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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第7章 雪が呼ぶ、いつかお前が還る場所

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第82話 女神の使徒はなんでもは知らない


知ってることだけ


 朝特有の霧が立ち込めているヴォルクスの大通り。


 街の中心部から北門に向かって、ゆっくりと歩を進める一団がおったそうな。もちろん、俺と"フェザーテイル"のことだが。


「早すぎない? こんな早朝にする必要あったの?」


 まだ眠い目をゴシゴシしながら、アルに問う。


「今日中に砦まで行きたいからだろ。あのマルクスとかいう使者が、どれだけ俺たちに着いて来れるのか分からんしな」

「でも、そこそこレベルは高そうだったわ!」

「ふむ、たしか20には届いてなかったはずじゃが」


 おや?


「ガルフはマルクスの事、知ってるの?」

「う、うむ。昔少しのぅ……」


 すかさず俺が聞いたら、若干気まずそうに目を泳がせながら答えてくれた。あまり言いたくなさそうだな。深掘りするのはやめておこう。アルとテレーゼをチラッと見ると、2人も同意見みたいだね。


「お、着いたな」


 アルの声で前方に目を向けると、マルクス以外は全員揃っているようだった。


「ようヒエイ。待たせちまったか?」

「俺たちも今来たところだよ」


 ……むさい男二人が、デートの待ち合わせみたいなやりとりすんなや。どこにも需要ない……いや、案外あるかもしれないな。いけない、深淵に飲み込まれる。深く考えるのはよそう。


 俺は残る"レイブン"メンバーに挨拶をすることにした。


「ダルトンとエリックもおはよう。よろしくね」

「ああ」

「うむ」


「「「……」」」


 会話終了。


 スタンピードの顔合わせの時も一言も喋らなかったし、この二人は基本無口なんだろう。ちなみにダルトンはモノクル眼鏡の魔術師で、エリックはゴツい大男で大剣使いだ。



「ルイン」


 唐突に、別の場所から声をかけられる。味方だと半端なく心強いなコイツ。マリ◯でスター手に入れた時くらい頼もしいわ。


「おはよう、フリード」

「おはよう。あの使者はまだ来ないのか?」


 俺に聞かれましても。


「いや、知らんけど」

「なぜだ? 君は女神の使徒なのだろう?」

「お前は女神の使徒をなんだと思ってるんだ」


 え、預言者的なサムシングだと思ってる? もしかして一般の方々からは、そんな風に思われてるの? 世間一般の女神の使徒に対するイメージ改革が必要かもしれない。



「悪いね〜。ちっとばかし遅れちゃったかい?」



 脳内で戦略を練っていると、聞き覚えのある声がいきなり聞こえてきた。


「まだ集合時間にはなってないよ。……ところでマルクス。王都の人は女神の使徒にどんなイメージを持ってる?」

「なんだい? どしたの急に……。う〜ん、そうだなぁ。女神に選ばれた特別な人間かねぇ」


 ふ、普通の答えが返ってきた……。


「ルイっちが何を聞きたいのか分からないけど、別に崇めたりとかそういうのはないよん」

「そうなの?」

「そりゃそうでしょ。だって、いくら女神様に指名されたからって、特に何もしてない人間を尊敬できるかい?」

「無理っすわ」


 なんという正論パンチだ。俺の知ってる異世界(ラノベ産)だと、無条件で崇められたりしてるのに、この世界はそういうところシビアらしい。


「ただ、それでもリーン教とエルディ教にとっては、やっぱり女神の使徒は重要な存在だからさ。……身の回りには気をつけなね」

「りょ」


 なんだろう。今の言葉からは"マルクスの素顔"みたいなものが、ほんの少しだけ垣間見えた気がした。


 なお、今の話に出てきたエルディ教とは、聖エルディライト法国が国教と定めている宗教である。


「もういいか?」


 話がひと段落したとみて、フリードが声をかけてきた。俺とマルクスが頷くと、集まった一同を見渡してから続ける。


「とりあえず今日中に砦まで行きたい。両殿下が心配だ」


 第2皇子ハインツと第1皇女マリーのことだ。このフリードの言い方に、ちょっと引っかかるものがあったので直接聞いてみる。


「砦の兵士たちは信用できないの?」

「軍は今二つに割れていてね。僕に着いてきてくれた"革命派"と、皇帝に心酔しているミューラー中将についた"皇帝派"だ」


 2つに割れただけ状況はまだマシか。もし全軍が向こうについていたら、その時点で詰んでる


「砦には革命派しかいないわけね。スパイは?」

「いないと信じたいが、正直分からない。だからなるべく早く戻りたいんだ」


 険しい顔で言うフリードに、アルが声を掛ける。


「ならもう行こうぜ。いつまでも門の前にいるのもなんだし。マルクス、お前はどのくらい走れる?」

「君らが全力じゃないなら、多分問題ないよん。こう見えて俺、『俊足のマルちゃん』て呼ばれてるんだぜ〜。おたくらが考えてるよりは、全然走れると思ってくれぃ」


 自信を覗かせる俊足のマルちゃん。それを見て満足そうに頷くフリードだ。


 ……言っちゃなんだが、今のどこに満足できる要素があったんだお前。


「では行こうか」



 やっと出発だ。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 一般道の自動車くらいのスピードで草原をひた走る俺たち一行。


「今回はシーズ村に寄れなくて残念ね!」


 本人の宣言通り、余裕で冒険者のスピードについてくるマルクスを尻目に、テレーゼが話しかけてきた。


「状況が状況だからね。帝国から帰ってきたら時間を作って里帰りしに行くよ」

「ふふっ、そうね! そうしてあげたら、きっとセラさん喜ぶわよ!」


 この前の帰郷時に「久々の【点火】だわ!」と、テンションが爆上がりだった母さんの顔を思い出す。

 無駄にカッコいい火打ち石には、もう戻れなくなってしまった母のために、魔道具を買っていってあげよう。こういう時に親孝行しておかねば。


 懐かしの我が村を思っていたからだろうか。ふと思い出したことがある。



「あ……。そういえば、もうすぐ兄さんの誕生日じゃん」



 あのどこまでも優しい兄を、盛大に祝ってあげねばなるまい。

 近く、村に帰る理由がまたひとつ出来たね。


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