4-9「クルエはかく嗤う」
本格的に敵キャラの登場です
「さてさて、アナタ方もこの方の同類でいいのかな。むしろ、いいよねぇ! そうだよ、そのはずだね! その方が良いに決まっているよ。いや~嬉しいなぁ。こんな短時間で、三輪も花が見れるなんて、僕はなんたる幸運なんだろう!」
なにやら喚くように一方的な会話を続ける、この男。
伸びるままに放っておいたらこうなったとばかりの長髪、逆にどうやったらそんな事になるのか不均一な長さに放置された無精ヒゲ、遠目にも土汚れに塗れた元が白と思われる黄ばんだコートをマントのように肩に掛けているだけのズボラな着こなし。それら、どこをとっても浮浪者という単語が一番ピンと来る、異様な男である。
男がなにか喚く度に、そのオーバーリアクションでユラユラ揺れる血染めの木刀からはポタポタと血が滴り落ちている。
なんとも異彩を放つ風貌、ただ小汚いだけで済ませられない、狂気を孕んだ濁った眼というものを俺は初めて見た。
あらゆる意味で、この男は関わり合いになってはいけない人物だ。俺は、そう直感する。
尤も、それは無理な注文なようで――――
「今の男は、どうにも濁ってて駄目だった。君たちはどうなのかな? 1人はクソつまらないただのオスだけど、もう一人は少女。しかも、とびきりだ。いいね、いいね! きっと良い。君はきっといい花を咲かせてくれる。ここまで来たら、もうついでだ! オマケにオマケをして、そこの男も一緒に咲かそう! 喋らなくてもいいよ。死んでもいい。ただ一度、僕に真っ赤な大輪の花を見せておくれ!」
この男とは、お互い意思疎通が図れる気がしない。
なにせ、これまで一方的にまくし立てるだけまくし立てて居るが、やっている事がただ大仰なだけの独り芝居であり、その視線は明らかに明後日の方向を向いていたりとおかしな点は幾つも散見できる。
――――はっきり言うと、この男は狂っている。
「ふふふふふふふふふふふ」
三日月のようにニタリとした笑みを浮かべ、男は笑う。
そして、笑いながら一息で俺達との距離を詰め、木刀を掲げて、振り降ろす。
ガキン!! ぶつかり合う金属音。
「いきなり、なにすんのよ! この変態!!」
流石はCランクの冒険者というべきか、男の木刀を防いだのはメイさんだ。
樹海の時と同様に、短剣を逆手に持った独特の構え方。しかし、それによって刀身そのものを盾の代わりとして用い、男の木刀を防いでいた。
「ほぉほぉ、今のは踏込は成功したんだけどねぇ。それを防ぐのかい、お譲さん? あんまりお痛が過ぎると、その蕾を叩き落す必要がでてくるよぉ? ふふふ―――――――や~めた! 止め止め」
より一層笑みに凄味が増した男だったが、その一瞬後には急に笑みが能面のようになり、真顔になる。
突然、興味を失い、踵を返すその様に、俺達は戸惑いを隠せない。
そして男は、とある爆弾を設置する。
「時にそこの彼女。その独特の構え方、ひょっとしてラルフとご同輩かな?」
「…………ラルフは、私の兄弟子よ!」
「あぁ~そうなんだ、そうだろうねぇ」
「あの人は、今、どこに居るの!? 知っているなら、言いなさい!」
「さぁ? この国のどこかには居るんじゃないか?」
「ふざけるな!」
ラルフという人物が誰なのかは知らないが、メイさんが本気で憤っているのだけは分かる。
だが、男は血塗れの木刀を消失させると、またも大仰に告げる。
「いやはや、ビックリ。ゴミを掃除したら、思わぬ出会いがあるものよ! あ奴の手下が、こんな所に居るとは、これはもう、アレだ。メインイベントまで待つが吉だな。そうだ、そうだ、そのはずだ。この場は引こう! 後に待つ、素晴らしい日の為に! ふふふふふふふふふふふふ」
「逃がさない!」
「いいや、逃げる! さてとさて、気が向いたら、また会おう! また会えるさ。必ず会うよ! 君とはね。それまでは我が名を刻め! 我はクルエ。狂乱をこよなく愛する、生きる狂人なり! ふははは」
男の――クルエの高笑いが響く中、クルエの身体が見る見るうちに影の中へと沈んでいく。
「待って!」
メイさんの制止に、今度こそクルエは答える事なく、やがてその身は完全に影の中へと消えていった。
クルエのキャラは頭のねじが飛んでる感じに、頑張ってみました
どっからどう見てもイカれた言動だけど、暴力的に強い。一応、クルエはそんなキャラでいくつもりです。その片鱗でも伝われば良いなと思います
後はもう、少しでも本作を楽しんで頂けれれば、それだけで作者的には幸いですm(_ _)m




