表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/97

4-5「結果報告と不思議な相棒」

日にちは変わったけど、一応『夜』の内に投稿!

「えっ!? もう終わったんですか?」


 《アイテムボックス》のおかげで初仕事をすんなり終わらせた俺は、そのままギルドへととんぼ返りしてきていた。

 丁度、さっき対応してくれた受付嬢さんが居たので、ケヴィンさんから貰った受領印を片手に依頼完了の手続きをお願いしたのが今し方。そして、上記の受付嬢さんの驚きへと繋がる。

 まぁ受付譲さんが驚くのも無理はない。彼女は俺が受けた依頼の内容を知っているし、それが最低でも一日を要するのは確実な依頼と理解していた。故に、俺がこんなにも短い時間で依頼を完了させてきた事に驚きを隠せない。


「はい。これが受領印だと渡されたのですが、間違いないですか?」


 驚きの余り固まってる受付嬢さんに、ケヴィンさんから渡された紙切れをチラつかせながら言う。


「……え、と。では、確認させて頂きますね」


 予想外の出来事に驚きでフリーズ仕掛けていた受付嬢さんだが、そこはプロ。困惑こそ隠しきれなかったが、即座に仕事に掛かる。

 と言っても、俺が提出した紙切れ――受領印をチェックするだけであるが。


「た、確かに、これは受領印ですね。ケヴィンさんのサインもありますし……ギルドの承認印もちゃんとあります。偽造、ではないみたいです、ね。 ………え? あの、迅速な仕事に対する感謝と、失礼の詫びに依頼料を銀貨5枚に増額する、とありますけど、心当たりあります?」

「あぁ~そんな事、ケヴィンさんも言ってましたねぇ。仕事は普通にしただけだし、失礼の詫びなんてあの場でチャラにしたつもりだったのにな~……」


 ポリポリと後ろ髪を掻きながら呟く。実際、ちょっとしたすれ違いの結果としてわざと失礼な態度を取っていた彼を俺は既に許して、それで手打ちにしている。確かに《アイテムボックス》の恩恵で仕事は直ぐに終わったが、とは言っても俺としては請け負った仕事を完遂しただけである。

 しかし、その結果が増額して銀貨5枚。元々の依頼料が銀貨1枚なので、実に5倍である。いくらなんでも貰い過ぎだと及び腰になるのは元日本人の哀しい性、かも知れない。


「えぇ~と、では、こちらの依頼の完遂を認めます。依頼者からの増額指示が出てますので、今回の報酬は銀貨5枚となります」


 何かしらの事情はあったと察した様だがそこには深く突っ込む事なく、受付譲さんは報酬の銀貨5枚を俺に手渡す。そして。


「おめでとうございます! これでハセさんはEランクからDランクへとランクアップしました。ランクアップ手続きを行いますので、プレートを提出して頂けますか?」


 俺は昨日貰ったばかりのプレートを渡す。

 なんでも、このプレートには持ち主の現在のランクや依頼受注履歴等が記録されているらしく、俺の場合、登録して初めて依頼を達成した事で今回からプレートにそれらの情報が記録されるとの事だ。


   ◆


 で、その書き込みには少々時間が掛かるらしく、俺は雑用系の依頼ボードの前に居た。

 倉庫の引っ越しが思った以上に即行だった事で、日はまだ十分に高く、もう一件くらいなら受注出来そうな時間帯だ。おそらく、引っ越しと似たような依頼なら、これからでも余裕で終わりそうな気もする。

 そんなわけで、ボードの前に戻って来たわけだが、そこで後ろから声を掛けられる。


「やあ、野ネズミくん」


 ――――野ネズミって俺の事だよなぁ~……

 あだ名と思えば別に良いんだけど、なんか野ネズミと言われて素直に「はい」と振り返りたくない心境もある。かと言って無視しても、昨日の二の舞になりそうだ。

 内心仕方ないと思いながら、俺は振り向いた。


 そこには、ブレストアーマー――要は金属製の胴衣を身に着けた見た目も若い青年が居た。腰にブロードソードを提げ、左腕にはバックラーが括りつけられているその様子から、冒険者それも剣士の類なのは見てわかる。

 分からないのは、俺に声を掛けてきた理由くらいなもの。流石に新人いびりに二度も遭遇する程、運も態度も悪くないと信じたい。

 そんな内心を知ってか知らずか、青年は軽く笑みを浮かべて言う。


「気を悪くしたのなら、済まないね。僕は、アラン。昨日、君がボコったエドガーの相棒さ」


 少しの間、その答えに頭の処理が追いつかない。

 は? 昨日のエドガー(アホ)の相棒? ――――って事は何か、これはお礼参り的な事なの!?

