6-EXTRA(side:エドガー)「俺をコケにした"あいつ"」
「あの野郎! ぜってぇ許さねぇ!」
堪え切れない怒りを吐き出しながら、ほとんど全身から痛みを訴える己の身体を意志と意地で黙らせ、走る。
農耕都市モスティスの中枢、中央区のメインストリート。
このまま真っ直ぐ行けば冒険者ギルドに到達する。
そして、行く手を遮るように次々湧いてくる化け物共。
「クソが。邪魔だってんだよ!」
二足歩行する芋虫とても言う様なそいつらは、確かに斬っても斬ってもキリ無く出てくるが、その強さは大したことがない。せいぜいがCランクの下位って所だ。動きも鈍重となれば、俺の敵ではない。
「そこを退け!!」
最近新調した大剣――バスタードソードを両手で持ち、振りかぶる。
以前、野ネズミに圧し折られた曲刀とは全く趣きの異なる得物だが、不思議とよく馴染む。緩く弧を描いた刀身によって斬る事に特化した曲刀と違い、こちらは1.5メートルほどの長い刀身とおよそ2㎏にも及ぶ重量を活かした一撃一撃の重さが特徴だ。感覚としては、『斬る』というより『叩き割る』が近い。
そんな大剣の一撃で、芋虫人間――シミュラクラの胴体を真っ二つに両断する。
が、分断されて崩れる個体の奥から、すぐさま別の個体が押し寄せる。
返す刃で再度、大剣を振るってそいつを切り払い、戦いを続行しながらも歩みは止めない。
立ち止まってしまうと数で容易く押し潰されるという理由もあるが、そんな事より――
「あの野郎、どこ行った!?」
今はあいつを追わなければならない。立ち止まっている暇はないんだ。
◆
次々と襲ってくるシュミラクラを切り伏せ、メインストリートをひた走る。
奴らは動きが鈍い。ザコ相手に癪な話しだが、その鈍重さを利用して奴らの間をすり抜けるように移動し、正面に立ちはだかった個体以外は極力無視する事で一切止まらず走り抜ける。
「あいつ、ギルドに!?」
シュミラクラに邪魔され開いた標的の背を睨み、その相手が自分もよく知る建物へと入っていくのが見えた。
なんとなくそんな気はしたが、予想通り、奴が向かっていたのは冒険者ギルドだった。
「チッ」
ほとんど自業自得な話だが、今、ギルド内で俺の印象は少々――いや、かなり悪い。
新人に喧嘩を売って――認めたくはないが――負けた事の他、ある事ない事いろいろな噂がギルドに流れている事は相棒から聞いていた。その内容は、いずれも俺を中傷するモノだとも知っているし、窃盗の疑いが掛けられている事も聞いた。Aランカーのカズロンが殺気立って俺を探していたらしい。
そんなギルドに奴が逃げ込んだ。その意味を考える。
おそらく、このままギルドに入った所で、不利な立場に追いやられるのは自分だろう。
奴の言い分が信用され、俺は捕えられるか――最悪殺される事もあり得る。
だが――。
「関係ねぇな」
そう関係ない。そんな事は、もはやどうでもいい。
俺にとって大事なのは、奴の身柄であり、仕留める事をおいて他にないのだから。
周りの冒険者――もしかしたらギルマスも黙っていないがもしれないが、胎が決まっている俺が臆する理由はない。
奴を追って、俺はギルドの扉をぶち破るように開く。
途端、中に居た複数の冒険者達が一斉に俺を見る。案の定、その眼は憎々しげで怒りすらこもった敵意剥き出しのモノ。
やはり、一足先に入った奴が、何かを吹き込んでやがった。
そんな事を思いながら、さらに周りの視線を無視して俺は叫ぶ。
俺の方こそ、怒っているのだと主張するように。
あいてだけを見据え、睨み、腹の底からそいつの名を叫んだ。
「アラン!!」




