。
30人くらいを何セットも入れ替え、その度にプロフィール資料を見せられ、その内容に目を通す。
それを何度も繰り返して、日が傾くほどの時間が流れた。
「ん……」
もう、ランメルの奇行に慣れてきて、どうにかこの場を終わらせたい一心で色々な資料を見ている。
そんな時に、リュウコは一人の受付嬢の資料で手を止めた。
「その娘が気になるとは、やはりお目が高いですわ。」
ステータス情報はリュウコにとってあまり意味が無い。
一見すれば、ただの褐色系の体育会系の美女。
銀色の髪の毛と濃い色の肌のコントラストがまぶしく、血よりも強い赤の瞳は凛々しい印象を受ける。
「その娘は、世界に21人しかいない魔女の一人ですの。」




