3-3「今更ながらの自己紹介」
さて、純粋に感謝しただけのつもりが、想定外に彼女の可愛らしい一面が見れて満足です。
森の中でも思ったけど、軽く日焼けした日本人的な見た目の彼女はそれだけでも親しみやすく、最初に出会った時は緊急時で戦時だったこともあって、今の微笑はギャップが生まれて魅力が増している。
それこそ、思わず惚れてしまいそうなくらいには。
実際、改めて見れば見る程、可愛い子である事は間違いない。向こうにいたなら、読者モデルとかやってそうな感じもある。
――――ヤバい! なんか緊張して来た!
「どうかした?」
今更ながらこの状況に気付いてプリーズ気味になった俺の挙動に、彼女の方から声を掛けてくる。
「い、いや。なんでもないよ。うん」
「そう?」
――――ちょっと、どもった。
いや、ほら、俺って異性とあんまり交遊なかったじゃん? ――――なかったんだよ、悪いか!?
そんな中、目の前にはアスリート系の美少女。しかも、状況は二人きりだぞ!?
そりゃテンパるさ! 分かるだろ!?
――――誰に言ってんだろ、俺?
「ところで、貴方――――と、その前にまだ名前を聞いてなかったね。私は、メイ。メイ・ブルーフィールよ。貴方、名前は?」
彼女に言われて、今更、そういえばお互い自己紹介をしていなかったと気付く。
まぁ、そんな悠長な暇がなかったからだけど、忘れてた。
ずっと彼女、彼女と、目の前の少女を呼称してたわ。
それにしても、メイさんか。微妙に日本風でありながら、洋風でも通用する名前だな。
ブルーフィールというのは、家名か? もしかして、メイさんって、どこぞの貴族出身だったりするのだろうか?
「俺は、長谷武之。ちなみに、長谷が苗字で、武之が名前ね」
「ハセ、タケユキ。なんか不思議な発音ね」
「言いずらいようなら、タケとでも呼んでよ。親しい奴らは、大抵、そう呼ぶし」
「その前に一つ確認させてくれる? 貴方って、もしかしてどこかの貴族様だったり、する?」
やはり、この世界で苗字持ちというのは、ごく少数のようだ。
それこそ、貴族くらいしか苗字を持たないものなのかも知れない。
「いや、俺は一般人だよ。俺が住んでた国は、国民全員が苗字を名乗れるんだ」
「変わった制度のある国ね。全員が家名を持つ国なんて、聞いた事がない」
この世界の常識で言えば、そうなるだろうなと思う。
――――いや、待てよ?
だとすると、やっぱりメイさんって貴族様なんじゃないか?
「えーと、メイさんってもしかしなくても、貴族の方ですか? メイ様ってお呼びした方がよろしいでしょうか?」
「ぷっ!」
彼女が貴族の可能性が浮上して、俺はなるべくへりくだった感じで発現したわけだが、彼女にはそれがツボったらしくクスクスと笑い出す。
どうゆう事?
「ごめんね、笑っちゃって。急に無理な敬語使い出すから、おかしくて……」
「は、はぁ……?」
堪え切れない笑いを溢しながら謝る彼女と、戸惑い全開の俺。
「いや~ゴメン、ゴメン! 私も貴族じゃないよ。ブルーフィールは、いわゆる武名よ。だから、呼び方はメイで構わないわ。様付けされるようなガラじゃないし」
「それはいいけど、武名ってのは?」
「ん? あぁ、武名って言うのは、優れた武術って認められた流派に国から送られた名前の事よ。その流派の師範、もしくは師範代を務める人が名乗ることを許されるの。私は『メズゥー流護剣術』という流派の師範代をやってるわ」




