第95話 庭園にて
ルイン合流。
ハインツ「6人に勝てるわけないだろ!」
皇帝「馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!」
俺が長い階段を駆け上がり、4階に辿り着いたと同時に爆発音が響き渡った。
「あっちか」
音の発信源と思われる場所へ向かうと、そこは庭園とでもいうべき吹き抜けの空間だった。今や見る影もないほどボロボロになってしまっているが……。どっちが誘導したのかは分からないが、戦闘するには充分な広さだろう。
破壊の痕跡からは激戦の程が窺える。でも良かった。こちらに重傷者はいないようだ。
向こうは……あちこちに近衛と見られる騎士や、兵士が倒れているね。思ったより数が多い。派手にドッカンドッカンしたようだ。
後衛のガルフ、テレーゼに目配せしながら横を通り、アルとフリード、ハインツ皇子に並ぶ。っていうか、この場にいる帝国組は全員武器が大剣だ。そういう流派が主流なのかもしれない。
「お待たせ」
「おう、お疲れさん」
「こっちに傭兵はいなかった。君が?」
フリードが前を向いたまま聞いてくる。
「うん。傭兵が加勢に来ることは無いよ」
「……そうか。助かる」
ハインツ皇子も前、というか皇帝を見つめたまま短く礼を言ってきた。
やりとりは簡潔に。俺は最も気になっていることを聞いた。
「さっき聞こえた爆発音はフリードだろ?」
「ああ。思ったより護衛や警備が多くてな。時間を取られてしまった」
「なるほど。でも、あらかた片付いたね」
見た感じ、もう残っているのは皇帝と例の3強の1人、ミューラー中将だけだ。
状況把握が終わると同時、この庭園によく通る低い声が響いた。
「新手か……」
ベルンハルト皇帝の重たい呟き。そちらを見る。ついでに2人を【鑑定】……ダメか。まぁ知ってた。
立場が立場だけに、しっかり鑑定対策しているな。今回の作戦、【鑑定】くんがずっと涙目じゃねーか。どうしてくれる。
「ふん。我らに小細工は効かぬぞ小僧」
【鑑定】されたことに気付いた皇帝が、鋭い目で俺を睨みつける。そしてハインツ皇子に視線を戻し、叫ぶ。
「我が覇道……。止められるものなら止めてみせよ!」
「父上……っ」
隣のハインツ皇子からは悲しげな声。覚悟を決めたとは言え、最後まで希望は捨てたくなかったのだろう。
……でも、もう無理だ。
「ハインツ殿下」
「分かっている。どちらかが倒れるまで、この流れが止まることはない……っ!」
そうだ。ここまで来てしまった以上、どちらかの"死"を以ってでしか終幕は許されない。今更「和解しましょう」は通らないのだ。
あちらもそれは充分理解しているに違いない。元からそんな気もないだろうが……。
「皇帝陛下……」
「ミューラー、情けは無用だ。我に逆らう愚か者どもを、一人たりとて生かして帰すな!」
「はっ!」
場の雰囲気がひりつく。いよいよ決戦だ。
ハインツ皇子の一声で、こちらも体勢を整える。
「ゆくぞ、フリードっ!」
「はっ! お前たちも、すまないが手を貸してくれ!」
「分かってるよ」
「おう」
フリードに声をかけられた俺とアルも返事を返す。
さぁ、さっさと全部終わらせて王国に帰ろうか。
※ ※ ※
雪だ。
いつの間にか降り出した雪が、ハラハラとこの庭園へと落ちてくる。吐く息は白く、夜の闇へと溶けていく。
真っ先に飛び込んだのはフリード。遠慮無用の【炎剣】が皇帝の前に立つミューラー中将へと牙を剥く。
「皇帝陛下に手は出させんぞ、フリードォ!」
「ミューラー! いつから僕を呼び捨てにできるほど偉くなった!」
おもむろにミューラー中将が得物である大剣を片手で持ち、空いた手を前へと突き出した。すると、彼を覆うようにドーム状の障壁が発生し、爆発を完全にシャットアウトする。
あれは風の障壁だ。事前に話は聞いている。特等席で"視て"いた俺はほくそ笑む。
──早速使ったな。それが欲しかったんだよ。
新たな魔法習得の感覚に湧き上がる高揚感を必死に抑えて、俺も行動を開始する。
「【インビジブル】」
爆発のどさくさに紛れて、隠密状態に入る。その直前でハインツ皇子とアルにアイコンタクト。
その間にフリードは間合いギリギリまで下がる。
「【ペネトレイトアロー】っ!」
すかさずテレーゼの放った矢が目にも止まらぬ速さで皇帝を狙う。
「ナメるな小娘!」
──ザンッ!………カランカラン
一刀両断。
まじか……。あの速度の矢を正確に迎撃した。甘く見てた訳じゃないが、皇帝もやはり強い。認識を改める。
さて、いつまでも様子見してても仕方ない。仕掛けよう。
「【シャドウニードル】」
「むっ!?」
ミューラー中将の足元に影の針を無数に生やす。真下には障壁張れないだろ?
