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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第7章 雪が呼ぶ、いつかお前が還る場所

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第89話 自国の首都より先に他国の首都に行く男


バルガーに到着しました


 城に到着した俺たちは、すぐさま使用人に案内されてシェスター総督の執務室に通された。


 どうやら執務の最中にも関わらず、最優先で時間を作ってくれたらしい。



「お待ちしておりました、ハインツ殿下。無事の到着、なによりでございます」



 立派な身なりをした老齢の紳士が、慇懃に一礼する。


「王国のお客人方、そして"女神の使徒"ルイン殿。儂はこの都市を預かるシェスター=ベックマンと申す。話は先触れの伝令から聞いている。よくぞ参られた」


 こちらにも丁寧な挨拶をしてくれたシェスター総督に、俺たちも一人ずつ自己紹介をしていく。



 そして、マルクスの順番になったところで突然、シェスター総督が困惑したような表情になる。……あなたも知ってんのかい。ガルフといい総督といい、ご老人は知ってる率が高いね。


 ちなみにマルクスは22歳だよ。砦で寝る前に、みんなで集まって好きな子の話とかした時に自分で言ってた。



「俺は王国の特別記録官マルクスだよん。よろしくね〜」

「記録官の……マルクス、かね?」

「そう。マルクスだ」


 急に見つめ合って無言の会話を始める2人。……目と目が逢う瞬間好きだと気付いたのかな?


 やがてシェスター総督が「フッ」と、片頬だけの笑みを浮かべた。


「そうか。ならばマルクス殿。この国の行く末を、しっかりと『記録』していかれるがいい」

「そうさせてもらうさぁ」


 話はそこで終わりのようだ。ここにきて、急に存在感をアピールし始めたなマルクス。



 全員の自己紹介が終わると、シェスター総督はハインツ皇子に向き直る。


「殿下。すでに周辺都市の者達は、いつでも作戦行動に移れるよう伝達済みです」

「ご苦労。"レイブン"が、フリードの副官の元に到着する頃合いを見計らって、作戦を開始しよう」


 そこでフリードが発言する。


「彼らはトムが"拠点"に案内しているので、準備を考えると2日ほどかと……」

「なら、部屋の用意はできておりますので、今日のところはお休みになられてはいかがかな? もう夜です。作戦は明日詰めるのがよろしいでしょう」


 このシェスター総督からの提案に、俺たちは素直に甘えることにした。1日中走って疲れているしね。


 今日も例によって原付バイクくらいのスピードで飛ばしていたから、雪がショットガンみたいに顔に当たって地味に痛かったし。



 使用人を呼ぶために、"パンパンッ!"と手を叩く総督。……その仕草に、どこぞの聖女を思い出して馬車がやってこないか警戒を厳にする。


「ん? ルイっち、何してん?」

「馬車が来るんじゃないかと思って」

「ハッハ〜! 今の俺には早すぎるジョークだねぇ。ちょっと理解できないわ〜」


 その後、馬車ではなく普通にメイドさんが来て安心した俺だった。




     ※  ※  ※




「あ〜、フッカフカやぞ」


 メイドさんに案内された部屋で、ベッドにダイブして早速くつろぐ。どこまでも沈み込むような寝心地に、一瞬で俺の心は絡め取られていく。


 なんだこのベッド……やってることがヤバすぎるだろ。


 部屋割りは、例によって、俺とマルクス。"フェザーテイル"の2部屋に分けられた。


 俺と同じく、隣のベッドにうつ伏せで沈んでいるマルクスが、消え入りそうな声で何か言っているのが聞こえてくる。


「……ルイっち、もう俺ずっとここにいるわ。皇帝しばくのは任せた。応援は任せろ」

「分かった。じゃあちょっとフリード連れてくるから、アイツの前でもう1回同じセリフ言ってくれるかな」


 俺がそう言って部屋を出ようとした瞬間、マルクスはうつ伏せのまま真上に飛び跳ねて空中で反転。仰向けで背中からベッドに着地した。


 ……え、釣りたての魚みたいで、めっちゃキモい! 今どうやったのそれ!?


「ふ〜っ。冗談をす〜ぐ真に受けちゃうんだから。ふざけてる暇があったら早く休もうぜぇ。早ければ2日後には帝城に殴り込むんだからさ」

「いい性格してるよ、ホント」

「そんなに褒めるなっての。んじゃおやすみ〜」


 ……

 …………

 ………………


 ……まじで速攻で寝たな。たまにいるよね。寝つきが異常に早い人。


「俺もさっさと寝るか……」


 明日からはもう、息吐く間もないほど忙しくなるだろう。休める時に休まなくては。


 そう思って目を閉じると、マルクスのことを言えないくらいあっという間に、俺は意識を手放した。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 翌朝、部屋に運ばれてきた朝食をありがたくいただきながら、マルクスに話を振ってみる。


「王都って楽しい?」

「人によるし、目的にもよるんでないの〜?」


 そりゃそうだ。聞き方を変えよう。


「いつか観光しに行こうと思ってるんだけど、そう言う意味で楽しめるかなーって」

「な〜る。そんなら楽しいんじゃない? てか、急にどったの?」

「だってさ、自分の住んでる国の首都より先に、他国の首都に行くんだよ? なんかなぁって」


 前世だったら『東京に行ったことがないのに、ロンドンには行ったことがある』みたいな感じだ。あり得ないとまでは言わないが、そんな人は稀だろう。


「まあ、分からなくはないわなぁ。んじゃあ、もし王都に来ることがあったら、俺にも会いに来てよ。だいたい王城にいるからさぁ」

「ハードルが高すぎる」


 普通に門前払いされて終わるわ。



 そして朝食も食べ終わり、食休みしているところにノックの音が響き渡る。


「ルイン殿、マルクス殿。お迎えにあがりました」


 マルクスと頷き合って、椅子から立ち上がる。泣いても笑っても、これが最後の確認となる。後から、「聞いてませんでした」では通らないし、些細な"抜け"が皆の命に直結してくる。


 気を引き締めて臨もうか。


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