第64話 ただいま、ヴォルクス
第6章です。
はい、よーいスタート(様式美)
久々のヴォルクスへ到着した俺たちは、西門で街に入るための手続きをしていた。冒険者カードを提示しながら、ふと門番さんの顔を見ると……。
「あれ?」
「おや、君はたしか……村から出てきたと言っていた、随分しっかりしていた子だったかな?」
「よく覚えてるね。あれから結構経つのに」
「あはは。それだけ君は印象に残っていたんだよ。身分証を拝見するね」
なんと、俺が初めてこの街に来た時に、手続きをしてくれたあの小粋な門番さんだった。
「へぇ。もうCランク冒険者になったのかい? すごいじゃないか」
「まぁ色々あってね」
ほぼコネというか伯爵パワーだからね。運が良かっただけです。
「はい、特に問題はないね。通っていいよ」
「ありがとう」
少し懐かしい気持ちに浸りながら、俺はみんなと共に冒険者ギルドに向かうのだった。
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「ルインさん! 皆さんもお久しぶりです!」
ギルドで俺たちを出迎えてくれたのは、暗めの茶髪をポニーテールでまとめた垂れ目の受付嬢ことアンナさんである。
「久しぶりだね。元気だった?」
「はい、特に変わりは…………ありますね。現在進行形で」
笑顔のアンナさんだったが、途中からそれが苦笑に変わってしまった。
「スタンピードのこと?」
「ええ。皆さんはその件で戻ってこられたのですよね?」
「そうそう。ギルド長に呼ばれてね」
話はちゃんと通っていたようで、アンナさんの応対は淀みない。実家のような安心感とはこのことか。
「でしたら、少々お待ちいただけますか? ギルド長に今後のことについて聞いてきますので」
「その必要はないぞ」
その時、2階へと続く階段から筋肉モリモリマッチョマンが現れた。
「ギルド長!」
相変わらず、パッツンパッツンになった服が今にもはち切れんばかりである。……いったい着る時はどうしているのだろうか、とかどうでもいい事をつい考えてしまう。
「ご苦労だったなアンナ。後は俺が引き継ごう」
「では、お願いします。私は受付業務に戻りますね」
後の説明はギルド長ルーカスがしてくれるようだ。アンナさんはそのまま業務に戻るようなので、お礼を言っておこう。
「アンナさん、ありがとうね」
「いえいえ。……改めて"アルゴスアイズ"の皆様、おかえりなさいませ。諸々の手続きはしておきますね」
なんて行き届いてるんだろうか。冒険者ギルド・ヴォルクス支部の居心地の良さに溺れてしまいそうになる。
ファランダール支部のスタッフは、基本的に言われたことしかしなかったからね。あのロクデナシ冒険者共を相手にしてたら、そうなっちゃうのも仕方ないが。
「おし、じゃあいいか?」
「うん。よろしく」
一瞬「ここで?」と思ったが、聞かれても問題ないことしか話さないのだろうと考え直して先を促す。
「まずは今回のスタンピードについてだが、お前たちが事前に察知してくれたおかげで、かなり余裕を持って準備することができた。礼を言う」
「そりゃ良かった」
「お前たちが思ったよりも早く戻ってきてくれたおかげで、より万全の体勢で迎え撃つことが出来るだろう。近々スタンピードに向けて主要パーティーの顔合わせを行うから、"アルゴスアイズ"にも出席してほしい」
なるほど。スケジュールを確認したかったのね。
「了解。俺たちはいつでもいいよ。……いいよね?」
危ない危ない。勝手に話を進めてしまいそうになった。
もしかしたらみんなにも、帰ってきたらしなきゃいけないこととか、予定があるかもしれないからね。踏みとどまって聞いてみた。
「私もいつでも平気よ」
「オレも大丈夫だぞ」
「ボクもだぞ!」
「オイラもだ」
気持ち良いくらいテンポ良くOKが出たので、先ほどの言葉を再度ギルド長に告げる。
「ということで、俺たちはいつでもいいよ」
「ふっ、なら明後日の昼頃にギルドに来てくれ」
意外と早いな。しかも即答したってことは、他のメンツはいつでも動けるように、既に備えているってことか。
「分かった。他にはなにかある?」
「いや。俺からはこれだけだな。お前達は戻ってきたばかりだろう? 今日のところはゆっくり休んで疲れを取れ」
「そうするよ」
話は終わりのようだ。ギルド長は手をひらひらさせながら、元来た階段を登っていった。
「じゃあ今日はここで解散しようか」
「そうね。早く荷物も置きたいわ」
「じゃあオレとエルルは行かせてもらおう。次に会うのは明後日のここでいいか?」
下手に依頼を受けたら、思いがけないトラブルに巻き込まれる可能性もあるからね。それがいいか。
「そうだね、そうしようか」
「それまでは羽を伸ばしましょう」
「お母ちゃんも多分顔合わせに来るから、報告はその時でいいと思うぞ!」
ここでエルルが、いつにしようか考えていたリアラさんへの報告について言及する。この申し出は正直助かる。
「それはありがたい。後で俺からも改めて言うけど、家を貸してくれたお礼だけでも先に伝えておいてくれる?」
「分かったぞ!」
そして流れるようにビルがエルルを肩車して、ギルドから去っていった。すごい出にくそうだったのが印象的だった。ギルド出てから肩車すればいいのに……。
さて、俺たちも行くか。
「……」
「ん? どうしたのローグ。君は俺たちと同じ宿だよ。行こう」
「っ! い、いいのか?」
その言葉を聞いた瞬間、彼の元パーティーメンバーであるディーンへの怒りが再燃しそうになった。いや、あいつのことなんかより今はローグだ。
「当たり前じゃん。また肩に担いで行こうか?」
「……あの時、そんな運び方されてたのかよ。意識がなかったから知らなかったぜ」
「あんた達、いいから早く行くわよ」
カトレアに急かされてしまったので、俺たちも出発しよう。
「ほら、行くよローグ」
「早くしなさい」
俺とカトレアの言葉を聞いたローグは、
「おうっ!」
眩しいほどの笑顔で返事をしてくれたのだった。
さぁ、久しぶりの『渡り鳥の止まり木』へ帰ろうか。
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