第68話 女神の使徒(無許可)
ちゃんと許可はとりましょう
冒険者ギルドで顔合わせを行った翌日。
宿の食堂で朝ご飯をモリモリ食べていた俺は、同じテーブルでパンをパクついているローグを見てふと思う。なんだかんだで「こいつにこの街を案内するの忘れてたな」と。
せっかくだから、声をかけてみようか。
ちなみにカトレアはこの場にいない。今日お休みのソフィと、朝早くからどこかに遊びに行った。
「ねえローグ。案内がてら街に出かけない? まだどこに何があるかとか、よく分からないでしょ?」
「モグモグ……ゴクン! それはありがてー申し出だぜ! ぜひ頼むわ」
「ばっちこい」
秒で話はまとまった。
食べたら準備しようか……と言いかけたその時、ターシャさんに声をかけられる。
「ルイン、あんたにお客さんだよ」
「俺に? 誰が来たの?」
と言ってはみたものの、実は心当たりがない訳ではなかったり。
昨日の顔合わせで、聖エルディライト法国の話が出たからね。なんとなく、そろそろ来ちゃうんじゃないかな〜とは思ってた。そしてその予感は的中する。
「修道服を着た女の子だよ。セシリアって言えば分かるってさ」
「行動力がすごい」
たしかに来るかもな〜とは思ってたけど、実際に来るまでが早いって。
彼女が王都に戻ってからそこまで時間経ってないじゃん。聖女って普通、そんなフットワーク軽い存在じゃなくない?
「ちょうど食べ終わったし、すぐに行くよ」
「あいよ。受付のところで待ってもらってるから、早く行ってやりな」
「かしこまり」
ということで、ローグと一緒に聖女の元へ。
「お久しぶりですっ、ルインさん!」
「久しぶりだねセシリア。全然そんな気はしないけど」
俺たちを視界に収めた瞬間、ぱあっと光り輝くような笑顔を浮かべるセシリア。ちょっと眩しいので抑えてもろて。
「この人が噂の聖女様かぁ。オイラはローグだ。よろしくな!」
「ルインさんのパーティーの方ですね。よろしくお願いします」
初対面の二人が挨拶を交わす。それが終わったところで本題に入る。
「それで今日はどうしたの? わざわざ挨拶に来てくれた感じ?」
「それもあるのですが、せっかくですので一緒にお出かけしませんか?」
「えっと……今からローグに街の案内をしようと思ってたんだけど。一緒でもいいなら」
そう言うと、ローグが横から口を挟んだ。
「オイラはまた今度でも構わねーぜ」
「先約はキミでしょうが。ってことでローグもセシリアも3人一緒でいい?」
「「もちろん(です)」」
話はまとまったので、早速準備して街へ繰り出そう。とその前に、
「セシリア。教会の関係者達は?」
「街の住人に紛れてますよ」
愚問だったわ。
なんで街の住人に紛れる必要があるのかは、ちょっとよく分からないけど。きっと何か深い理由があるんだろう。
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とりあえず宿を出て、適当に歩きながら作戦会議。
「さて、まずはどこに行こうか」
「美味いものがある店」
「今さっき朝ごはん食べたばっかじゃん」
「そうだったか?」
ローグが物忘れの激しいお爺さんみたいな事を言い出した。お昼まで我慢しようね。
「ではリーン教会はいかがですか? 実は私たち、この街の滞在中は教会でお世話になるんです」
「そうなの?」
「はい! なので今、改築中なんですよ!」
それはアリかもしれない。
ゼン、ロイド、フローラをはじめとする子ども達の現状が、気にならないと言ったら嘘になる。
エカテリーナさんとも久々に会いたいし。
「ローグ、それでいい? その後に美味しいご飯を食べに行こうか」
「オイラは構わねーぜ」
「決まりですね! それじゃあ行きましょうか」
そう言ってセシリアは、おもむろに手を"パンパンッ"と打ち鳴らした。
すると、大通りを行き交っている馬車の1台が、列から外れてこちらに寄ってくる。やがて目の前で停止した馬車の御者台から、初老の男性が降りてきて口を開いた。
