6-EXTRA(side:メイ)「vs.クルエ②」
「じゃあ、いくよ? さぁいくぞ!? いっちゃうよ!?」
木刀の切っ先をこちらに向けたまま、クルエは再び突進してくる。
さっきの袈裟切りと大差ない、極々単純な突き。私の頭部を狙って勢い任せで放たれた、技術も何もないその攻撃を上半身を僅かに反らせて回避する。
「うぇい!」
クルエが叫んだ。
と、同時に彼の持つ木刀の軌道が変化する。
私のすぐ横を通り抜けようとしていた木刀が、その叫びと共に急に横薙ぎの動きへと変わる。
だが、それも咄嗟にしゃがむ事で回避し、木刀は私の頭上を掠めていく。
そこから、クルエは怒涛の攻撃を続けてくる。
右への薙ぎ払いをしゃがんで回避した私に、左足での蹴り。それをしゃがみからの側転で躱す。
転がった私に向けて繰り出されるのは、上段からの振り降ろし。対して私は、右手の短剣で受け止める。
未だ態勢が不安定の私に、足裏を叩き付けるような右足のケンカキックが真正面から見舞われる。流石に回避は間に合わないと判断し、さりとてまともに喰らう訳にもいかず、フリーになっていた左腕でブロックを試みる。
「ッ!」
左手に持った短剣の腹越しに受けたとは言え、受けた蹴りの衝撃に思わず顔を顰める。が、ダメージそのものは大したものではない。僅かな隙を見逃さず、次の追撃が入る前に後方へと飛びのいて距離を取る。それと同時にクルエは左からの右払いを仕掛けてくるも、距離を取ると同時に回避する。
連撃前の距離感と同じ程度に距離が開き、場は再び仕切り直しの体となる。
今の攻防で、私は一つ確信する。
クルエは確かに強い。だが、それは技術的な強さではなく、単純な暴力的な強さである。技術的な程度を言うならまさに素人レベルで、言ってしまえば木刀を持ってはいるが適当に振り回しているに過ぎない。しかし、だから脅威がないか? と言えば、全くそんな事はない。むしろ、技術が無いからこそ、奴の身体能力が浮き彫りになり、試合ならともかく実戦においては何でもアリの怖さがある。
特に考えて攻撃してくるわけでもないので、何をやらかしてくるか分からない点が非常にやりにくい。思ったままに攻撃してくる癖に、一撃一撃がまともに喰らうとまずい威力があるとか、冗談は見た目だけにしてほしいと、そんな事を思わずに居られない。
そんな私の内心を察したわけではない、というか察しているはずもないクルエがケタケタ笑って喋り出す。
「うんうん。悪くない。悪くないぞ。その剣、その技、その身のこなし。ちょっと面白くなってきた。楽しいねぇ。楽しいなぁ。これは悪くない気分だ。きゃははははははは」
木刀で自分の肩をトントン叩きながら、クルエが哄笑する。
そして――――
「じゃあ、次行ってみようか!? ははははははは」
瞬間、クルエの姿が地面に消えた。
「ッ!?」
例のスキルだと気付いた時には既に手遅れ。
「あっさり死んじゃダメだよ、お嬢さん?」
クルエの声を背後に聞き――――
「《緊急回避》!!」
そして、それに捻じ込むようなタイミングでその場に響く彼のを私は聞いた。




