3-EXTRA「彼の後を追わされて②」
休み中になんとか書き上げた、アズエル視点のEXTRA後編です
クレイジータイガー戦の直後が、描かれます
「お主にはヴァイスに降りて貰う!」
「…………ふぁ!?」
え!? どうゆう事!? まさかの堕天!? うっそー!?
「えぇー!? 私、堕天ですか!?」
「黙って最後まで話を聞かぬか!? ………まぁクビにできたら、それでも良かった気がするが(ボソッ)」
「それ、しっかり聞こえてますからね?! 私でも、そろそろ泣きますよ!?」
「お主はそれくらいで凹みもせんじゃろ!? むしろ泣け! 少しは儂の溜飲も下がる!」
「ヒドい~!」
「もう、よい! 話を戻す!」
主様が言うには、先ほどヴァイスへと転生させた男性――ハセ・タケユキは無事、ヴァイスには到着したらしい。だが、着いた場所が問題だった。本来の予定では、(適当な)都市近郊に送り届ける手筈だったのだが、実際に彼が行き着いたのはダンジョンと呼ばれる魔物の巣窟の真っただ中。しかも、運が悪い事に数あるダンジョンの中でも指折り、ヴァイスの中でも一・二を争う鬼畜仕様となっている最難関ダンジョン――ナシワーツ樹海だというのだから、ご愁傷様としか言いようが――――
「お主のせいじゃからな!? 少しは反省せい!」ゴチン!
「いったーーーい!!」
「とにかく、お主は責任を持ってあの者を守れ! 悪いようにしないと言っておきながら、即死亡ではあまりに恰好が付かぬ!」
「それ言ったの主様じゃないですか~」
「そもそもの原因は、お主の居眠りに端を発してるのを忘れておらんか!?」
「ヒュー、ヒュー、ヒュー」(口笛モドキを吹いて誤魔化す私)
「……まぁ、つまりお主は堕天ではなく降臨じゃ。ヴァイスに降りて、ハセ・タケユキの生活が軌道に乗るまでサポートせよ。期限は、最低でも1年とする。以上じゃ」
「え~♪ そんな~、あんまりですよ~♪」
「…………内心、喜んでおらんか、お主?」(ジト目の主様)
「ソンナコト、アリマセンヨ」(あふれんばかりの喜びを押し隠すあまりカタコトになる私)
「まぁいい。では、すぐに行け!」
◆
「そんなわけで、やって参りました! ヴァイス屈指のダンジョンへ!」
周囲には誰一人居ない樹海のど真ん中。だが、私のテンションは最高潮に上がっている!
何故かって!? それは勿論、口喧しい――もとい、暴力的な――でもない、ソンケイすべき主様から離れて、暫くは下界でのんびり出来るから! これに付きます!
文明的には大した面白みがないヴァイスですが、それはそれで存分にお昼寝を楽しむ等、出来る範囲の楽しみもあるでしょう。
とは言え、主様の命である『ハセ・タケユキのサポート』は最低限、こなさなければ為りません。
義務あっての権利。お仕事をチャチャッと片付けて義務を完遂してしまえば、残り時間を悠々自適に過ごすくらいの権利はあります。
さて、運を司る天使たる私には労働というのは酷くダルいものですが、後々の事を考え速やかに終わらせましょうか。
「下界で魔法を使うのも久しぶりですね。では『サーチ』」
探知魔法をダンジョン中に展開し、まずは対象であるハセさんを見付けましょう。
とりあえず、この樹海から脱出させ、近場の街にでも誘導して就職して貰いましょうか。そのまま、定着してくれれば、お仕事はお終い。後は私の自由時間が待ってます!
――――と、見付けました!
「あらら、これはマズイですね!」
ハセさんを見付けたのは良いんですが、明らかに魔物に追われてます!
