5-EXTRA「vs.????」
戦闘シーンに伴い、一部残酷な表現があります
――――と言っても、作者の技量がイマイチなので言う程ではないかもですが、一応、念の為ご注意ください
「くそッ! あいつ、どこ行った!?」
竜種の鱗を武具屋に持ち込んだという小僧を探し回ったが、一向に見付からない。
ここ数日、俺は――というか俺達はホントにツイてない。依頼を受けて遠征すれば獲物が見つからず空振り、旅費だけが高く付いて失敗。その帰り道には、よりにもよって劣化竜と遭遇して、強制戦闘。それに何とか打ち勝つも、ほとんどの装備品は破損もしくは大破してしまった。それでも、竜の素材で大金が手に入ると意気揚々と帰ってくれば、『ギルドの不手際!』で1枚で金貨数枚は見込める竜の鱗を破損・紛失されるという徹底ぶり。
どうにも腹の虫が治まらない。
流石にその怒りを直接的にぶつける気は(今の所)ないが、それでも何かしらの事情を知っているはずのエドガーを探しにギルドを飛び出してから数刻が経過し、もう日が傾き始めている。
俺達は最初、奴が鱗を持ち込んだという武具屋の店主に話を聞きに行った。しかし、エドガーがどこで鱗を手に入れたのか入手先までは知らないと言う。ついでに、奴の行先も、だ。
次に、エドガーの宿泊先である《淡紅の桜亭》にも出向いたが、口が堅い店主からは話を聞けなかったものの、他の宿泊客から聞き集めた情報を信じるなら奴はまだ戻っていない。
あいつは未だペナルティ期間中のはずなので依頼を受ける事が出来ない。ギルドへ登録しに来た新人に喧嘩を売った挙句、その新人に向けて剣まで抜いた為にギルドからの罰則を喰らったのだ。聞いた話によると、一ヶ月の依頼受注禁止と昇格資格の取り消しを通告されたはずで、おそらく未だ依頼受注禁止期間中だろう。つまり、依頼を受けて街から出る事はない。
また、宿屋を確保したまま街を離れるとも考え難いので、必然的に街のどこかに居るはずだ。
なのに一向に見付からないのはどうゆう訳だ!?
パーティーメンバーで散らばって捜索しているが、何の情報も得られない。
時間の経過と共に、苛立ちだけが募っていく。
「仕方ねぇ。一旦、ギルドに戻って交渉を――――」
苛立ち交じりにぼやいた、その時。
突然、足元の感触が消失し、なんの反応も出来ないまま俺は地面に呑み込まれた。
◆
星一つない真夜中のような真っ暗な空間を落下するような感覚は、唐突に終わりを告げた。
真っ暗な空間を落下したと思った次の瞬間には、地下から真上へと噴水のように放り出されて、やがて地面へと身体が叩きつけられていた。
これでもAランクに登りつめる過程で様々な修羅場を経験した来た俺だが、一体何が起こったのか咄嗟には理解できない。
ただ、それでも何らかの襲撃を受けたのだけはすぐさま察知して周囲を警戒。そして、それを仕掛けたと思しき二人組を見付け出す。
1人は、まったく見覚えが無い少年。そして、もう一人は――――
「!? お前!」
そして、その人物に思わず瞠目する。俺はコイツを知っているが、知らない。
何故、こいつがここに居るのか分からない。
何故、こいつが俺を襲ったのか分からない。
何故、こいつが俺を射殺さんばかりに睨んでいるのか分からない。
何より。
何故、こいつが武器を手にし、熟練の冒険者と同格以上のプレッシャーを放っているのか分からない。
「お前、何のつもり――――」
俺の問いかけは、あいつの隣に佇む少年によって遮られる。
「ねぇ、ねぇ! コイツかい!? コイツだね!? コイツでイイよな!? アレの材料は、コイツで終わりだろ!? なぁ、なぁ、なぁ!?」
「耳元であまり騒がないでくれないか。喧しくて、耳を切り落としたくなる」
「はっはっはっ! なんなら手伝おうか!? 手伝うよ!? バッサリ行っちゃうよ!?」
「うるせぇ…」
「釣れないねぇ。折角の人生、やりたいようにやり賜えよ」
「やりたいことをやる為の下準備だ、コレは。もう少し真面目にやってくれ」
「やっているとも! この実験は俺サマにとっても楽しみ? な、はずなのさ!」
「何で疑問形なんだよ!」
「いやー聞いておくれよ。俺、あいつ、殺したい。だから、コレ、ぶっちゃけどうでもよくなっちゃったー!! ははははは」
「おめぇ、今更降りる気か?」
「まさかまさか。コレはコレでやりますよ? やりますとも。やるに決まっている! ただ興味が無くなってきただけさ!」
「………ハァ。もういい。とりあえず、後始末と材料採取だけは済ませるぞ」
やはり、コイツは俺の知っているあいつじゃない。
俺が知るあいつは、ここまで冷徹な雰囲気は持っていなかった。
それが何だ。目の前のこいつは、一体――――。
「どうした? これが俺の素なんだが、そんなに意外かい? Aランク冒険者さん」
「…………一体、何の冗談だ?」
「冗談? まぁ確かに、隣にいるこいつは、イカれた殺人鬼には違いないが別に冗談は言っていないぞ。今からお前を殺そうという雑談をしていただけだ」
「てめぇが俺を殺す、だぁ!? あんま舐めた口きくなよ」
「そう思うなら、せいぜい気を張れ……いや、むしろ気を緩めて置け。そうすりゃ、気付いた時にはもう死んでる。苦しまなくて済むぞ」
「ふざけたこと言ってんじゃねぇよ!!」
先手必勝!