「お呼びでしょうか、聖女様」
「ええ。リーン教会までお願いします」
「御意」
色々おかしい。……なんか没入型のアトラクションでも体験してる気分だよ。
そして俺とローグが口を挟む隙もなく、あれよあれよという間に俺たち3人は車上の人となった。
───ガタンゴトン
「ひどい権力の使い方を見た気がする」
「聖女ですから」
「聖女ならなんでも許されると思っちゃダメだからね?」
この街にいる間に、セシリアに一般常識を教えてあげきゃいけない。……エカテリーナさんオナシャス。
「そういえば、教会を改築してるって言ってたけど」
「はい!」
「何人ぐらいで押しかけたの?」
「機密事項です」
えぇ……。
「てかよ、ルイン。街の案内を兼ねてって言ってたのに、馬車で移動したら意味なくねぇか?」
気付いちゃったか。なるべくそこには触れないようにしてたのに……。
「まぁ、たまにはこんな時もあるさ」
「別にいいけどよ……ん?」
ローグがさらに何かに気付いた。少し遅れて俺も気付く。
「めちゃくちゃ工事の音してるね」
「突貫工事です! 教会本部から連れてきた大工さんが頑張ってくれてます」
「教会本部に大工さんがいたってことに驚くんだけど」
御者さんやら大工さんやら、リーン教会は一体どこを目指しているのだろうか。
そういえばファランダールの屋台では、売る側も買う側も教会関係者だったな。まさに人材の宝庫である。
「あ、着きましたね」
馬車が教会前で停車する。
すぐに御者さんが扉を開けてくれたので、ローグ、俺の順に先に降りてからセシリアをエスコートする。たしか異世界転生ものの主人公達は、みんなこうしてたから間違っていないはず。
「ほい、セシリア」
「あ、ありがとうございますっ!」
……少しセシリアが挙動不審になった気がするけど、なんだろうか。作法とかマナー的なものをミスった訳じゃないよね?
俺達が全員無事に降りたのを確認すると、馬車は元来た細い道を器用にUターンして戻っていった。
ここでセシリアに手を"パンパンッ"ってしてもらったらどうなるか、すごく見てみたい衝動に駆られたが、グッと堪えて教会の方を向く。
「なんぞこれ」
「……すげぇ」
なんかすごいことになってる(小並感)
以前来た教会自体は補修などで綺麗にしただけだが、その周りの土地に新築のアパートみたいな建物がわんさか建っている。
それだけではない。教会の裏手には、これまた立派な邸宅が建てられている。
「セシリア、この立派なお屋敷は?」
「シスターエカテリーナと孤児達の住む家です! 今のように教会に住みこみだと、少し手狭ですからね。ちなみに、私もここにお世話になる予定です」
この返事はまあ予想通りだ。問題は、
「じゃあ、周りにある集合住宅は?」
「王都から一緒に来た教会関係者の寮です」
「どんだけ連れてきたんだよ!」
来る時、絶対に大名行列みたいになってただろソレ!
「てかスタンピードのこの時期に、よくそれだけの人間を連れて来れたね」
「神託がありましたからね」
「おぅふ」
おっと。キラーワードが飛び出したぞ。全力でスルーしよう。
「女神様はなんて言ってたんだ?」
と思った矢先に、純粋なローグくんが尋ねてしまった。チッ、余計なことをしてくれる。
「女神様はおっしゃいました。『我が使徒ルインがいる限り、ヴォルクスは安全である』と」
「ついにやらかしやがった!」
しかも特大の爆弾仕込んだ割に、神託そのものは大したこと言ってない!
「ルイン! おまえ使徒様だったのかよぉ!」
ローグが目をキラッキラさせて詰め寄ってくるが、俺も初耳である。
ツッコミどころが満載だが、これだけは言わせてほしい。
……拒否権はありますか?
めがみ「そこに無ければ無いですね」
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