4-8「血染めの木刀」
メイさんと共に強盗を追うのは良いが、被害者である商人から事情を聴いている内にその姿は完全に見失ってしまう。
肩をぶつけられはしたが顔を直接見た訳でもないので面通しで探す事は無理。他の印象と言っても、茶系のボロ布の如き服を着ていた、くらいにしか覚えがない。
さて、追うのは良いとしても、どう探そうか?
「タケ! こっちよ」
メイさんが強盗が走り去った方向へと駆けていく。取りあえず、俺もそれに付き従って走る。
しかし――――
「でも、メイさん! あの犯人、どこに行ったか分からないのに闇雲に走り回っても……」
「闇雲じゃないから、大丈夫よ。その先の路地、入るわよ」
「え?」
なんで、そんなはっきりとルート分かんの!?
「私のスキルよ! 《チェイサー》って言うの」
メイさんが核心を持って犯人を追える訳は、スキルにあった。それを俺は走りながら説明された。
アクティブスキル《チェイサー》。このスキルは『マーキングした対象を追跡できる』という効果を持つ。俺の眼には見えないが、メイさんの眼には対象=犯人まで至る道筋が一筋の光となって浮かんでいるのだと言う。相手までの正確な距離を計る事は出来ないが、一度マーキングしてしまえばどこまででも後を追う事が出来るある種、執念のスキルである。
なんでも、メイさんは何人も突き飛ばしながら走り去るあの男の姿に不審を覚えるや、即座にスキルの対象に指定して置いたのだと言う。周到というか機転が効くなと、感心する。
俺なんて突き飛ばされて、よろめいていただけだぜ? ――――悲しくなってくるな…。
まぁそれはともかくとして、そのスキルのおかげで強盗犯を見失う心配がないのは心強い。
犯人を追って路地に入って、すぐ。
俺は思わず感じた寒気に、一瞬、身体が強張るのを実感した。
なんだ!? この嫌な感じ……。
果たして、細い路地の角を曲がった先に、ソイツは居た。
「おやぁ? お仲間さんかな?」
足元には顔面を血塗れにした茶色い服の男が呻き声を漏らしながら身体を小刻みに痙攣させ、その周辺には銀貨に銅貨が無造作にぶちまけられている。
そして、目の前には、血に染まった木刀をだらりとぶら提げ、三日月のような半笑いを浮かべる人物の姿があった。