対象者の死亡、サポート任務の失敗となると、主様に何言われるか分かったものではあれません! 最悪、ホントに堕天の可能性すら――――
「なんとか持ち堪えて下さいよ!」
◆
「あぁー!? やっと見付けましたよ、ハセさん!」
思いの外、距離があって到着が遅くなってしまいました。転移が使えれば一瞬だったのですが、下界に来る際に転移を含めて幾つかの魔法とスキルに制限が設けられているので使えません。なので、身体強化で移動せざるを得なかったのですが、予想外に時間を喰ってしまいました。
当のハセさんですが、腹と肩から大量出血してはいますがまだ死んではいません。ギリギリで間に合いました。おそらく、少し離れた位置にいる彼女が彼を守ってくれたのと、彼が《運命天秤》のスキルを少々無茶な方法で使ったのが功を奏したようです。
私の権能の一部をスキル化した《運命天秤》。対象の運を意図的に操作するスキルですが、相手と自分に運を極振りするとはなかなかに無茶をします。下手したら、BADの極振りで死ぬ可能性が高いと言うのに――――。
「まぁともあれ、よく生き残ってくれました。守護してくれた彼女にも感謝、ですね。
さて、相手はクレイジータイガーですか。確かこの世界ではAランクモンスターでしたね?
ふむ……では少々オーバーキルかもしれませんが、コレで片を付けましょう。
《ライジングレイ》!」
闖入者たる私を見据えて唸り声を挙げている的に対して、私は人差し指を向けて呪文を唱えます。
ピシュン……………ゴロゴロゴロゴロ!!!!!!!!!
耳を澄ませておなかければ聞こえない程に小さな射出音と共に指先から一筋の光が放たれ、数瞬遅れで空気が膨張して雷鳴が辺りに鳴り響きます。
《ライジングレイ》。どの世界においても最大級のエネルギー量を誇る雷。それを指一本分程度にまで細く凝縮して放つ、雷属性の魔法です。その威力は、通常の雷に打たれるダメージのおよそ数十倍。――――まぁ通常の雷と同レベルのエネルギーを指一本分の細さにまで凝縮しているのですから、当然ですね。
そんな一条の雷が鼻先からお尻にかけて突き抜けたクレイジータイガーは、その数瞬で魔核を含めて内蔵を焼かれて死んでいました。尤も、元々ハセさんがスキルを駆使して与えたダメージも決して無視できるレベルではなかったようですが。
「さてと、邪魔者は片付けた事ですし、後はこちらですね」
速いとこ治癒を施さなければ、彼は出血多量で死んでしまいます。急がなけば!
そして、ここは彼女も一緒に癒すべきでしょうね。何と言っても、この件の功労者です!
私の休暇を守ってくれた人を死なせるわけにはいきません。
「我が同胞よ、我の願いを聞け!
凱旋のファンファーレと共に、聖なるハンドベルを打ち鳴らせ
さすれば母なる主の威光、ここに舞い降らん!
夢幻の癒しを今ここに、さぁ降りしきれ《エンジェルラダー》!!」
◆
あの後、彼らを樹海の外に連れ、安全な草原に寝かせます。
ハセさんには《マッピング》のスキルも渡してますし、もう一人の彼女は土地勘もありそうなので、多ここまで連れだせば多分、無事に近くの街まで付けるでしょう。
サポートと過保護は違うのです。道を誤らない程度には見守りますが、私が直接どうこう示す事はしません! それでは自立できませんし、依存されても困ります。――――決して、私が面倒くさいから言ってるのではありませんよ? ホントですからね?
ともあれ、私は一足先に都市に行ってます。では、農耕都市モスティスでお会いしましょう!
口調は割と丁寧なのに、やってることは欲に素直な駄目天使、でも持てる能力はチート級……と、そんなキャラクター・アズエルの視点でお送り致しました!
自分的には書いてて楽しいキャラではあるのですが、読者の皆様的には如何でしょうか?(;一_一)




