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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第6章 東の森のスタンピード

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第73話 VS『キメラ』

第6章ボス戦です


 2つの頭のうち、爬虫類の方がこちらに向けて口を開く。これは多分、ブレスかな。


「ビル!」

「まかせろ! 【鉄壁】っ!」


 ビルのスキル発動と同時、予想通り炎のブレスが吐き出された。ビルが一歩先んじて盾でそれを受け止める。


「ふんっ! フリードの炎に比べればどうという事はない!」

「さすが。じゃあ俺は、【跳躍】」


 ビルの後ろから高く飛び上がる。放物線を描いてキメラを飛び越える軌道だ。空中で上手く姿勢を制御し、真上を通る瞬間に真下に向けてスキルを発動。


「【水鏡】」


 ───キィィィィン!


 甲高い耳障りな音を立てて、再度バリアによって防がれる。……物理もダメ、と。


「そして【視て盗む】も不発か」


 キメラの背後を取る形で着地した俺は、なんの成果も得られなかったことに、つい愚痴ってしまう。


 でもまぁ、盗めないのは半ば予想してた。あのバリアが何によって構成されているのか、全く見当も付かないし。


「さて、次に試すべきは──」


 その時、俺の横をすり抜けるようにローグが仕掛ける。いつの間にかこちらに回り込んでいたようだ。


 キメラも自分に近づく敵性存在を知覚し、振り向きざまに前足による爪撃を横薙ぎに繰り出すも、ローグは身をかがめて器用にかわす。小柄な身体を活かした上手い動き。


 そして、


「【ソニックスラスト】ォ!」


───キィィィィン!


 放ったスキルはバリアによって防がれる。が、せっかくだ。ここはローグに便乗させてもらおう。


「【シャドウニードル】」


 次に試すべきは……時間差攻撃。あるいは1方向にしか張れないと読んで、複数箇所への同時攻撃。


 そのバリアの仕様を確かめてやる。


 影で作られた槍サイズの針が、地面からキメラの腹部目掛けて飛び出した。バリアが発生する兆候は……なし。


『──!!』


 刺さった。


 異形が声にならない悲鳴をあげる。初めて有効打が入ったな。これで、同時に離れた箇所にバリアを展開できない事はほぼ確定した。


「こいつはバリアの複数同時展開はできない! 攻撃が防がれたら、バリアを張られていない方向から攻撃を!」

『了解!』


 すぐさま共有。すると、カトレアから【ウォーターアロー】が放たれた。牽制役を引き受けてくれるようだ。


 キメラは正面にバリアを展開。その隙に、背後から近づいたエルルがハンマーを振り下ろそうとするが、背中の翼から無数の羽がマシンガンの如く射出された。


 本来なら蜂の巣にされるところだろうが、こちらにはビルがいる。


「【カバー】!」


 射線状に割って入ったビルの大楯が、全弾叩き落とす。その撃ち終わりの隙を狙って、今度こそエルルがハンマーを異形に叩きつけた。


「【パワースタンプ】だぞ!」


 ──グシャッ!


『──ッ!!』


 なんと彼女は、胴体ではなく2つの頭のうちの1つ、ヤギ頭を狙い撃って潰した。値千金のファインプレーだ。これは大きい。


 というのも、視覚を1つ潰したというのもあるが、おそらくヤギ頭は状態異常系の何かを使うだろうからだ(ラノベ脳)。睡眠とかありそうじゃん?


「ナイス、エルル! このまま畳み──ッ!」


 畳みかけよう! と言おうとした瞬間に【危機察知】に反応あり。すぐさま仲間への警告に言葉を変える。またこのパターンかよっ!


「何か来る! 備えろ!」



『──!』



 キメラが毛むくじゃらの右前足を高く振り上げる姿が、やけにスローに見える。


(……なんだ? 何をする気だ?)


 そのまま地面に力強く叩きつけると、すぐに異変が起こり始めた。



────ゴゴゴゴゴゴ!



