3-9「登録中に絡まれました……」
今晩、3話目の投稿です
――――誰だよ、野ネズミって。
変なあだ名もあったもんだと思いながら、依頼書を眺める。
どれどれ? 『一日、店番をお願いします』『雨季が来る前に用水路に溜った土砂を除去して下さい』『子供に算術を教えて下さいませんか?』『倉庫の在庫整理を手伝ってくれ!』etc.
雑用関係の依頼だけでも、結構な数があるな。報酬で言うと、この中では『子供に算術を教えて下さいませんか?』って依頼が一番報酬が良い。貴族や商人なら職業的にもある程度修めているのだろうが、やはり算術がまともに出来る市民というのは希少だし、増してそれを子供に教えるとなると報酬の方もお高くなるようだ。
登録が済んだら、コレを受けてみようかな。最悪、中学レベルまでなら何とか教えられ―――
「オイ、テメェ!? 無視してんじゃねぇよ!」
――――えっ!? 俺!? ってか、野ネズミって俺の事?
「は、はい? もしかして、俺ですか?」
突然だったので、ちょっと声が上ずった。
「おめぇ以外に灰色の服着てる奴、いねぇだろうが。てめぇ、冒険者希望か?」
確かに今の俺の恰好は、鼠色とも表現される灰色の服――例の寝間着のままである。
えぇー、単純に服の色から連想して『野ネズミ』呼ばわりかよ――
そんな感じに、内心では思う所はあったが、ここは大人の対応。
「そうですが、何か?」
「そのひょろいナリで魔物と戦えると思ってんのか? 冒険者舐めんじゃねぇぞ!?」
この人、いわゆる脳筋の類なんだろうか?
確かに冒険者は他の職業と比べて魔物と戦う機会は多いだろうし、魔物狩りで生計を立てている冒険者もそりゃ居るだろう。だが、全員が全員、魔物狩りに終始しているわけじゃないし、現に俺は雑用や採取をメインに据えた安心安全な活動をする気満々なのだ。
つまりは、余計なお世話、である。
「採取系の依頼だとか、街の雑用をメインに受けるつもりなのでお気になさらず」
「チッ! マジもんの《ネズミ》かよ! てめぇみてぇな腰抜けが冒険者面しやがるから、周りの評価が下がんだよ!」
――――は?
俺が腰抜けかどうかはこの際別にして、どんな依頼であれギルドが受注した依頼を引き受けて冒険者の評価が下がる等、どう考えてもあり得ない。
この人は、一体、何を寝ぼけた事を言っているんだろう?
「意味が分かんないです」
「あぁん!? 魔物相手にビビッて採取だ雑用だのに走るバカが増えると、俺らまで腰抜けだと思われて正当に評価されないって言ってんだよ!?」
さっきから何なん、この人?
言ってる事は滅茶苦茶だし、こっちをめっちゃ恫喝してくんだけど――――正直、そこまで恐くねぇんだよな。
多分、クレイジータイガーに遭遇したからだろうな。あの虎と比べたら目の前のチンピラ(?)みたいな剣士風の男の恫喝なんて、なんのその。
仮に日本に居た頃に同じ状況になっていたら「ごめんなさい!」とか「勘弁して下さい!」と悪くもないのに謝りながら逃げ出していた所だろうが、事前に耐性が付いてゆとりがあった俺はつい余計な事を口走る。
「それは単に、実力不足ってだけなんじゃ……」
「あぁ!? 俺が弱ぇと言いてぇのか!? てめぇの腰抜け差し置いて、この俺様が! 弱いと! そう言うのか、お前は!? 調子乗ってんじゃねぇぞ、野ネズミ野郎!」
《言語習熟》効いてるよね? OFFなってないよね?
俺もちょっと余計な事を言った自覚あるけど、この人短気過ぎないかい!?
もう剣に手を掛けて、今にも斬り掛かってそうな雰囲気醸し出してんだけど!?
「誰もそんな事言ってないでしょうに。少し落ち着きましょうよ」
「もういい! てめぇはここで引退させてやるよ!」
はぁー!? マジかよ!? 雰囲気どころか本気で剣を抜きやがったぜ、この人!?
どうする!? どうしたら――――あぁもう! アレで切り抜けるしかないか! 失敗したら最悪なんだぜ、アレ!?
《運命天秤》発動!




