第78話 アルセイン帝国の現状は……
説明多めなので、面倒な方は後書きで大体分かると思います
「やあ、ルイン君。よく来てくれたね」
「ご無沙汰しております」ガーランド様」
入室後すぐに声をかけられたので、一礼して挨拶を返す。ちなみにグレースさんとは扉の前で別れた。彼女は不参加らしい。
そして、冒険者達が固まっている一角が視界の隅に入ったので、俺も自然とそちらへと歩を進めた。その際にざっと、会議室内を見渡してこの場にいる人間を確認する。
(ガーランド様、ステイルザードさん、フリード。……その側にいるのが王都から来た使者かな)
黒を基調とした服で、ズボラな印象を受ける20代前半くらいの青年が、伯爵のすぐ近くに立っている。まるで覇気を感じないその姿は、あらかじめ情報をもらっていなければ、絶対に王都からの使者だとは思わないだろう。
(ん?)
……目が合った。
すると、少しだけ彼の口角が上がった気がする。
あ〜、この人も訳ありな感じだわコレ。こんなあからさまに意味深な雰囲気を醸し出しちゃって、『何かありますよ』って言ってるようなもんだ。まためんどくさそうな人が来ちゃったなぁ……。
冒険者の方に意識を向けると、ギルド長ルーカスを筆頭にリアラさん、アル、ヒエイ、ビアンカが顔を揃えている。……つまり、この前会議に参加したパーティーの代表だね。
視線だけで挨拶を交わすと、俺はアルの隣へ。
俺が位置に着いたのを確認し、伯爵が話を始めた。
「まずは連絡が前日になってしまったことを詫びよう。急な話にもかかわらず、わざわざ時間を作ってくれてありがとう。この街を預かる者として、君たちに感謝を」
みんなが『気にすんな!』みたいに一斉に頷きを返す。
ん?
……え、嘘でしょ? みんなはちゃんと事前にアポもらって時間作ったの? 俺、お休みだったのに、盛者必衰アタックで強制的に連行されたんだけど。
横のアルを見ると、めちゃくちゃ気まずそうな顔をしていた。お前かよ!
どうせ、伯爵の使者から俺にも伝えておくように言われていたのに、酒でも飲んですっかり忘れてたんだろう。だから、グレースさんはあんなに慌てていたのか。
てか、何しれっと自分だけ先に来てんだよ。黙ってればバレないだろうとか思ってたのかな? それはだいぶやってるわ。
『だろう運転』はダメ絶対。『かもしれない運転』を心がけようね。
「ここに帝国軍総大将フリードリヒ=フランベルク氏がいる理由も含めて、事の経緯を彼自身に語ってもらおう」
伯爵がチラリと合図すると、フリードが一歩前に出る。
「僕のことは今の伯爵の紹介で充分だろう。さっそく、我が国が置かれている状況を説明する」
この場の沈黙が、彼に話の先を促す。
「簡潔に言おう。我がアルセイン帝国では現在『第2皇子による反乱』が発生している」
「「「「はぁ!?」」」」
この事を初めて聞いた冒険者組が、驚きの声を上げた。俺もさすがに言葉を失う。
……まじか。これは素直に予想外だったわ。てっきり、帝国とは戦争ルートになるかと思ってたよ。
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フリードの話はこうだ。
ここ数年、歴史的な大寒波に見舞われている帝国は凍死者や、不作による餓死者が後を絶たないらしい。
国民の代表者達が何度行政府に陳情に行っても、返ってくるのは「まもなく王国の支配が完了する。それまでの辛抱である!」という答えのみ。
……当然、この時点でルミウム王国攻略の目処なんか立っている訳がない。
山脈の抜け道に砦を築いているというのは帝国では周知の事実だが、それでもきちんと結果が出せるようになるまで、年単位の時間が必要だろう。
帝国民も馬鹿じゃないんだ。それくらいは当然分かる。
亡命しようにも、このルミウム王国とアルセイン帝国は、決まったルートを使わなければ往来が極めて困難である。そのルート上にある関所を、彼らが通過するのはまず無理だ。
国を捨てて逃げる選択も取れない彼らは、逆らっても死。泣き寝入りしても死という、八方塞がりの状況に追い込まれていく。
……こうして火種は少しずつ、だが確実に帝国全土の至る所で燻り始めた。
そんな崖っぷちの日々が続いたある日、ついにターニングポイントとなる事件が起こる。
あの帝国の英雄『炎剣のフリード』が、深手を追って撤退してきたのだ。これには帝国に激震が走る。
"炎剣、王国に敗れる"
このニュースは瞬く間に拡散された。………すごく身に覚えがある事件だが、ここでは一旦置いておこう。
これを受け、『もはや座して待っていても微塵も希望はない』と、反乱の機運が最高潮に達したその時、立ち上がった男がいた。
それが、『最も国民に寄り添う皇族』として知られている"第2皇子ハインツ"である。
皇族である家族への情と、苦しむ国民との間で板挟みになっていた彼が、ようやく帝国民のために現皇帝を討ち、自らが皇帝となる覚悟を決めたのだ。
彼が帝位につき、望むことはただ1つ、王国との恒久的な友好関係の締結。それによってもたらされる、帝国臣民の安定した生活のみ。
その志に賛同したフリードの力を借りて、帝城を脱出したハインツ一行。彼らは今、例の抜け道の砦を拠点に活動している。
ただその場で皇帝を殺せばいいってもんじゃないからね。体裁をしっかり整えてからじゃないと、ただの犯罪者で終わってしまう。
……ちなみに、脱出の際にハインツが声をかけて、第1皇女マリーとそのお付き数名を連れてきたらしい。多分、ハインツと同じような思想の持ち主だからだろう。
残りの皇族はみんな、民を案じるような崇高な心は持ち合わせていないようだ。
たくさんいる皇族の中で、たった2人しか民を案じていない国とか、完全に終わり散らかしている。
その後、フリードはルミウム王国の協力を得るために、単身でヴォルクスに滞在している伯爵を訪ねようとした。したのだが、直で会いに行くと間違いなく一悶着というか、ドンパチが起こる。
なので、まずは縁のある俺に会おうと探していたら、あのスタンピードの現場に辿り着いた。
その後はとんとん拍子に話が進んで、あっという間に伯爵にお目通りが叶い現在に至る、という訳だ。
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とまぁ、さすがに1から10まで事細かに語ると、それだけで1日が終わってしまう。
簡単にまとめるとこんな感じの状況なのだが、この話を聞き終わった俺は、とりあえず皆が思っているであろう事をダイレクトにぶつけてみることにした。
それは……
「もう全部お前ひとりでいいんじゃないかな」
フリードがいるならどうにでもできるんじゃね、ということだった。
超ざっくりまとめ
皇帝「絶対に王国を手に入れる! 国民?その辺の草でも食わせとけ!」
国民「いつまでも夢見てないで、王国と仲良くしてさっさと助けてくんない?」
第2皇子「あんなんだけど家族は大事。でも国民が鬼ヤバいから俺が守護らねば」
第1皇女「禿同」
って事です。