 そんな俺の困惑と警戒心を察知したアランは、先回りするように更に続ける。


「勘違いしないで欲しいんだけど、僕が君に声を掛けたのは相棒の八つ当たりを止められなかった謝罪がしたかったのと、もう一つはお礼だよ」

「お礼?」

「そう、お礼。実は昨日、懇意の鍛冶師に彼の使う武器の寿命が告げられてね。まぁ君の知った事じゃないとは思うんだけど、先日ランクアップ試験に落ちた事もあって相当機嫌が悪かった彼を宥めてやけ酒に付き合ってたんだけど、僕がちょっと席を外した時に新人さんに喧嘩を売っちゃってさ。まいったね。ははは」


 その喧嘩を売られた相手が俺だった、と。

 あの時の背景というかバックボーンは理解したけど、それって結局――――


「それって八つ当たりですよね?」

「そう。まごう事なき、八つ当たり。だから、それを止められなくて悪かったね。君の何が気に入らなかったのか分からないけど、まさかあんなちょっとの隙に喧嘩を売るとは思わなかったんだ。しかも、登録すら終わっていない新人相手に。ホント、申し訳ないね」


 正直、そこは本人が来て謝れよとは思ったが、口調こそ軽いがアランの謝意は本物のようなので謝罪を受け入れる。

 それはそれとして、お礼とはどうゆう意味だろう?


「それは君が、彼の武器を真っ二つに叩き折ってくれた事さ。長い事彼とコンビを組んでいる相棒として、正直な話、僕はむしろ謝意よりも感謝の方を伝えたかったくらいなんだよ」


 冒険者にとって大切な商売道具となる武器を壊されて感謝とは、一体どうゆう意味だ?


「あの剣なんだけど、あれは尊敬する亡き父から譲り受けた一品で、それを使って魔物を屠る事が彼の誇りでもあったんだよ。それだけに思い入れが尋常じゃなかったんだけど、2代に渡って振るわれたあの剣はもう限界が来てたんだ。度重なる連戦で刀身が戦いに耐えられないギリギリの状態で、ついに鍛冶師にそれを指摘されても彼は頑なに武器を変えようとはしなかったのさ。逆に激昂して鍛冶師に掴みかかる始末でね。ともかく、魔物と戦う事に誇りを見出している彼の様なタイプの冒険者としては特に、非常に危険な状態だったのさ」


 それはそうだろうな、と俺も納得する。

 戦いに耐えられないと鍛冶師が断じた武器を実戦で使い続ければ、いつかは実戦の中で武器が限界を迎えて破損するのは目に見えている。確実に壊れると分かっている武器を使い続けるなど、自殺行為以外の何物でもないだろう。


「だからこそ、彼の未練を木端微塵にしてくれた君に感謝したかったんだ。あの結果を受けて何を思うかは分からないけど、立ち直ればエドガーはようやく前に進める。下馬評通りのBランクも夢じゃない。元々ランクアップに失敗したのも、剣をかばうような戦いを見抜かれたのが原因だと僕は思ってるしね」


 話を聞いての想像だか、もしかしたらエドガー自身も、己の武器が最早限界だと理性では分かっていたのかもしれない。それでも、愛用する武器に対する思い入れと自身のプライドが武器の変更を良しと出来なかった、のかも知れない。あくまで想像だが。


「そんなわけで、ごめんね! そして、ありがとう!」


 個人的にエドガーと仲直りできる気はあまりしないが、そんな彼を心配する相棒がいる点は素直に羨ましく思う。まぁ向こうが謝罪してくる様なら、受け入れるのも吝かではない。

 謝罪と感謝を一緒に述べたアランは、「じゃあ、また!」と軽く手を振ってその場を去っていく。

 その後ろ姿を見送りながら、おれはそんな事を思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