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6-5「プランMD」

「お願いだ!!」


 俺は一息に言い切ると、頭を下げる。

 アズエルにしてみれば結構、勝手な言い分だと思う。

 本来アズエルからしてみれば、問答無用で俺を安全な場所に逃がすか、それが無理なら放置するかの二択で事足りる案件である。それに対して俺の要求は、そのどちらでもなく、どこまでも都合のいい願いだ。

 それは分かっている。でも、今、俺に出来る一手はこれしかないとも思っていた。

 だからこそ、自然と頭を下げられた。

 自分の意志で街に残る俺を、そして俺が守りたいと思った人達を守る為の手助けをして下さい。


 果たして、それが通じたのか。

 アズエルは「ふぅ」とため息を吐くと呆れるような口調でこう言うのだ。


「まぁ、何となく長谷さんならそう言う(・・・・)かなぁ~っては(・・・・・・・)思いましたけどね(・・・・・・・・)」


「…え? いや、はぁ!?」


 ちょっと想定してない返しに軽く動揺する俺を余所に、アズエルは更に続ける。


「だって長谷さんって非情に成り切れないというか、少なくとも、一ヶ月とは言え何かと馴染んだ人達を見捨てるなんて事出来ませんよねぇ、性格的に。自覚あるかは分かりませんが、意外と情に厚いというか正義感が微妙にあるというか……ねぇ? まったく臆病で慎重でご自分の能力を客観的に見れる癖に、それでも見捨てるという選択が出来ないって損な性格してますねぇ。――――まぁ、その辺も長谷さんの良い所ではあるんでしょうが」


「…………」


 なんだろう、この感覚。痛し痒し? いや違う。羞恥――とも違う、居た堪れなさが俺を支配する。

 自覚――してたわけではないが、かと言って心当たりがないでもない。確かに、前世――と言って良いのかわからんが――前の日本では根が真っ直ぐだとか、偶にバカ正直とも言われた事はあったのだ。


「まぁいいでしょう。協力します」


「本当か?」


「ええ。そうなるだろうと思って、代案も考えてあります。プランMDです!!」


 自信満々に、それこそいわゆるドヤ顔で言い放つ彼女の言葉に、むしろ俺は不安に襲われる。

 プラン――MD? Mini Disc――なわけがない。ではMDとは?


「そのプランMDってなんの略なわけ?」


「え? マジック(M)ドーピング(D)の略ですけど?」


 『なにか問題でも?』とばかりにアズエルがしれっと言い切るが、俺としてはちょっと聞き捨てならない単語が飛び出した。


「ちょっと待て! 面倒事を頼んだ自覚はちょっとあるけど、いくらなんでも不穏過ぎだろ!?」


「そうですか? ん――――でもホラ! 地球にRPGってゲームあるじゃないですか。ああいったジャンルのゲームではボス戦前の自キャラ強化って普通ですよね? 装備を良い物に変更したり、前もって魔法で強化したり、逆に戦闘中に敵を魔法で弱体化させるのは常套だと思うんですけど」


「よく知ってんな、んな事!? ってかドーピングってそうゆう意味なの!? いや、だとしてもドーピングって響きがなんか危なげだよな!?」


「MDがお気に召さないのなら、P(プロジェクト)D(ドーパント)にでも変更します?」


「意味は分かんないけど、それって字面からいってドーピングから離れてないよな!?」


「では却下で。 まぁ通ったら通ったで、お前の罪を数えろ! とか言われそうですしね。いろいろ危なげです」


「何の話!?」


「さて、雑談はその位にして……」


「元は真面目な話だったはずだけどな!」


「いやですねぇ~ちょっとしたお茶目ですよ。――――――やる事はドーピングですが(ボソ)」


「いくら小さい声で言っても聞こえてっからな!?」


 とまぁ無駄な紆余曲折を経て、プランMD――結局この名になった――は実行に移される事になる。

 正直、不安だ……と思った。

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