あいつの実力の程は不明。しかし、奴から放たれる強者特有のプレッシャーと、俺に向けられた殺気は本物だ。
いろいろ疑問はあるが、疑問の答えばかり気にしていては俺が殺される!
やられる前に、やってやる!
俺は先の劣化竜で刃こぼれした愛剣の代わりに差していた予備の剣を鞘から引き抜くと、一気呵成に斬り掛かる。右肩から左わき腹を切り裂く上方からの袈裟切り、それも突進力と体重をも乗せた一撃必殺と言っても過言ではない強烈な攻め。
「流石、Aランカーの攻撃は鋭さも重さも一味違うな。他のザコとは大違いだ」
「俺をその辺のザコと一緒にすんじゃねぇよ!」
俺の斬撃を、必要最低限の動きであいつが交わす。
袈裟切りからの切り替えしで逆袈裟に切り上げるも、それも僅かにバックステップで躱される。
それでも、俺は攻めの手を緩めることなく、むしろ剣の速度を徐々に上げて奴に斬り掛かる。
逆袈裟を躱されれば、続いて首を狙って剣を左に薙ぎ払い。それを屈んで躱された所に、右足で蹴りつけて追撃。蹴りを腕でブロックされれば、態勢を立て直される前にと前から真下へと剣を振り降ろす。
最初の袈裟切りから唐竹割りまで一瞬たりとも緩めぬ攻めも、その全てが尽く躱され防がれる。手にした武器すら使わずに。
「クソッ! ちょこまか避けやがる!」
「Aランクだけの事はありますが、ちょっと温いです。これでは、前座のザコと大差ない、と言わざるを得ません」
「チッ! 俺をザコ呼ばわりとはいい度胸だ! なッ!」
会話に乗ったフリをしつつの、隙を付いた刺突。しかし、躱される。
そして、奴は会話の続きを口ずさむ。
「あまりカッカしない方が、良いかも知れませんよ。ほら! 向こうを見てみなさい」
「騙し討ちのつもりか? 古臭すぎる手だな」
「いいえ。あなた相手にそんな手を使う必要もないです」
「言わせておけば――――ッ!?」
再び剣を振ろうとした途端、視界の端に異物を捉えて、俺は慌ててその場を飛びずさる。
奴の隣に居た少年が、何かを放り投げたようだ。
「大口叩いて、結局、不意打ちとは良い趣味してんじゃ――――――」
俺は言葉を失った。あの少年が投げて寄越した異物が何だったのか。それに気付いて、怒りよりむしろ血の気が引いた。
真っ赤に染め上げられた元は鈍色の軽鎧。それは俺と一緒にギルドを飛び出した同じパーティーの古株だった男。こめかみに小さな穴を開けられ、変わり果てた姿を曝す戦友がそこに居た。物言わぬ骸となって。
「どうせ、見ろと言っても見ねぇよ。見せてやるのが、シンセツって奴だぜ? なぁ、俺って親切じゃね。親切だよな」
少年が何か喚いているが、そんなのは耳に入ってこない。
「親切のついでに、こっちもオマケだ。後、コレとコレとコレと、コレもか?」
次々投げ捨てられる人影――いや、誤魔化すのは止めよう。それは尽くが人間の死体であった。そして何より、それらは全て例外なく、俺がよく知る人物ばかり! 全員が俺のパーティーメンバー、だ!!
「わかったか? 後はお前だけなんだよ、カズロン。他のメンバーは先に逝った。お前も後を追うと良い」
「ち、ちくしょーがッ!!」
剣を振り上げ、力任せに振り降ろす。が、その先に奴の姿は、もうない。
クソが!? どこに行った!?
「さよなら、カズロン君」
「――ガッ」
背後から奴の事が聞こえたと思った瞬間には、俺の首に奴の武器が突き立てられる。
意志とは関係なく身体が痙攣を起こし、意識が急速に途絶えていく。
あぁ死んだな、と他人事のように思った直後、意識は完全に暗転した――――――。
なんやかんやで過去最長の文章量な気がします
予定では5章のEXTRAを後1~2話挿入した後、最終章(になる予定の)6章を書いていくつもりでいます
ようやく完結が見えてきたので、もう暫くお付き合い頂ければ幸いです。
少しでも本作を楽しんで貰えれば、何よりでありますm(_ _)m