 始めに感じたのは、地面の軽い振動。


 それはすぐに大きくなり、やがて立っていられないほどの地震へと発展する。


「おいおい、さすがにシャレにならないって!」


 近くから聞こえたローグの焦りの声をかき消すかのように、さらに事態は悪化の一途を辿る。


 キメラの居る場所を除くあちこちで、隆起や陥没がひっきりなしに発生し始め、体が宙に浮き上がり、何度も地面に叩きつけられる。


「キャァ!」

「うおっ!」

「イッテェ!」


 ……まずい、みんなまともに立つことすら出来ていない。



 このまま追撃されたらパーティーが壊滅する。強引にでも打開しないと。


「くっ、【跳躍】ッ!」


 地面が隆起したタイミングで【跳躍】を発動。影響を受けない上空に逃れた。


 そして、眼下の惨状を俯瞰して眺める。迫り上がっては引っ込んで行く地面に、身動きひとつ取れず、ひたすら叩きつけられている仲間達の姿が目に入った。


 ハメ技かよ……。えげつない攻撃してきやがる。


「ハメは俺のシマじゃノーカンだぞ」


 ため息と共に軽口をひとつ吐き、スキルを使用する。


「本当はバリアが欲しかったんだけどな……。『こっち』で我慢してやる」


 意識を【視て盗む】にシフトすると、すぐに発動成功の感覚がした。


 キメラを見ると、背中に生えた翼から無数の羽根を射出しようとしてるな。安全圏からいたぶる気か。


 無防備な仲間達にそれを防ぐのは厳しいだろう。急がないと。


 俺は剣を持っていない方の左手を強く握り締め、魔力をこめて着地と同時に地面へと叩きつける。




「【アースクエイク】ッ!」




 高みの見物を決め込んで、勝ちを確信しているであろうこの異形を、俺たちと同じ土俵に引き摺り下ろしてやる。



────ゴゴゴゴゴゴ!



『──!』

「気取るなよ。お高くとまってないで、お前も一緒に遊ぼうぜ」



 キメラの足元にも隆起と陥没が発生し、仲良くバウンドを始めた。その状態から、いよいよキメラの翼が羽をマシンガンのように撒き散らす。


「あ、やべ」


 このままじゃ、全員致命的なダメージを受けてしまう。慌てて別のスキルも発動し、みんなにも助力を頼む。


「おおぉォォォォッ!!! みんな! 余裕があったら、キメラにバリア使わせて!」


 今なら通るかと【雄叫び】を使ったところ、見事に怯ませることに成功した。羽根の射出も止まった今のうちに、ケリをつけないと。


「もうっ! 狙いがっ、難しい、わねっ! 【アクアブレード】! ルイン、後は任せるわよ!」

「任せろ!」


 さすがカトレア。


 あちこち叩きつけられながらも、しっかり魔法を撃ってくれた。


 頭上から振り下ろされる水の刃を、キメラがバリアで受け止める。その隙に這うように懐に潜り込んだ俺は、キメラの胴体に左手で触れる。


「【ドレインタッチ】」


 地面が揺れてまともに立っていられないので、これくらいしか打てる手がない。しかし、効果は如実に現れる。


『──!!』


 かつてないほどスムーズに魔力と生命力が流れ込んでくる。まさか、これが特攻なのか?


