第74話 フリードとかいう特級呪物
結構まどマギネタを使うので、たまに聞かれるのですが
私はアニメ3話離脱組です。それから怖くて観てません。
「それで、本当に何しに来たの?」
「ふっ、そう身構えなくていい。こちらに君たちと争う意思はない」
キメラを討伐して、ホッとしたのも束の間。
2体目のキメラ出現と同時に颯爽と現れて、一撃でこれを葬り去った『炎剣のフリード』に俺たちは険しい目を向けた。……のは一瞬で、すぐに警戒を解く。
みんなにはハンドサインで、ここは俺に任せるよう伝える。
「うん。戦うつもりが無いのは分かってるよ。純粋に何しに来たのか知りたいだけだね」
「へぇ。帝国の人間を、やけにあっさり信じるんだな。僕がスタンピードに乗じて、あの街を落とすとは考えないのか?」
これは俺を試してるな。めんどくさいことを……。
「しないよ、お前は。やるなら宣戦布告して、正面から堂々と攻めてくるタイプだろ。…………あのなぁ。話がややこしくなるから、試すような真似はするなって」
「はははっ! すまない。君がどういう反応をするのか、つい気になってね」
……いい性格してるよ。
一旦フリードのことは置いといて、スタンピードがどうなったかを確認する。
キメラがいなくなってから、やはり魔物の群れはその勢いを失くしたようで、戦場全体が消化試合の様相を呈してきている。無事にこのまま終息へ向かいそうだ。
中央を担当している伯爵軍も、ぼちぼち手が空くだろう。
「とりあえず、この街を治めている伯爵家の、騎士団長のところに案内するよ。話はそっちでしてくれ」
「分かった。よろしく頼む」
何があったかは知らないが、どうせこのイベントには俺も巻き込まれるに決まっている(確信)
ならせめて伯爵サイドと話をつけて、ある程度情報がまとまってから俺のところに持ってきてほしい。緊張感を伴う長ったらしい話に最初から参加するとか、今のテンションじゃ乗り切れる気がしない。
ということで、ステイルザードさんの元へフリードを放り込んだら、俺たちは冒険者達の元に合流することにした。
なお、フリードとかいう特級呪物をお届けした際に、ステイルザードさんの目が「え? お前、まさかこのまま帰らないよな?」と言っていたが、俺は優しい微笑みを浮かべて見つめ返し「お腹が痛いので帰ります」と、こちらも目で伝えておいた。
学校すら早退できちゃう魔法の言葉である。奇跡も、魔法も、あるんだよ。
体調不良なら仕方ないもんね。これで完璧だろう。
その後、冒険者達が集合している場所まで行くと、ギルド長に「報酬の受け渡しなんかは、また後日にギルドで行うから、まずは休め」と言われたので、現場を処理する人員を残して現地解散となった。
そして。
街に入るために、ヴォルクスの東門で順番待ちをしている最中のこと。
「俺たちはこれからどうする? 打ち上げでもする?」
「いいわね。お腹が空いたわ」
「オレもやるなら付き合うぞ」
「ボクもだぞ!」
「オイラもだぞ!」
満場一致で、打ち上げの開催がここに決定した。
いいね。テンション上がってきた。今なら緊張感を伴う長ったらしい話に最初から参加しても、乗り切れる気しかしないぜ!
もちろん戻らないけど。
「じゃあ一旦解散して、身支度を整えたら『渡り鳥の止まり木』ってことでいいかな?」
『おー!』
流石にこんな汚れに汚れた格好のまま、みんなで押しかけるのは迷惑すぎる。ターシャさんに鉄拳制裁されてしまう。
はたから見たら、今の俺達はえげつない程に蛮族なので、湯浴みや着替えを済ませて少しでも人間性を取り戻したい。打ち上げはそれからだ。
街に入場後、いつの間にか先に街に入っていた"フェザーテイル"と合流して、『渡り鳥の止まり木』まで一緒に向かうことに。
その途中で、
「あ、そうだ。この後打ち上げするんだけど、"フェザーテイル"も良かったら参加しない?」
「打ち上げ!? アタシは参加するわ!」
テレーゼが食い気味に参加を表明。続いて、
「俺も酒飲みたいし参加するぞ。ガルフ、お前はどうする?」
「わしも、もちろん参加するぞい」
3人の参加が決定した。
「じゃあ、ビルとエルルがくる前にこっちも準備を整えよう」
「そうね。ターシャさん達にも話を通しておかないと」
忙しくなってきたけど、こういう忙しさなら大歓迎だ。
宿に向かう俺たちの足取りは、激戦の後とは思えない程に軽やかだった。
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そして夕食時、『渡り鳥の止まり木』にて。
「それでは、無事にスタンピードが終息した事を祝って〜」
『乾杯!!』
───ゴツン!
俺の音頭に合わせて、みんなが木製ジョッキをぶつけ合って乾杯する。……俺とローグは果実水だが。
実はこの世界、飲酒に関する法律なんかは無いそうなので、俺も飲もうと思えば飲める。
だが、前世の迷信かなんかで、『飲酒すると背が伸びなくなる』みたいなのがあった気がするので、なんとなくまだお酒を飲むのはやめておいた。
前世の常識に引っ張られて20歳まで飲まないとか、そういうのは特にない。
ローグに関しては単純に「まずいから飲まない」だそうだ。
ちなみに、会場である食堂は貸し切ることができた。なんでも、街全体がスタンピード関連の後始末やら雑事に追われていて、宿はともかく食堂の利用者がいないらしい。
商売あがったりの状況だったので、食堂の貸し切りはむしろありがたいそうな。
みんなが思い思いに宴会を楽しむ中、ちょうど近くに座ったガルフに話しかけてみる。
「それにしても、ガルフの魔法すごかったね」
「そうじゃろう、そうじゃろう。まずこの大陸に、わしに並ぶ者はおるまいて」
「そういうとこやぞ」
俺が誉めた途端、びっくりするくらいスムーズに調子に乗り始めた。出会った頃の知的なガルフを返してくれ。……いや、出会った頃も素はこんなんだったに違いない。
「お孫さん、そこんところどうなの?」
「あなたと出会った頃は知らないけど、お城に勤めてた頃のお祖父ちゃんは常にピリピリしてて、怖いなんてものじゃなかったわよ」
当たり前のように、心の声を読み解いて会話を始めてくれるカトレア。……すごいよね。会話だけ見ると「そういうとこやぞ」からの流れになるはずなんだが。
「そうなの? 全く今のガルフからは想像できないんだけど」
「カトレア。昔のことは、もうええでしょう」
ここでガルフがインターセプト。どこぞの地面師みたいなことを言い出した。
「まぁ、知られたくないなら別に聞かないよ。今のガルフが俺にとってのガルフだし」
「ルイン坊は良い子じゃのう」
「今でも信じられないわよ。あのお祖父ちゃんが、どうしてこうなったのか」
色々あったんだろうね。人間、生きていれば性格が変わるほどの転換点が、どこかで必ずくるものだ。
しみじみしていると、ソフィがこちらにやってくるのが視界に入った。なんだろ?
「あの、ルイン君。ルイン君にお客さんが来てるんだけど……」
「俺にお客さん? 誰だろ」
「私です!」
ソフィが答える前に、名乗りを上げる声が聞こえたのでそちらを見ると。
「来ちゃいました!」
眩しい笑顔の聖女セシリアがそこにいた。
どうやら今日の打ち上げに1人、飛び入りの参加者が加わるようだ。
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