6-EXTRA(side:セルゲイ)「異常な魔力放出」
「セルゲイって誰だよ?」と思った方へ
一応、既に作中に登場している「あの人」です
何の変哲もないいつも通りの朝。綺麗に澄んだ青空に適度に散らばった雲、天候にも恵まれたまったくもっていつもと変わらない一日が始まったはずだった。
一変したのはそろそろ昼に差し掛かる時間帯。
執務室にこもっていつも通り書類仕事に勤しむ最中、それは突然襲ってきた。
「なんだ、この魔力は!?」
魔法は本職の連中と比べてからきしの俺だが、そんな俺でさえも感じ取れる異様な魔力の放出。その量が、尋常ではない。
なんらかの魔法が発動したのか!?
だとしても、この魔力量は異常だ。街全体を包み込めるくらいの圧がある。
何にしても、状況把握が先か――となると。
「くそッ! マリンは居るか!?」
俺は、サブマスターとして俺の補佐をしてくれている女性を呼び寄せる。
彼女は、ギルド職員になる前まで魔法使いとして活躍していた元冒険者だ。こういった魔法に類する話を聞く専門家として申し分ない。
「お呼びですか、マスター・セルゲイ!?」
常に落ち着いた印象がある彼女にしては珍しく、幾分、焦燥気味に執務室へと入ってくる。それだけ自体が切迫している事の現れだろう。
余計な前置きはせず、単刀直入に聞く。
「お前も感じたと思うが、今の魔力反応をお前さんはどう思った?」
「一言、異常です。それはギルマスも感じられたと思いますが」
「そうだな。魔法が碌に使えず剣で魔物を切り殺してた俺ですら感じ取れる程だ。で、だ。こんな馬鹿げた規模の魔力放出、もしくは魔法に心当たりはあるか?」
「……………いえ。現段階では何とも申し上げれません。先程の魔力反応だけでは情報が不足しています。至急、魔法に長けた者達を集めて調査隊を編成すべきかと」
確かにマリンの言う通りだ。今はまだ情報が欠如している。無論、さっきの魔力自体が十分異常事態なのは間違いない。ならば行動は迅速に行うべきだ。
「うむ。では――――」
マリンの進言に従って調査隊の編成を指示しようとした矢先、次なる異変が街を襲う。
「な!? 空が……」
「まさか結界!? 在り得ないッ!? 都市全域を覆う結界なんて……!」
執務室の窓、その向こうに見えていた蒼天は水面に浮かんだ油のように濁り、異様な光を帯び、やがてモスティスの街を覆い始めていた。
同じ光景を見たマリンも、驚愕に目を見開いてる。
そして、彼女が漏らした単語には聞き覚えがあった。
結界。それは、要は範囲を予め指定した魔法である。前もって魔法陣を設置しておくやり方が主流だったはずだが、そこまで魔法に詳しくない俺にはそれ以上の事は分からない。だから、知っている者に聞く。
「マリン、あれが結界だとしてあり得ないとはどうゆう事だ?」
「不可能なんです! 結界魔法は発動させる為に、それ相応の準備を要します。魔法陣の設置、それから発動後もしくは発動そのものに使用される魔力を供給する為の魔力媒体も同時に必要となります。ましてや都市全域を対象とした結界なんて張ろうと思ったら、それこそ多数の魔法使いが手分けして魔法陣と触媒の設置したとしても数か月は掛かります。そんな期間、魔法陣を誰にも気付かれずに隠し通せるわけがないんです。発動前の魔法陣とは言え、それでも多少の魔力は通っているモノですから、必ず誰かが気付きます!」
「なるほど」
結界魔法に思えるが、都市レベルで実行するのは現実的に不可能という矛盾。
まぁ、アレが何かはともかく、この街が何らかの攻撃を受けているのは間違いない。
執務室に篭っていても埒が明かない。俺はマリンと共に、冒険者共がたむろしているギルドホールへと向かう事にした。
あの異常事態に浮足立った連中が、勝手に暴走しないとも言えんからな。
「ギルマスは……ギルドマスターは居るか!?」
丁度、執務室を出てすぐ。ギルドマスター――つまり俺を呼ぶ声がホールの方から響いてきた。
当初、どっかのバカがこの事態の説明を求めて喚いているのかと思ったが、実際、ホールに出てその声の主を見た途端、それか誤りだと直ぐに分かった。
何故なら、その声の主は頭部から流れる血で顔を汚し、肩で息をしているのが一目瞭然。まるで、戦闘から命からがら逃亡してきたような様相。
そして彼は、俺の姿を確認するや否やホールに響き渡る声で、こう言ったのだ。
「彼が……エドが! 禁呪を発動させた!!」
しれっとギルマスの名前を登場させました