「これなら魔力枯渇まで、すぐに持っていけそうだ」


 幸いコイツの魔力量はCランク魔物程度しかないんだ。【アースクエイク】なんて大技使った今なら、そう時間はかからないはずだ。


 最後の抵抗とばかりに、尻尾の蛇たちが襲いかかってくるが、


「【パワースタンプ】っ!」


 いつの間にやら、地面の振動は収まっていたようで、駆けつけたエルルによって蛇は根本から叩き潰された。


 バリアが絶え間なく上部に張られているところを見ると、どうやらカトレアとローグがバリアを張らせる役を続けてくれているらしい。


 いいぞ。それが足止めにもなってるから、今なら吸いたい放題だ。


 そしてついに、


「お、魔力が尽きたな」


 キメラは魔力を吸い尽くされて、意識が朦朧とし始めていた。


 そろそろいいかと思って手を離そうとした瞬間、魔力でも生命力でもない何かが流れ込んできた。


「これは……こいつの感情か?」



 ──恨み、憎しみ、殺意。あらゆる負の感情が渦を巻いている。しかし、その感情の向かう先は俺たちじゃない? これは……。


「聖エルディライト法国か……」


 やはり、彼の国による禁忌の実験の産物らしい。


 魔力枯渇で虚な目をしているキメラを見る。……そうだよな。たとえ魔物が人類の敵だとしても、人としてやっていいことと悪いことはある。



「それはさすがに一線を超えてるぞ。エルディライト」



 怒りを覚えはしたものの、まずはこちらを片付けないとな。……どうせいつかは関わる日が来るだろ。俺、女神の使徒にされちゃったし。


「ルイン、どうしたー?」

「んにゃ、後で落ち着いたら話すよ」

「分かったぞ!」


 エルルが心配そうに聞いてきたので、心配いらないと返事をしてからキメラに向き直る。


『──』

「せめて、その感情に触れた俺が送るよ。君にとっては、不本意かもしれないけど……。【炎剣】」



 今の俺の全力を込めた【炎剣】を発動。


 炎を纏う黒剣を静かに振り下ろす。斬った跡から炎が激しく燃え上がり、キメラの体を焼き尽くしていく。


 最期に覗いたキメラの顔が、心なしか穏やかに見えたのは俺の気のせいだろうか。


 やがて炎が収まった時、そこにはもう何も残されていなかった。



     ※  ※  ※



「ルイン、お疲れ様」

「みんなもお疲れ。思ったよりダメージ受けちゃったね」

「あれだけ転げ回ったらな。オレは鎧があったからまだマシだが」

「ボクは全身痛いぞ!」

「オイラもだ」


 なら帰る前に、【ヒール】をかけてあげようか。と思ったその時、視界の隅に見えちゃいけないものが見えてしまった。


『──』


 たった今、消滅させたばかりの異形によく似た魔物が、どこからともなく現れてこちらに向かってくる。森の奥にまだ潜んでいたのか?


「スタンピードの核となる魔物は、1体だけだったはずじゃ──」



「【炎剣】」



 ──キィィィ………ドォォォォン!!!



 俺が驚きの声を上げ終える前に、更なる乱入者によってキメラが一瞬で消し炭にされる。展開が目まぐるしすぎて、ついていくのがやっとだ。


 さすがにもう"おかわり"は無さそうなので、俺は突然の乱入者へと視線を向ける。


 あのー、こっちは苦労して倒したんで、軽く一撃で屠るのやめてもらっていいですかね……。


 ていうか、


「…………なんでここにいんの? お前」



 『炎剣のフリード』こと、帝国軍総大将フリードリヒ=フランベルクがそこにいた。




───────────────


ルイン


レベル 21


魔法

【点火】【ファイアボール】【ウォーターハンマー】【氷の盾】

【ウィンドカッター】【ライトニング】【ダーク】【シャドウボール】

【シャドウニードル】【ヒール】【アースクエイク】←NEW



スキル

・パッシブスキル

【魔力操作】【剣術】【槍術】【盾術】【鎌術】【危機察知】【並列思考】


・アクティブスキル

【視て盗む】【気配察知】【身体強化】【跳躍】【突進】【乱刀】【水鏡】【炎剣】

【首刈り】【通打】【投擲】【ドレインタッチ】【雄叫び】【鑑定】



称号:転生者 格上キラー 女神の使徒 ←NEW


───────────────



実は【跳躍】が無かったら、かなりヤバかったです。

それだけ【アースクエイク】は危険な魔法です。場合によっては、フリードも封殺されます。

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