第83話 砦に到着、そして早速トラブル発生
俊足のマルちゃんは普通について来れました。
「見えたぞ」
フリードの声で全員足を止める。
ここまで、ほとんど休みなしで走り続け、森の中でさえほとんど速度を落とすことなく駆け抜けた。なお、魔物に関してはフリードパイセンが、全て1撃で片付けてくれた。……爆破で。
剣ってなんだろうね(哲学)。
そして森を抜け、山の麓に『デン!』と我が物顔で存在する、違法建築物件を前に立ち止まった俺たち。←今ここ
「なんか……普通に完成してない?」
砦の入り口に向かって歩きながら、つい間抜けな声が出てしまった。以前見た時は、中の様子が見える程度には未完成だったはずだ。
それがどうだろう。"難攻不落"とでも言いたげに、堅牢な造りをこれでもかとアピールしてくる砦の姿がそこにあった。
「またいつ君のような化け物がやってくるか分からなかったからな。急いで完成させた」
「化け物いうな、この化け物め」
誠に遺憾である。
「フッ。結局この砦は王国からではなく、帝国から僕たちを守る物になってしまったがな」
皮肉なもんだね。少し気になったので、専門の斥候に声をかけてみる。
「ねえヒエイ」
「どうした?」
「ヒエイならこの砦、どのくらい偵察できる?」
俺の質問に、周りのみんなも興味津々な顔をしてる。気になるよね。
「う〜ん。多分中枢部以外ならいけると思うぞ」
「マジで?」
凄くない? さすがギルド長ルーカスが信を置く男ってことか。
「こういうのは訓練と慣れだからな。国が違っても人間が警戒する部分は変わらない。経験を積めば誰でもできるようになるさ」
「んな訳あるかい」
これだから天才肌の感覚派は……。いや、多分なんかのスキルか。欲しいな。
どうにかうまいこと、彼から何かスキルをパクっちゃる。と固く心に刻んだところで砦の門に到着した。
門番は2人。フリードを見て、ビシッと綺麗な敬礼をする。……ほ〜ぅ。
「「フリード閣下、お帰りなさいませ!」」
「ああ。ご苦労。無事、王国からの客人をお連れした。先に客室に案内した後、殿下たちに面会してもらう。伝令を頼む」
「ハッ!」
フリードからの指示で、門番の1人が駆け出す───寸前で俺は声をかける。
「ちょっと待った」
──ピタッ
動きを止める門番くん。この場の全員が俺に注目する中、さらに言葉を続けた。
「お前スパイだろ」
「っ!」
『なッ!?』
一瞬でこの場の空気が緊迫したものになる。……当然だ。もしそれが事実なら、砦内に何人の敵が入り込んでいるか、探さなければならない。
「な、なんだこの子供は! 急に妙な言いがかりをつけやがって!」
当然反論をする門番。なので、さっさとそう思った根拠を言ってしまう。
「俺たちを見る目がおかしかった。全員の顔、体格、服装、重心まで観察していたな? どう考えても、初対面の人間に向ける類の視線じゃない」
「それは、今まで敵だった王国の人間だぞ! 信用しきれないから、チェックしていただけだ」
それっぽい言い訳を並べてくるね。……だけど。
「ダウト。俺たちが到着した時、お前"フリードにも敵意を向けていた"な」
「……」
「悪いね。俺は"眼"がいいんだ」
ついに彼は黙ってしまう。案外潔いな。まだ全然言い逃れはできると思うんだけど。これ以上は、何か言う必要もなさそうだ。
っていうか、あいつはその敵意に気づかなかったのかよ。……いや、気づいていたけど、ただ部下に嫌われてるだけだと思ってスルーしたのかな。
シンとした空間に、声が響く。
「すまないが、彼を捕虜用の独房に連れて行ってくれ。それと、この場に代わりの人員を呼んできてもらえるか」
「は、はっ!」
フリードは頭が痛そうな顔をしていたが、もうひとりの門番に命令を出し、スパイを牢へ連れて行かせた。この後、過酷な尋問が待っていることだろう。
代わりの門番が来るまで、しばし待機することに。
沈黙に耐えかねた、と言うわけでもないだろうが、おもむろに声をかけられる。
「やれやれ、到着早々恥ずかしいところを見せてしまったな」
「いいよ別に。ただ、この後が大変そうだね」
やることがめっちゃ増えたに違いない。
「あぁ。君たちには悪いが……」
「気にすんな。自分の身くらい自分で守れる」
「俺たちも問題ないさ」
言葉の途中でアルとヒエイがフォローを入れる。
「すまないな。そう言ってくれると助かる」
スパイが寝込みを襲ってくる可能性とかも出てきちゃったわけだからなぁ。すごい申し訳なさそうな顔してる。別にお前が悪い訳じゃないのにね。
程なくやってきた代わりの門番に後を任せ、ようやく俺たちは砦の門を通過することができたのだった。
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ササッと客室に案内され、砦の人間が迎えに来るまで小休止する事に。それはいいんだけど、部屋割りがなぁ……。
「どしたん、ルイっち。仲良くしようぜ〜」
「せやな」
まさかのマルクスと2人部屋でした。
いや、他のメンツはパーティーだからね。必然的にこうなるか。まぁ、こいつが悪い人間じゃなさそうなことだけが唯一の救いだね。
「夜は第1皇女の湯浴みを覗きに行こうぜぇ。もちルイっちも一緒に」
「冗談抜きで殺されるって!」
救いは無かった。めちゃくちゃ悪い人間だった。もしそれを実行したら、フリードが全力で【炎剣】ブッパしてくる姿が容易に想像できる。
「ジョークだって〜。アルセインジョーク」
「帝国の人間が日常的にそんなジョーク言ってたら、そこら中で首がポンポン飛んでるわ。間違っても他の人の前でそういうこと言うなよ?」
「モチのロンだぜぇ」
「……ほんとかなぁ」
非常に心配である。
とはいえ、実はマルクスには聞きたいことがたくさんあったりするので、2人というのは都合がいいかもしれない。……軽くジャブを飛ばしてみるか。
「ねぇ、マルクス」
「おん?」
ベッドに寝転がり、顔だけをこちらに向けてくるマルクス。羨ましいから俺もそうしよう。
早速自分のベッドに横になって、話を続ける。
仰向けで横になりながら、顔だけを横に向けて見つめ合う2人。……絵面がひどいが、とにかく話を続けよう。
「なんでマルクスは1人で───」
──コンコン
ノックの音に遮られた。
「どうぞ〜」
脊髄反射かってくらい素早く応じるマルクス。間を置かず、入室したのはフリードだった。直々に呼びにきてくれたようだ。
「わざわざ総大将が来てくれたんだ」
「まだスパイ全員を炙り出せていないからな。僕が直接向かった方が安心できるだろう?」
「そうだね。ありがとう」
「あんがとね〜」
お礼を言う俺とマルクスを交互に見て、フリードはため息をひとつ吐く。
そして、こう言った。
「いいから2人とも、まずはベッドから降りろ」
ごめんて。
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