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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第6章 東の森のスタンピード

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第67話 異世界で初めて『キメラ』が認知された日


スタンピード対策会議、後編です


「見たことの無い魔物? 新種ってことかい?」


 静まり返る会議室に、リアラさんの声が響いた。その問いに対するヒエイの答えは、


「違う。新種ではないと思う」

「は?」


 予想とは異なるハッキリとした否定の言葉に、聞いたリアラさんも面食らう。


 そりゃそうだ。さっき確かに『見たことがない。ギルドの記録にも残っていない』と言ったんだ。なんで"違う"と言い切れる?


 ほら、リアラさんも「何言ってんだコイツ。【通打】かますぞ」みたいなオーラを放ち始めちゃったじゃん。


「ぶ、ぶたないで! ゴルドフになっちゃう!」


 あまりのプレッシャーに、Bランク冒険者のヒエイが生まれたての子鹿みたいにプルプル震えながら、訳の分からない事を言い出した。


 なんだよ、『ゴルドフになっちゃう』って。


「……みんなの言いたいことも分かってるから、まずは聞いてくれ。端的に言うと、俺が見たのは『何種類もの魔物を、無理やり1つにしたような異形』だったんだ」



 ──キメラ。



 まず俺の頭に浮かんだのは、その言葉だった。そして、確認したいこともできた。……できてしまった。


 なので挙手して発言の許可を請う。


「ん? お前は、"アルゴスアイズ"のルインだったよな。どうした?」

「ヒエイだけじゃなくて、この場の全員に聞きたいんだけど」


 そう言って全員の顔を見渡した。ちゃんと聞く姿勢になっているので、このまま続ける。


「この中の誰も、そんな魔物集合体みたいな異形は見たことないんだよね? リアラさんも?」

「アタイもこの大陸はほぼ見て回ったと思うが、そんな魔物は見たことも聞いたこともないね」


 リアラさんも知らない、と。


「ステイルザードさん、ダグラム伯爵家にそういった話だったり、記録なんかは残っていませんか?」

「ふむ。ワシも長いこと伯爵家に仕えているが、そんな話は聞いたことがない。……グレース、貴様はどうだ?」

「はっ! 私も寡聞にして存じ上げません!」


 伯爵組も知らないかぁ。


 ということは、自然発生したという線は限りなく低いだろう。他に考えられる中で最もありそうなのは…………あぁ、イヤだなぁ。


 もしこれが当たってたら、厄いなんてレベルじゃない。


 下手したら近い未来に、大陸全土を巻き込むレベルの大戦が勃発する可能性まで出てくる。


「ルイン?」


 言い淀む俺を訝しんで、カトレアが声をかけてくる。……う〜ん、ここで黙ってても何も始まらんか。とりあえず言うだけ言ってみよう



「じゃあ、もうひとつ聞くね。『こういうことをやりそうな国』はどこ?」



『っ!!』



 Cランクパーティーの"リーナの福音"以外の全員が、俺の言いたいことを理解して絶句した。


 そうだ。考えられる中での最有力候補は『実験の末に造り出された生物』であるという説。というか、どう考えても自然発生するような類の魔物じゃないんだから、それしかない。


