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ソロと赤の大地5

「おっ」


 司教の呼びかけで王座の間に待機をしていたアルス達の視線が、その司教と共に奥の幕から姿を現した姫君に集まると、ティアラはアルス達に歩み寄った。

 大臣やソロ達の案内を申し付けられたグーケンが頭を下げる中、少女もアルス達にその小さな頭を垂れた。


「以前は失礼いたしました。気が(らく)していたとはいえ、皆様へのご無礼をお許しください」


「いや、何。こちらこそ、大変な中押しかけたりして悪かった」


 アルスが一団を代表するように言うと、ティアラは顔を上げ微笑んだ。

 しかし、すぐにその顔が真剣な面持ちとなると、ティアラは確認するように訊ねる。


「お話はお伺いしました。魔界の門が開き、この世界に大いなる災いが訪れようとしているとか」


「ああ」とアルスが頷くと、ミーニャが代わる。


「魔界の軍に対抗する為には、大聖霊様の御力が必要なのです。その聖霊様が、赤の大地にいらっしゃると聞き、この国を訪れました。どうか、赤の大地に入地させて頂けないでしょうか」


 ミーニャが訊ねると、ティアラは難しそうな顔を浮かべる。


「赤の大地は、この国のみならず、この大陸全土に及ぶ神聖地。本来であれば、王族と王位継承の儀式に関わる者以外をお通しすることはできません。ですが、お話を聞けば、一刻も時間は許されない様子。今回は特別に、赤の大地への入地を許可しましょう」


 アルス達が喜び礼を言うよりも先に、大臣は随喜と驚きの交じった声で叫んだ。


「ティアラ様! ついに王位継承をご決意されたのですか!」


 大臣がそう言うと、ティアラは、すました顔で言った。


「ええ。カルネージ様と相談の上、決定しましたわ。私、カルネージ様と()()この国を治めることにしましたの」


 ティアラの言葉に、王座の間が騒然とする。

 兵士たちも顔を合わせ戸惑うと、大臣も当惑の表情に変わった。


「"共に"とは、一体どういうことなのです?」


「言葉通りですわ。大司教様と協力し、お父様のように、この国をより良き国にしていこうと考えています」


「し、しかし、王位を継ぐ者は王族の者でなければならないはず」


 困惑した大臣がそう言うと、大司教が間に入り、ティアラと大臣を遮る様に言った。


「その点につきましてはご心配なく、大臣。王位継承の儀式を受け、王の座につかれるのは紛れもなくティアラ様にございます。私めは、ティアラ様のサポートをするのみ。支障はございません」


「で、ですが……」


 大臣が拒む様に何かを言おうとすると、少女の声が飛ぶ。


「大臣、これは私と大司教様とで、もう既に決定した事です。これ以上は口を挟まないで!」


 大臣は、何とか何かを言おうとするも、ティアラの言葉に圧倒されたように口を噤み、一歩後ろへ下がった。

 ティアラは大臣からアルス達に向き直ると、再び落ち着いた口調で話す。


「お見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ありません。王位継承の儀式は取り急ぎ、明日行う事にします。明日の早朝、ご同行を願いますか」


「俺達はそれで構わないが……本当に良いのか?」


 アルスが訊ねると、ティアラは微笑み「ええ」と頷いた。


「皆様はお気になさらないで下さい。さぁ、明日は早いです。今日はお早めにお休みになられてください」


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