……思った通り、奴はバックステップで針山から距離を取る。そこに待ち構えていたのは剣を構えたアル。
「おらっ!【スラッシュ】!」
「小癪なァ!【ヘビーブレイド】!」
──ズガァァァン!
凄まじい衝突音を響かせて剣と剣がせめぎ合う。その隙に俺はこっそり近寄ってスキルを発動する。
「【炎剣】」
さぁ、フリードが皇帝を仕留めてしまう前にさっさと終わらせよう。
炎を纏わせた剣でミューラー中将に斬りかかる。アルと鍔迫り合いしている今、こいつが取る手段は間違いなくコレ。
「ちっ! 【ウィンドシールド】!」
予想通り。アルが風の障壁に弾き飛ばされたのを視界の隅に捉えつつ、用意していた手札を切る。
「【破砕撃】」
剣を引っ込めた俺は、逆の手で障壁を思い切り殴りつけた。
「なっ! なぜ貴様がヴィクトルのスキルをっ!」
「砕けろ」
──パァァァァン!
風船が割れるような音と共に風のバリアが弾け飛ぶ。やはり物理系にはそこまで強くない。
「ぐうぅぅっ!!」
焦りの声を上げ、慌てて何かをしようとするミューラー中将に、我らが後衛組からの追撃が飛ぶ。──悪いけど、もうお前には何もさせてやらない。
「【ウィンドボム】」
「【スタンアロー】っ!」
どちらも殺傷力は低いがノックバックやスタンを付与する、やられると地味に嫌な魔法とスキルだ。かわしきれなかったミューラー中将が、被弾のたびに壊れた人形のように踊る。
これで、"チェック"だ。
「【アイアンザッパー】ァッ!」
「【水鏡】」
俺とアルの剣線が十文字に交わる。
──血飛沫が宙を舞った。
「……ば、かな…………こんな……ハズでは……ガハッ!」
死への恐怖からだろうか。
「…………皇帝、へい……か。……ばんざ……い……」
見開いた目から涙を流しながら、ゆっくりと倒れ込んだミューラー中将。地面に積もる雪を赤く染め広げながら、やがて彼は息絶えた。
「ルイン」
「うん。分かってる」
ぼさっとしてる暇はない。まだ終わりじゃないからね。
残すは1つの国の未来を賭けた、壮大な親子喧嘩だけだ。
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ルイン
レベル 21
魔法
【点火】【ファイアボール】【ウォーターハンマー】【氷の盾】
【ウィンドカッター】【ウィンドシールド】←NEW【アースクエイク】
【ライトニング】【ダーク】【シャドウボール】【シャドウニードル】
【ヒール】
スキル
・パッシブスキル
【魔力操作】【剣術】【槍術】【盾術】【鎌術】【危機察知】【並列思考】
・アクティブスキル
【視て盗む】【インビジブル】【気配察知】【身体強化】【跳躍】
【突進】【乱刀】【水鏡】【炎剣】【首刈り】【通打】【破砕撃】
【投擲】【ドレインタッチ】【雄叫び】【鑑定】
称号:転生者 格上キラー 女神の使徒
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