3-7「冒険者ギルド」
面接とやらを終えて、俺達は無事にモスティスの街へと入場した。
都市の外観からも想像はしていたが、いざ中に入ってみると街の繁栄がよく分かる。
真っ先に目に入るのは、多くの建物。四角く切り出した石材を積み上げた石造りの建物と、普遍的な木造建築の二種類からなる建築物の数々が、所狭しとひしめき合っている。
道も想像していた以上に整備が行き届いており、一面に石畳が敷かれ、少なくともパッと見で土が露出している箇所はあまりない。
総合的に向こうで言う中世ヨーロッパを彷彿とさせる街並みだが、あちらの史実と違って糞尿による異臭が漂っていない所から衛生環境は向こうよりこちらの方が断然良いのだろう。単に生活様式の違いか、魔法が関係しているのかも知れない。
人通りの多さについては、言うまでもない。通りは活気に満ちており、リアカーや馬車で積荷を運ぶ商人風の人や、オーバーオール風の作業機を着込んだ職人っぽい人、はたまたメイさんのように革鎧を着込んだ冒険者と思しき人など、多種多様な人々がひっきりなしに行きかっている。
興味はあれど結局海外旅行をする機会に恵まれなかった俺にとって、異世界とはいえヨーロッパを彷彿とさせる街並みは、それだけで興味をそそるには十分過ぎた。
単に、街を散策するだけでもきっと楽しめるだろう。
ともあれ、まずは、メイさんの要件を済ませる事が先決だろう。
冒険者ギルドは、街の中心部――通称セントラルと呼ばれる街の中枢にあると言う事なので、そこへ向かう。
門から徒歩で移動すること数十分。目的のギルドが見えてくる。
実際に目にした冒険者ギルドは、向こうのイメージで表現するなら一見して大聖堂のような見た目をした重厚感のある石造りの建物であった。その入り口には、冒険者ギルドである事を示す旗――円形の盾と交差する二本の剣があしらわれたシンボル――がはためいている。下手したら、ちょっとした砦のようにも見える場所である。
正直、メイさんが案内してくれなければ、建物が醸し出す風貌にビビッて回れ右をしたかも――、俺は内心冷や汗をかきながらそう思う。
「ここよ。付いて来て」
そんな俺の内心など知らずに、メイさんはさっさと建物へと入っていく。
俺は慌てて、彼女に付いていった。
さて、そんな冒険者ギルドであるが、中は中で喧騒に包まれていた。
他の異世界転生物でもありがちだが、ギルドは仕事の斡旋所としての一面の他に、食堂兼酒場も併設されているようで、一仕事終えたと思しき冒険者(っぽい人達)があちこちで酒盛りしているのが見える。祝杯なのか気分よく酔っているようで、見た目通りの大男達が大声で叫ぶように馬鹿笑いしているもんだから、建物内部は相当に喧しいのだ。
そんな中、メイさんは受付カウンターの方へと歩いていく。途中、「メイちゃん、一緒に呑もうや~」等、熱烈な酔っ払いコールを数多く受けるが一切無視である。
――――俺?
俺の事は「誰だ、あいつ?」くらいの興味しか持たれていないよ。
多分、ここでも一般人Aという認識で、メイさんと一緒に行動していると思われていないんだろうね。
メイさんはここでも人気あるっぽいから、行動を共にしていると知られるとそれだけでも反感を買いそうで怖い――
「タケ! こっちよ」
はい。メイさんからの呼び方は、結局、「タケ」で落ち着きました。
更に、そんな大声で言ったわけではないのに彼女が俺の名を呼びかける声をしっかりと聞き取った酔っ払い共から「あぁん?!」という視線が――――
「あの野郎、ウチらの癒しに何手ぇ出してんだ」「どこのどいつだ」「あのもやし野郎、ぶっ飛ばす」等々、罵詈雑言が聞こえてくる。
えぇーー!? ちょっとした知り合いって程度の間柄なのに、なんでぶっ飛ばされるって話になってんの!? 怖ぇよ、冒険者!?
「貴方が来ないと、話が進まないじゃない。早く」
予想外に熱烈な歓迎の視線(最大限好意的解釈)に曝され、俺の繊細な精神に甚大なダメージを受けながらカウンターへと歩を進める俺でした。




