3-13「なんで、あんたがここに居るんだ?」
今夜、二回目の投稿です
依頼を受けるのは一週間以内であればいつでも良いとの事なので、とりあえず依頼は後回しにする。
今はそれよりも、拠点の確保が先決である。つまりは、宿探しだ。
メリッサさん――さっきまで対応してくれてた猫耳の受付嬢さんの名前である――に、比較的安い宿を2、3教えて貰ったので、それを頼りに本日の宿探しとなる。メリッサさん曰く、「人の出入りが激しい分、宿の確保は早い者勝ち」との事なので、もう出遅れ組に入っている俺としては心配な所だ。最悪、ホームレスのように都市内で野宿というパターンもあり得る(この場合、警備隊に見咎められると捕まる可能性あり)。
転生して森に放置され、魔物に追い回され、街に着いたら着いたで警備隊のお世話――という流れは流石に勘弁願いたい。すぐにでも宿を確保しなければ。
俺はそう決意して、メリッサさんに礼を述べてから受付カウンターを離れる。
と、そこに。
「登録は無事、終わった?」
メイさんが居た。
「お陰様で登録終わりました。色々助けて貰って、マジでありがとうございます」
「いいよ、いいよ。別に大した事してないしさ」
メイさんは朗らかに笑っていた。
「メイさんの方も、報告終わったんですね」
「そうだね。一応は、一通り終わった感じかな。後日、もっかい森に行かなきゃだけど」
「何故です?」
「んー……まっ、タケならいいか! 事情も知ってるし」
メイさんが言うには、俺達を襲ったクレイジータイガーの行方を追跡調査する必要が出てきた為、その道案内としてメイさんはもう一度、ナシワーツ樹海へと行かなければならなくなったらしい。
万一にもクレイジータイガーが《はぐれ》と化して樹海から進出してくるとなれば、その被害は尋常ではない。樹海の奥へ戻ったなら良し、そうでないなら早めに討伐隊を編成する必要さえある。迅速かつ正確な情報が必要で、今回の件の発見者でありナシワーツ樹海には何度か潜っているメイさんは、この度の追跡調査に必要不可欠な人員というわけだ。
ちなみに、今回、相手が相手と言う事でメイさん単独ではなく、他にもAもしくはBランクの冒険者数人が合同で臨時パーティを組んで調査に出るそうだ。まぁ、想定している標的がAランク指定のクレイジータイガーなら、それも当然であった。
――――ってか、そんな事を俺に話しても良かったの?
「別に《はぐれ》になったって決まってないし、君の場合、最初から事情知ってるから良いかなって」
メイさんは意外と適当だった。
「そうゆうタケこそ、これからどうすんの? 流石にこれから依頼受けるってわけじゃないでしょ?」
「俺は、これから宿探しですよ。メリッサさんに幾つか宿屋を教えてもらったので、片っ端からあたるつもりです」
「メリーの紹介? だとすると、《小鳥の憩い亭》もしくは《淡紅の桜亭》かな?」
「よくお分かりで」
「だって、《淡紅の桜亭》は私が泊まってる宿だし、《小鳥の憩い亭》は新人冒険者にお勧めしてるギルド推薦の宿屋だしね」
「そうなんですか?」
「どっちもギルドと提携してて割引とか色々とサービス受けられるから、言わば冒険者御用達の宿ってやつだね! ちなみに、私のおすすめは《淡紅の桜亭》! 料金はリーズナブルなのに、出される食事は絶品! そして、私の紹介で泊まってくれれば、本日の夕食に漏れなくオマケが付いていくる、私の夕飯に! 君は宿を取れ、私は夕食が一品増える。これはもう、win winの関係だよね?」
「とりあえず、ぶっちゃけ過ぎじゃね!? ……まぁここはメイさんとメリッサさんのお二方に紹介された《淡紅の桜亭》から当たってみますよ」
「それが良いと思うよ。あっ、私の紹介ってとこ、忘れずに付け加えてよ? ……ってか、もう予定もないし、むしろ私が案内しようか?」
「……お願いします」
素のメイさんは物怖じしないというか開けっ広げというか、ざっくばらんな性格のようだ。
最初に出会ったのがクレイジータイガーに襲われてた時だったのもあるけど、第一印象とのギャップが凄い。
――――良い意味でな?
まぁ、とにかく! メイさんのおすすめだという《淡紅の桜亭》へ向か――――
「あぁ到着してたんですね? 無事で何よりです!」
―――おうとして、別方向から声を掛けられる。
どこか聞き覚えのある声に、俺は振り向き、そして固まった。
なんで、あんたがここに居るんだ?
「なんで、あんたがここに居るんだ?」
実に滑稽な事だが俺は思った事をそのまま口から溢すという事を生まれて初めて実演し、それに対して目の前に現れた青みを帯びた銀髪が印象深い女性はニッコリ笑ってこう言った。
「私は貴方の保護者ですよ、ハセ・タケユキさん」




