第94話 VS“雪狼”ヴィクトル
ファイッ!
“雪狼”ヴィクトルと1対1で対峙する。
こちらも抜剣を済ませ、すでに互いが臨戦態勢だ。いつでも仕掛けられる。
緊張感が高まる中、ヴィクトルが口を開いた。
「ハズレたぁ、随分と言ってくれんじゃねぇか」
「事実だしな」
「ふん。まぁいい。侵入者は誰であろうが、殺すように言われてんだ。恨みはねぇが死んで貰うぜ」
そう、俺にとっては大ハズレ。
フリードに聞いたところ、こいつは"魔道具による多彩な攻撃"を駆使して戦う、見た目に反してトリッキーな戦闘スタイルだ。
スキル構成は拳術系統に偏っているらしいし、魔法は一切習得していない。正直微妙である。“雪狼”っていう二つ名持ってんだから、氷系統の魔法とか使えや。
拳術スキルも、チャンスがあれば盗むくらいの気持ちでいいだろう。無理するほどじゃない。
まずは【鑑定】。……やっぱ弾かれた。ん? 今首元が光ったな。てことは、あれが魔道具か。
こいつがジャラジャラ身に付けているアクセサリーの中から、今光ったネックレスを【鑑定】してみる。
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鑑定妨害の首飾り
他者や魔道具による鑑定系の効果から所有者を保護する。
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「……すまん。お前は大当たりだったわ」
「さっきから何訳わかんねぇことを……」
前言撤回。それは喉から手が出る程欲しい。だから。
「その首(飾り)置いてけぇ! 【ウィンドカッター】【シャドウニードル】」
【並列思考】による魔法の二重発動。屋内なので火は使わない。
「チッ! んだこのガキ! イカれてんのか!?」
ヴィクトルはそう吐き捨てながらも、余裕で対処する。足元から飛び出す影の針をステップでかわしながら、飛来する風の刃を裏拳で弾き飛ばす。
さすがにこの程度じゃ全く崩れないか。それなら、
「【ダーク】【インビジブル】」
闇が周囲を包み込む。さらに、【インビジブル】も追加で使用してから剣の間合いへ踏み込む。
「しゃらくせぇ!」
奴のピアスが光った。と思った瞬間、ヴィクトルを中心に暴風が放射状に吹き荒れる。……周囲の闇を全て巻き込んで。
後に残ったのは剣での斬りかかりをキャンセルし、吹き飛ばされないように踏ん張っている透明化中の俺だけだ。
「カカカッ! そこかぁ! 見えなくても丸見えだぜ小僧ぉ! 【破砕撃】!」
矛盾したことを言いながら、オーラを纏った右拳を繰り出してくる。猛スピードで迫るソレを"視て"瞬時に判断。
これは受けたら死ぬ。回避一択だ。──逃げ場は……そこ!
「ふっ!」
「オラァ! ……なっ!?」
ヴィクトルの左足元へ、間一髪で前転しながら飛び込む。頭上を"死"が通り過ぎていくのを感じながら、思考は次の行動へ。
すれ違いざまにこちらも仕掛ける。せめて足の一本は"これ"で貰うぞ。
俺は左手に生命力の"オーラ"を集める。……【ドレインタッチ】のおかげで生命力の扱いには多少慣れてる。
──そして反転しながら、拳を眼前の足に叩き込んだ。
「【破砕撃】っ!」
──パァァァン!
「グゥゥッ! このガキ! なんで俺様のスキルをっ! チッ!」
とった。確実に左足首を砕いた手応え。
そのまま転がって距離を取る。しかし立ち上がる直前、奴の背後に浮かぶ無数の石礫を俺の眼が捉えた。……本当に魔道具たくさん持ってんなコイツ。
刹那で対応を取捨選択する。【並列思考】くん様々だ。
「蜂の巣になりやがれ!」
言葉と同時に発射。マシンガンとショットガンの合わせ技みたいになってるな。数えるのも馬鹿らしい程の石の弾丸が、片膝立ちの俺を目がけて高速で飛んでくる。
対する俺は……
「【ウォーターハンマー】」
分厚い水の壁で迎え撃つ。果たして、壁にぶち当たった弾丸がどうなるか……。
「なぁヴィクトル。屋内で銃器を使うのは、実は"死ぬほど"危険なんだぜ」
「あぁ!? な……んだ、そりゃあ!」
──跳弾。
猛烈な勢いで弾き返された石の弾丸が床や壁を縦横無尽に跳ね回り、今度はヴィクトルに襲い掛かる。当然、その直後には水の壁も控えている。
さぁ、お前はこれをどう対処する?
「クッソがぁぁ! 【乱打】ァッ!」
両手にオーラを纏わせて高速のラッシュ。飛来する石礫を次々と粉砕する。
しかし、片足が潰れた状態で全て凌ぐのは至難の業だ。所々、迎撃網を抜けてくる礫によって身体のあちこちにダメージを負う。
さらに、間髪入れずに迫りくる【ウォーターハンマー】は、受けるしか選択肢が無い。せいぜい出来てもガードするくらいだろ。
────やっと崩れた。今ならこいつの"命"に届く。
「【突進】」
水の壁がヴィクトルに衝突した瞬間、【突進】の急加速によって真横をすり抜けるように斜め後ろへと回りこむ。そして振り向く勢いも乗せて、ガラ空きの背中にスキルを発動。
「【水鏡】」
──リィィィィン
甲高いガラスのような音を響かせて、ヴィクトルの胴体を両断した。
「が……あ……ぁ」
「こっちも別に恨みはないけど。あんた、受ける仕事を間違えたな」
「…………」
ヴィクトルの死を確認してから、4階へと足を向ける。
どういう扱いになるかは分からないけど、ハインツ皇子に今回の褒美とかで『鑑定妨害の首飾り』を貰えないかお願いしてみよう。……さっきはああ言ったものの、流石に血やら臓物が付着してるコレを、このまま持っていくのは色んな意味で嫌だ。
予想外に時間を取られてしまったが、懸念材料のひとつであった、3強の1角は崩したんだ。あっちのみんなが楽になったことは間違いない。
「急ごう」
今一度、気を引き締め直して階段へ向かう足を速めるのだった。
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ルイン
レベル 21
魔法
【点火】【ファイアボール】【ウォーターハンマー】【氷の盾】
【ウィンドカッター】【アースクエイク】【ライトニング】【ダーク】
【シャドウボール】【シャドウニードル】【ヒール】
スキル
・パッシブスキル
【魔力操作】【剣術】【槍術】【盾術】【鎌術】【危機察知】【並列思考】
・アクティブスキル
【視て盗む】【インビジブル】←NEW【気配察知】【身体強化】【跳躍】
【突進】【乱刀】【水鏡】【炎剣】【首刈り】【通打】【破砕撃】←NEW
【投擲】【ドレインタッチ】【雄叫び】【鑑定】
称号:転生者 格上キラー 女神の使徒
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