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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第6章 東の森のスタンピード

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第69話 聖女がここにいる理由と教皇の思惑

リーン教会は教義の内容がざっくりしているからか、かなり緩いです。


「まぁ! ルインさんはリーン様の使徒だったのね!」

「いや、その……」


 エカテリーナさんが興奮気味に言う。


「そうなんですっ! たしかに聖女である私が【神託】で聞きましたっ!」

「そんな、きっとなにかの手違いで……」


 セシリアもスーパーハイテンションで捲し立てる。使徒とか……リーン様がつい悪ノリしちゃっただけだと信じたいけど、どうなんですかね。


「スゲーぜ、ルイン! どおりでいいボディが打てる訳だ!」


 ボディは関係ない。てか根に持ちすぎじゃない? ごめんて。




 あの後、教会前で騒ぎ散らかす俺たちを迷惑に思ったのか、エカテリーナさんが様子を見に来た。


 そして元凶が俺たちだと分かるやいなや、「立ち話もなんだから」と教会の応接室に通されまして。ソファに座って一息ついたのも束の間、エカテリーナさんに聞かれてしまったのだ。


 『どうして教会前で騒いでいたの?』と。


 そんなこと聞かれてしまった日には、もうおしまいだよ。


 絶好調の聖女セシリアが、1から10までペラペラとご丁寧にしゃべくり回した。


 なんでも、ここまで大規模に教会関係者を連れて来ることができたのは、『聖女』が『女神の使徒』に会いに行くという大義名分があったかららしい。


 しかもこれから彼ら彼女らは、『女神の使徒』である俺の拠点であるヴォルクスで生活するんだって。


 正気の沙汰じゃない。イカれてやがる……っ。


「今、そのことを知ってる人ってどれくらいいるの?」


 恐る恐る尋ねる俺に、恐ろしい答えが返ってくる。


「王都のリーン教会本部の人間は、ほぼ全員知ってますね」

「ほぼ全員!?」


 全校集会でも開かなきゃ不可能なレベルで周知されてるの!?


「教皇様が、すれ違う人みんなに言いふらしてましたからね」

「教皇そんな軽い人なの!?」


 リーン教会に抱いていた、厳粛な聖職者達のイメージが完全に消え去った。代わりに大学のチャラいサークル活動みたいなイメージが生えてきた。


「オイラとしてはいつもふざける側のルインが、ずっとツッコミに回ってる事の方が信じられねーぜ」

「ローグはもう少し静かにしてようね」

「あいよ」


 ……ローグのおかげって訳でもないが、今ので少し冷静になった。すると教皇のその行動に疑問が湧いてきたので、セシリアに質問する。


「セシリア、『あの事』は誰にも言ってないんだよね?」


 『転生者』に関してのことだ。


「もちろんです。私はそんなに口の軽い女じゃありません」


 ええー? ほんとにござるかぁ?


「な、なんですかその目は! ほ、ほんとですっ!」

「ごめんごめん。信じるよ」


 ってことは、教皇は考えなしに、ただ言いふらしてた訳じゃなさそうだね。



 ……多分だけど、俺を守るため。



「何か教皇から伝言みたいなのって、聞いてない?」

「あ、忘れてました! え〜と、『可能な限り早急に味方を増やせ』だそうです」

「……」


 なるほど。ここまでの動きは、やはり俺の身を案じてのことだったのか。素直に感謝だね。


「ルインさん。えっと、つまりどういうことかしら?」

「俺が女神の使徒になっちゃったってことは、隠そうとしてもいずれ漏れる。……おそらく教会内部から」

「「っ!」」


 普通なら箝口令でも敷けば良い、と考えるところなんだけど……。


「女神の使徒発覚の神託時、その場にいたのは誰?」

「教皇様を除くと、枢機卿3名と大司教が4名です」

「ルインさん、それが教会の幹部全員よ」


 エカテリーナさんが補足してくれる。ちょうど各地を担当する大司教が、全員王都にいるタイミングだったらしい。


「裏切るとまでは言わないけど、その中に口が軽い人はいない? お酒が入るとポロッと言っちゃうような……」

「いますね」


 まずはエカテリーナさん。王都の教会本部と、そこまで関わりがなさそうなのに即答した。この時点で雲行きが怪しい。セシリアがその後に続く。


「むしろ全員口が軽いですね」


 ……雲行きが怪しいとか、そんな次元じゃなかった。既にゲリラ豪雨クラスのどしゃ降りだった。


「教会本部が組織として終わってる件については、ひとまず置いておこう。つまり聖エルディライト法国にバレたら、俺は確実に標的にされるってことだね」

「それは……間違い無いわね。『リーン教の使徒』を生贄にして、国内の求心力を高めたり、とかね。ろくでもないことするわよ、あの国は……」


 その上『使徒すら守れない』となれば、リーン教の名声も地に落とせる。一石二鳥だ。


「だからこその教皇と教会本部の動きだった訳だ。この街に関係者を大勢集めて、俺の周りを固めた訳だね。ひとまず納得はしたよ」


 つまり、リーン教会は大っぴらに喧伝してしまうことで、迂闊に俺に手を出せない状況にしちゃおうって魂胆だ。


 教会本部の考えは大体分かった。


 だが、このタイミングでの女神の神託。リーン様、なんのつもりだ?


