6-12「黒幕待つギルドへ」
本日2話目です
メイさんと分かれた俺は、中央区に向かって移動を開始する。
アズエルの言葉――「結界から降りている魔力を辿って下さい」。それを思い出し、俺は先ほど一つの魔法を発動させた。
使ったのは《索魔眼》。通常、道具や鑑定スキルを使って数値的に知るか、もしくは感じ取るくらいで目に見る事はできない魔力を、視覚的に捉える為の魔法。早い話、魔力が見えるようになる。
この魔法によって、俺の目には頭上に展開された結界から操り糸のように降りる一筋の魔力が見えていた。そして、その魔力の糸が、中央区の一角に垂れ下がっている事も確認済みである。
アズエルにも言ったが、俺がその場に行った所で何が出来るか正直分からないが、それでも行動することに意味はあるはず。そう信じて、俺は魔力の糸を追い始めた。
◆
道中、何度か雷属性の魔法を行使した。
一応、俺自身にはアズエルが掛けてくれたMDの一つ――《遭遇回避》によって直接的に敵と遭遇せずに済んでいる。だが、周囲には確実に敵がいるわけで、逃げ惑う一般市民の悲鳴と、それらと戦う冒険者や騎士といった戦士達の怒声は耳朶を打ってくる。当然、それらを無視するわけにもいかず、俺が目に入る範囲で魔法による一掃を何度か試みていた。
そのついでに、敵の鑑定も済ませてある。
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【シュミラクラ】魔物
レベル:24
HP:2700
MP:0
◆スキル一覧
『魔力捕食』
常時発動型。
生命体を吸収する事で、その生命体を力に変換して内包する。
変換した魔力を行使する事は出来ない。
『魔力委譲』
常時発動型。
『魔力捕食』によって得た過剰魔力――生命活動に必要な最低限の魔力を除いた全ての魔力を《我ガ狂気ノ執着点》へと自動的に委譲する。
また、『魔力捕食』が長期間出来ず過剰魔力が発生しない期間が増えると、保持者は強烈な飢餓感に襲われる。
『結界依存生命体』
固有特殊型。
《我ガ狂気ノ執着点》内でしか生存する事が出来ない。
結界が解除された時、その存在もまた死滅する。
◆
《我ガ狂気ノ執着点》によって産み落とされる魔力生命体。特定の術中でのみ生存可能な、魔導人形の一種。身体の大部分が魔力で構成された反自立型魔導人形とも言える。全身が魔力で構成されているが故に基本的な感覚を有せず、動く熱源から獲物を認識、捕えた獲物を自らの身体に埋め込むようにして呑み込んで魔力へと分解する。また、上記の特性故に身体はある程度の変形が可能で、腕を元の2~3倍の長さに伸ばして獲物を奇襲する事も可能な他、大型獣の顎の力に匹敵する握力で人間の頭蓋すら握り潰させる。あらゆる面で《我ガ狂気ノ執着点》に依存している為、この魔術が解除された時、存在を保つ事ができず消滅する。
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二足歩行の芋虫みたいな気持ち悪い化け物。初めて見た時、某世界的製薬会社の企業都市か、静かな丘の世界にでも居ろよ!と思った程のグロさに吐き気すら覚えたのが今や懐かしい。
個体差はあれどステータスは全体的に低めなのをこれ幸いと、その気持ち悪さも手伝って若干オーバーキルの魔法で見かける度に一掃しておいた。数に押されて劣勢に成りかけている場面が多かった事もあって、基本的に使ったのはスピードとパワーに優れる雷属性の魔法だったが、その効果は絶大だった、と回想する。
◆
魔力の線を辿って移動する中、その到達点がおぼろげに分かってきた。
この方角、その先にあるのは――
「ギルド、か? まさか」
半信半疑。
馴染がある場所だけにあまり信じたくない気持ちを抱き、俺は走り続ける。
◆
結論から言えば、やはり結界から伸びる魔力の先にあったのはギルドであった。
「なんでだよ」そんな思いを胸に、開きっぱなしになっていたギルドの入り口をくぐる。
そこには――
「アラン!!」
怒声を上げるエドガー。
「このクソガキ!」「何しに来やがった!?」「おめぇが元凶なんだってな!」「アランをどうするつもりだ」「禁呪だと!? なんのつもりだ!」「くたばれ!小僧」
そのエドガーを取り囲むように殺気立った男達が武器に手を掛けての臨戦態勢。
さらに、以前呼び出しを受けた事があるギルドマスターの姿もあり、武器こそ持っていないが、やはり彼もエドガーにたいして厳しい視線を向けていた。
状況はよく分からないが―――
「ちょっとどいてくれないか!?」
よく分からないけどエドガーと諍いを起こしている男達が壁となって、魔力の行き先が遮られる。正直、邪魔である。声を掛けるも、ボルテージが上がっている彼らの耳には届かない。更に2~3回、同じ文句を繰り返すも掻き消され、ものの見事に無視される。
――――ホントに邪魔! 理由は知らないが、この緊急時に邪魔すんなよ!
「邪魔だ!! 退けよ!!!?」
出せるだけの大声を出し、DMの効力で無尽蔵に発生する魔力を外部に向けて放つ。要は、魔力を使った威圧。それをギルドホール全体に放ったことで、ホールは一転、水を打ったような静寂に包まれる。
誰もが声を発生ない。普段なら、そんな物言いをされたら喧嘩腰になってもおかしくない荒れくれ者達でさえ、驚きに言葉を失った。
それは普段、そんな大声を上げる事はおろか、怒る事さえ稀な人物が怒りの声を上げた事。それに加えて、ネズミネズミとバカにしていた奴が放った上級冒険者に勝るとも劣らぬ魔力の放出に肝が潰された結果だったのだが、そんな事俺の知った事ではない。
「な、なんだよ!? お前も、俺が――――」
声を上ずらせ何かを言いかけるエドガーを無視するように、彼の脇をゆっくりと通り過ぎ、俺はその
向こうにいた人物を見据えた。
何度見直しても、結界から降りている魔力の到達点はその人である。
正直、ショックである。思ってもみなかった。
なんでだよ。なんで、こんな事をやったんですか?
嘘だと言ってほしい。
一歩一歩。ゆっくり歩み寄り、その人の前に立つ。
「なんでですか? 何故、こんな事をしたんですか、ジェロームさん!?」




