第66話 スタンピード対策会議
怒涛の新キャラ登場回。
……ですが、特に覚えなくても大丈夫です。
ヴォルクスに帰還した日から2日後の昼過ぎ頃。
「今日はよく集まってくれたな。このギルドを束ねる者として礼を言う」
冒険者ギルドの会議室にて、約束していた顔合わせが始まった。司会進行はこの男、今日も筋肉が無駄にキレてるギルド長ルーカスだ。
「お互いに知らん顔もいるだろうから、まずは自己紹介から済ませるぞ」
そう言って、ギルド長は集まった面々を見渡した。俺もギルド長の視線を追って、集まった面々を視界に収める。
今現在、この会議室に集まったパーティーは5つ。いや、正確にはもうひと組と言っていいのかな? なぜかステイルザードさんとグレースさんもいる。
「異論は無いようだな。じゃあ──」
「俺たちからやるよ」
真っ先に手を挙げた俺に、全ての視線が集中する。
「"アルゴスアイズ"か」
「この中じゃ、パーティーとしては一番の新参者なんだ。うちから始めるのが筋でしょ?」
そう言うと、会議室の一角から笑い声が上がった。
「あははは! いいじゃないか。アタイは嫌いじゃないよ、そういう考え方」
「お久しぶりです。リアラさん」
「ああ。挨拶は後にしよう。さっさとやることやっちまいな」
「ですね」
一拍置いてから口を開く。
「俺はCランクパーティー"アルゴスアイズ"のルイン。うちのパーティーは割とバランス良くなんでもこなせるから、持ち場は基本的にはどこでも大丈夫だよ」
そしてうちのメンバー達も続けて自己紹介をしていく。エルルのところで何人かの顔が微妙に強ばったけど、多分リアラさんの娘だって知っているからだろうね。
"アルゴスアイズ"の全員が自己紹介を終えて席に着くと、隣に陣取っていた4人組のパーティーが入れ替わるように立ち上がった。
「次はウチらだね!」
最初に話し始めたのは、緑髪のショートヘアが特徴的な女性剣士だ。
「同じくCランクパーティー"リーナの福音"のリーダー、ビアンカだよっ!」
「あたしはメアリ。弓士よ」
「僕は魔術師のバルガスだ」
「私はマリーと申します」
男1人に女3人のハーレムパーティーかな? と思ったけど、どうも違うっぽい。メアリとバルガスの雰囲気だけが、完全に恋人の"それ"だからだ。
様子を伺う俺の視線に気づいたのか、ビアンカが話しかけてくる。
「君が噂のルインなんだね。リーナ姉さんから話は聞いてるよ」
「リーナ姉さん?」
はて? 誰のことだろう。
「ほら、リーン教会のエカテリーナ姉さん。ウチらはみんなあそこの孤児院出身なんだー」
「あぁ、なるほど。だから"リーナの福音"なんだね」
"リーンの福音"じゃないの? と思ったけど、そういう事みたいだ。
「色々話は聞いてるよ。ふふっ」
意味深に笑うビアンカに、そこはかとなく危険な雰囲気を感じたので、ギルド長に視線を送り進行を促す。
「む? じゃあ次は、”フェザーテイル”頼む」
ちゃんと意図を汲み取ってくれるあたり、流石は組織の長である。
「そう言われてもな。俺たちはこの場の全員と面識あるぞ。必要か?」
アルがいきなり『クラスの全員友達です』みたいな陽キャアピールを始めたぞ。と思ったら、この場のみんながウンウンと頷いている。……え、アル達ってそんなに顔が広いの?
「いらないみたいだから、次は"レイブン"よろしくな」
少し離れた場所に座っている3人組にアルが振ると、中肉中背の茶髪の男が苦笑しながら立ち上がった。……おぉ、友達っぽいやりとりだ。
「今アイツが言ったように、パーティー名は"レイブン"でBランクだ。俺はリーダーのヒエイで、こっちのモノクル男が魔術師のダルトン。でかい剣を持ってる方がエリックだ。よろしく頼む」
簡潔に済ませるヒエイに、ギルド長が補足する。
「ちなみに今回の件で、ずっと東の森を調査してくれてたのはこいつらだぞ」
それはすごい。消去法で考えたら、このヒエイが凄腕の斥候ってことになるのかな。
「変に持ち上げるような言い方はよしてくれ、ルーカスさん」
「はっはっは! 悪い悪い。さて、Aランク冒険者"剛拳のリアラ"は全員知ってるよな? なら最後にそちらのお二人をご紹介しよう」
そこで、ここまでずっと黙っていたステイルザードさんとグレースさんが一歩前に出た。
「彼らはこの地を治めるダグラム伯爵家が誇る、騎士団の団長ステイルザード氏とその部下グレース氏だ」
「ステイルザードだ。部下のグレース共々お見知り置きを」
「……(ペコリ)」
……グレースさんの緊張がとんでもないことになっている件。前もそうだったけど、限界まで空気に溶け込もうとしてる。何が彼女をそうさせてしまったのか。
「今回は伯爵家からも兵を出す故、この場に参加させていただいた。しかし、魔物は冒険者の領分。よほどのことがない限りは口を挟まぬから安心してほしい」
へぇ。こういう時って正規軍と冒険者は揉めるものだと思ってたけど、やっぱこの世界は民度が高いね。
お互いが自分達の得意な事と不得意な事を、しっかり弁えているというか。
「ともかく、これで全員の紹介は終わったな。ここまでで何かあるものはいるか?」
本題に入る前に、ギルド長が確認を取る。もちろん、誰も手を上げない。
「よし、それじゃあここからは"レイブン"のヒエイに、東の森で観てきたものを話してもらおう」
ヒエイに目配せすると、彼はギルド長の隣まで進み出る。そして、深呼吸してから訥々と語り始めた。
「まずは"アルゴスアイズ"に礼を言わせてくれ。お前達のおかげで、リスクを冒さずにじっくり調査することが出来た」
「俺たちも気づいたのは偶然だからね。調査は任せっきりになっちゃったし、お互い様だよ」
「ふっ、そうだな。……さて、まず森から既に魔物が溢れ出しているのは知っているな?」
現状の確認だ。これは"フェザーテイル"を筆頭に、多くの冒険者達が連日狩りに出ているので周知の事実だ。ダムに例えるなら、まもなく決壊といったところか。
「森に入れなくなる前に、スタンピードの核となる魔物の存在は確認できた。……できたんだが」
スタンピードの核となる魔物とは、いわゆるダンジョンの階層ボスみたいな強力な魔物のことだ。
こいつを倒すと、魔物の群れはまるで我に返ったかのように突然大人しくなる。そうなれば、あとは足の止まった魔物を狩っていくだけの簡単なお仕事に変わる。
その魔物の発見で言い淀むってことは……。
「見たことの無い、ギルドの記録にも残っていない魔物だったんだ」
ですよねー。
異世界モノあるある。スタンピードのボスがイレギュラーな魔物で、一筋縄じゃいかないやつ。
一番最初にスタンピードの気配を感じ取った時から、絶対こうなるんじゃないかと思ってたよ。
すでにバルガスがどこの誰で、何の職だったか分かるまい。
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