  ちゃんと考えあってのことだろうな。……特に考えてない可能性もしっかり存在しているのが、なんとも恐ろしいところである。



「とにかく、こうなっちゃったものは仕方がない。頭が痛いけど、まずは目の前のことをひとつずつ片付けていこう」

「おう! よく分かんねーけど任せとけ!」


 ローグの明るさに、少し気持ちが前向きになった。一方でセシリアは暗い顔だ。


「ごめんなさい。考えが至らず、私は単純に浮かれてしまっていました。あの神託がここまで大事だったなんて……」


 12歳の女の子なら、それが普通だと思うよ。


「セシリアのせいじゃないよ。リーン様が本気で俺を使徒にするつもりなら、どこかで通る道なんだから」

「ルインさん……。ありがとうございます。私も力になりますから、なんでも言ってくださいね!」


 セシリアが胸の前で拳を握り「ふんす!」とする。


「私もよ。どうせなら伯爵家も巻き込んじゃいなさい。……セレナのためにも(ボソッ)」


 エカテリーナさんの最後の言葉は聞かなかったことにする。


「ありがとう、みんな」


 情報量の多かった話がやっと終わった。この後はせっかくだから孤児たちの顔でも見にいこうか、と思ったら。


 ──キャッキャ! キャッキャ!

 ──やんややんや! やんややんや!


 なんともコテコテな騒ぎ声が聞こえてきた。


「今度は何かしら」

「近づいてきてますね」


 ──ガチャッ!


「リーナ姉さん、久しぶりー!」

「ビアンカ! 最近顔を見せないから心配したわ」

「「「あ! ルインだー!」」」


 ドアを開けて入ってきたのは"リーナの福音"のビアンカと、彼女にまとわりつくゼンら孤児たちであった。



     ※  ※  ※



「そう。今度のスタンピードはあなたたちが一緒に戦うのね」

「そうだよ! 改めてよろしくね! ルイン、ローグ」

「よろしく」

「こっちこそよろしく頼むぜ!」


 人数が増えすぎて、応接室に入りきらなくなってしまったので、邸宅の庭を借りてみんなでバーベキューをすることに。


 せっかくだから、材料を買ってきてくれた教会関係者や、近くで作業していた大工さん達も巻き込んだ。


 その光景を見て、セシリアがボソッとつぶやく。


「すごい規模になっちゃっいましたね」

「うん。そういえば資金的には大丈夫なのかな?」


 めちゃくちゃ食い扶持が増えましたけど……。


「それがね。教会本部からとんでもない額の予算が降りたのよ。怖いくらいだったんだけど、さっきの話を聞いて納得したわ」


 エカテリーナさんが内情を語ってくれた。さぞや怖い思いをしたことだろう。


 聖女と女神の使徒がいる街の教会がショボいのは、色々とマズいだろうし予算爆増については納得である。


「ウチもあまり寄進できなくて歯痒い思いをしてたから、教会が資金面で心配ないのは嬉しいな!」

「充分過ぎるほど今までたくさんもらったわよ。ありがとうビアンカ。他の子達にも伝えてね」

「リーナ姉さん……うんっ!」


 ビアンカのとこのパーティーメンバーは、みんなここ出身だって言ってたもんね。ずっと気を揉んでいたに違いない。心配事が片付いてよかったね。


 ……その対価は俺の心配事が増えることなのだが、そこは気にしてはいけない。


 俺は向かい側で肉を爆食いしてるローグに話しかける。


「ローグ。結局、街の案内出来なくてごめんね」

「んぁ? ……もぐもぐ、ゴクン。うまい肉食えたし全然構わねーぜ! 気にすんな!」

「そう言ってくれると助かるよ」


 俺も目の前にある串焼き肉を1つ手に取って頬張りながら、物思いに耽る。


 帰ったらみんなにも話さないとなぁ……。憂鬱だ。



 ……

 …………

 ………………



 杞憂だった。


 教会組と別れて宿に帰還した後に、俺と関わりのある人みんなに話して回ったところ、『まぁ、ルイン(君)だからな(ね)』で全員すぐに納得した。……軽くない?


 これは信頼されているのか、諦められているのか……どっちだろうね。


 ともかく無駄に重い雰囲気はノーサンキューなので、ようやくホッと胸を撫で下ろすことが出来たのだった。


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