 このことを踏まえて、俺の質問を聞いた面々の頭に浮かんだ国の名は、間違いなく一致している。


 みんなが尻込みして中々口を開けずにいる中、リアラさんがついに『その名』を口にした。


「聖エルディライト法国しかないね。あそこはエルディ教以外の者は、等しく虫ケラ以下だと思ってる国だ。生物実験くらい平気でやるだろうよ」

『……』


 ついに"リーナの福音"までもが、話を理解して絶句した。リアラさんは構わず俺に視線で先を促す。


「これはルミウム王国の一大事に発展しかねないからね。伯爵家の騎士団長がいてくれて良かったよ」


 ステイルザードさんの方を見ると、鷹揚に頷いて応えてくれた、


「必ず我が主と、東の公爵閣下にもお伝えする事を約束しよう」

「お願いします」


 老騎士に頭を下げてから、話を続ける。


「その個体が法国から逃げ出して東の森まで来たのか、意図的に送られてきたのかは分からないけど。……なんであれ、まずはこのスタンピードを乗り越えなきゃね」

「うむ。その通りだ」


 ギルド長が頷いたところで、ヒエイにバトンタッチする。


「初っ端から話を脱線させちゃってごめんね、ヒエイ。続きをお願いしていいかな?」

「お、おう」


 まだショックから立ち直っていないようだ。それでも、彼は話を再開してくれた。


「俺たちが偵察した感じ、変わったところはその生物の存在だけだ。逆に言えば、スタンピード自体の対応はセオリー通りで問題ないと思うぞ」

「ふむ。なら迎撃部隊の配置に関しては、これから俺と騎士団長の方で詰めておこう。構いませんか?」

「是非もなし」


 二人の組織の長が決めてくれるなら異論は無い。


「問題は、誰をその異形に当てるかだが……」


 ギルド長が発言しながら、リアラさんに"チラッチラッ"ってしてる。いや、よく見ると全員"チラッチラッ"てしてたわ。


 みんな揃ってチラチラチラチラ。すごいシュールな絵面だな……。


 それをされた本人はというと。


「アタイは本当にヤバくなるまでは、雑魚狩りに回るよ」

「ヒョッ?」


 ……今の声どっから出したんだ。


 しかし、まだリアラさんのターンは終わっちゃいないぜ。


「いつまでもアタイに頼り切りになる訳にもいかないだろう? ちょうどいいから、ここにいるメンツを育てちまおう」

「簡単に言ってくれるな。だがまぁ、うむ。一理あるか……」


 つまりリアラさんは、後方腕組み師匠面がしたい…ってコト!?


「違うと思うわ」

「だよね」


 俺のおふざけに即反応。さすがカトレアである。さすカト。


 ……とか、この場でそんな事してたら、目を付けられるのは自明の理。


「随分と余裕そうじゃないか"アルゴスアイズ"」

「ヒョッ?」


 あ、火の粉がこっちに飛んできちゃった。アチチッ。こいつはいけねぇや。


「そんな余裕があるなら、ボスの異形はあんたらが担当しな」

「それはっ!」


 反射的に声を荒げるギルド長。しかし、リアラさんは聞く耳を持たない。


「黙れルーカス。……騎士団長も、その方がなにかと都合が良いのでは?」


 その言葉にハッとしたステイルザードだったが、すぐに表情を緩めた。


「そういうことか。リアラ殿、お気遣い痛み入る」

「お気になさらず。お互いにメリットがある事ですので」


 なんの話だろう?


 それはそうと、騎士団長にはちゃんと敬語使うんだ。とかどうでもいいことを考えてる俺を、カトレアが睨んできた。……なして?


「異論があるパーティーはいるかい?」


 他のパーティーに意見を求めるリアラさん。彼女に最初に返事をしたのは"レイブン"だった。


「俺たちの得意分野は戦闘じゃなくて調査だからな。もちろん問題ない」


 "フェザーテイル"と"リーナの福音"も後に続く。


「俺たちも心配ではあるが、異論は無い」

「ウチらも! というか、ウチらにやれって言われても多分無理だし! ……実力的な意味で」


 その答えを聞いたリアラさんは、俺たちの方を見てニヤリと笑う。


「決まりだね」

「……ガンバリマス」


 そんな感じで、スタンピードの核となるボスは"アルゴスアイズ"が担当することが決まった。


 他の冒険者や兵士達の配置については、決まり次第告知されるそうだ。


 最後に、ついでと言ってはなんだが、この異形の呼称も決定した。といっても完全に予想通りだが。



 ──魔獣型特殊生命体『キメラ』



 分類上は魔物扱いとする。ランクは現時点で不明。



 奇しくも、テンプレに欠かせない超有名な存在が、この世界で初めて認知された日であった。


伯爵サイドはルインに手柄を立てさせたいようです。なんでだろうね(すっとぼけ)


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