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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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101 入院生活四日目

 まず、ウィンドウショッピングから帰ってきたサティとミリに、盛大に怒られた。

 全身五か所の風穴と、右腕の完全粉砕骨折。

元々両腕が満身創痍だったこともあって、リュウコはこっぴどく叱られ、これからは三人のうちの誰か一人が絶対に見張って、無茶をしないように決まった。


 それどころか、妙な女難の疑惑を持たれたせいで、女性とかかわる事については三人を通して接するようにしようかと話していて、軽く恐怖を覚えた。


 ということで、三人に看病されつつも不自由な生活を送ることになったリュウコ。幸い、『宝力』による自然治癒によって風穴の分は早く治り、多少つっぱるが三日程度で歩けるほどにはなった。

 しかし、右腕はまだほとんど動かせず、地属性系の魔法でがちがちに固められている。

 

 ギルドの職員。主に受付嬢というのは、こういった医療方面にも強く、治療の方法が【聖】属性による治癒の魔法だけではないというのを証明している。


 ベッドから起き上がり、体を軽く動かしているリュウコを見て、大人しめのミリがキッと睨んでくる。

 関節が硬くなってしまうから、ストレッチくらいは赦してほしいと表情で訴えているが、変わらず嫌そうな顔をしている。

 とはいえ、これがサティかエリサなら確実に無理矢理寝かせてくるから、助かっているのだが。


「お嬢さん。こっちの方も看病してほしいな……」

「あなたを看病する義理はありません。」

「ふ、ふ、嫌われてしまったようだね……」


 未だ弱弱しいセイラ。体は快調に向かっているらしいが、取り巻きの女の子たちに負ける姿を見られてからというもの、ほとんど離れて行って何人かしか見舞いに来てくれず、寂しいのかリュウコのお見舞いに来るエリサたちに声を掛けている。


 そして、一部始終をエリサはもちろん、エリサから聞いた二人も、セイラのことを目の敵にしていた。

 難癖をつけてきて勝手に決闘にまで発展させたヤツ。

 それが三人にとってのセイラの評価。

 結果的に振りかかる火の粉であるセイラにヘイトが向いたため、リュウコへのお叱りが少し弱まったこともあるが、それ以外は普通にリュウコからも距離を取られている。


 何故同室にしたのかも、ギルド側の采配が分からない。


「リュー、外には出ないでくださいね。あと、二人の気配がしたらすぐにベッドに戻ってください。」

「はい。」


 一応釘を刺され、絶対外出禁止を言い渡される。これ自体は入院してからずっとなので、少しだけ慣れてきた。


 体の、関節を回してほぐしていく。

関節部分は、軽く外して着けてを繰り返して、できるだけ緊張が無いようにする。

 元々リュウコの体は柔らかい方だが、異世界で修行を積むことによって更なる柔らかさを実現、I字バランスも可能である。

 【治癒】属性は使えないが、魔力による自己治癒力の強化や、【宝力】による身体強化の副次的効果で、多少のダメージや靭帯等の損傷は補強できる。

 

 つまり、痛みに耐えるだけの根性さえあれば、この世界ではいくらでも強くなれるということ。

 そして、リュウコはそれを実践している。


「なぁ、セイラ。」

「……キミと話すと、そこのお嬢さんに睨まれるんだが」

「……ミリ、雑談くらい良いだろ?」


 しぶしぶ、それでも嫌そうな顔は戻さずに、少しだけセイラを見やすいように、座っている椅子をずらす。

 ミリにとって、それができる最大限の譲歩であるとわかっているリュウコは、一回笑顔で返すと、セイラの目を見て話す。


「魔剣って、結構簡単に手に入るものなのか?そもそも、魔法のついている剣との違いは?」


 リュウコは以前、『紋』によって特殊効果を追加した武器を、魔剣と呼んで遊んでいた。

 しかし、セイラの持つ『魔剣』は、その枠とはまるで違うもののように感じる。

 あくまで直感。リュウコとの魔剣の精度の違いがそう認識させるだけの可能性もある。

 そういう可能性も考慮したうえで、セイラに確認することにした。


「どういう……?あぁ、そういうことか。」

「?」

「ボクの扱う魔剣、アレの原材料、基となったのは人間だよ。」

「————!?」


「原理だけで言えば、恐らくは『魔武装』と変わらない。恐らくだがね。」


 淡々とそう語るセイラに対して、特別なリアクションもせず、ただ話す言葉を咀嚼し、理解することに努めるしかできなかった。


◇◆◇


「基となったのは人間、それは、人間を素材にしているとか、そういう次元の話ではない。魂とか、根源とか、そういう面倒な事柄が絡むのだが、それは確かな話だ。少なくとも、この『銀光剣』は私の知り合いから産まれたもの。」

「詳しく、聞いても良いか?」

「『銀光剣』については少しボカす。けど、『魔剣』についてはできるだけ正確に話そう。」


 そう言って、セイラはベッドから上体を起こし、少し喉の調子を整える。


「強固な意志、強力な執着、強靭な未練、それらが複雑に絡み合ったまま死んだ時、人は魔剣に成る。おそらくそれは、特別なことではなく、人間に備わった機能のようなものだと思う。」

「前半はわかった。後半に根拠は?」

「……魔物は『魔武装』になるだろう?であれば、人間も同様である方が自然かなと、そう思っただけだ。」


コロポソードなどと同様、一部の特殊な進化を果たした魔物は『魔武装』と呼ばれる特殊な武器に変身できる。それが、魔物だけの機能ではなく、生物であれば全員持ち得る機能だと。そう言っているわけだ。


「魔剣は基本的に呪いのようなデメリットを持っている。それは、触れているだけで発動するもの、能力を使う時にデメリットを負うもの、永続的なデメリットを背負わされるもの。」

「……そうなのか?でも、」

「ボクの固有属性、【魔剣】の能力だよ。魔剣のデメリット全てを無視することができる。」

「……すごいな。」


 それそのものでは、さほど強くない能力なのかもしれない。しかし、魔剣の性能によってセイラの実力は変動する。試合で見せた三本の魔剣、その性能は中距離に偏ってはいたが、使い方次第。

 少なくとも、セイラはそれでリュウコを瀕死に追い込んでいる。


「で、人が基になっているという話に戻すが、人といっても誰でも良いわけではないのだと思う。」

「その心は?」

「この『銀光剣』の基となった人間は、ボクの母だ。」

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