第62話 VS20階層ボス『リーパー』
16階層の探索を開始してからおよそ1週間。
人間が扱えるスキルを持った幽体系魔物が、17階層以降で追加されることはなかったので、俺達はひたすら階段を目指して探索を進めた。
ここまで来ると敵の攻撃力も油断できないものになっているので、慎重に慎重を重ねた結果1週間もの時間を費やしてしまった。
……それでも、異常な攻略速度だとギルド長フィアーナからは言われたが。
そしてたった今、ついに20階層への階段を発見したのだった。
「やっと階段に着いたわね。精神的に疲れたわ」
「ここまでずっと、縛りプレイ状態で探索していたからなぁ」
「そうね。パーティーでの連携を忘れそうだわ……」
カトレアがここまでグッタリしているのは珍しいかもしれない。
「オレはここしばらく、盾を持って歩いているだけだったからな。今日なんか家に盾を忘れてくるところだったぞ。アッハッハ!」
「じゃあボクはハンマーを忘れかけたぞ! アッハッハ!」
「オイラはダガーを、ってか? アッハッハ!」
久々に出たな、熊さんジョーク。いつ以来だっけ? エルルとローグはそこで便乗しないでもろて。
「収集つかなくなりそうだから、ひとまず20階層の転移装置解放しに行くよー」
『了解』
急にはっちゃけ始めた彼らを強制的にシャットダウンする。そして再起動をかけた後、みんなで仲良く階段を降りていった。
※ ※ ※
無事に転移装置も解放し、"アルゴスアイズ"の面々は揃ってボス部屋の前へ。
え? もちろんこのまま20階層ボスに突撃するよ。
早く21階層に進みたいからね。というか、メンバー全員がまともに戦えるエリアに行きたい。
カトレアが言っていたように、このままじゃパーティーの連携が狂うし、戦えないメンバーのストレスがマッハなのだ。
久々の熊さんジョークが飛び出しちゃうくらいには、ストレスを感じていたのだろう。知らんけど。
「じゃあ開けるよ」
『おー!』
──ズゴゴゴゴ
大きな音を立てて両開きの大扉が開いていく。
ビルを先頭に歩を進めていくと、10階層のボス部屋と同じような光景が広がっていた。
「お、ボス出現時の黒いモヤだ。みんな、戦闘準備」
みんなが気を引き締め直すのと同時に、部屋の中央に集まった黒いモヤが形を成していく。
判別可能となったボスの姿は、ボロボロの黒いローブを身に纏い、身の丈ほどもある大鎌を手に持った2m50cm程の骸骨だった。
すかさず【鑑定】をかける。
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リーパー
レベル20
魔法
【ダーク】【シャドウボール】【シャドウニードル】
スキル
・パッシブスキル
【鎌術】【不死】
・アクティブスキル
【身体強化】【首刈り】【ドレインタッチ】
称号:なし
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惹かれるスキルは無し。魔法は闇魔法かな。全部欲しい。
でも【視て盗む】前に、問題なく倒せるかどうかの確認だ。
例によって、先にこちらが動くまでは敵も動かないので、手短にボスの情報を仲間内で共有して軽く戦い方も話し合った。
「ほぼ予想通りだったわね。まずは討伐が優先だったかしら?」
「そうだね。その結果次第でどうするか考えようか」
「そうね」
「じゃあ、手筈通りに」
『了解』
全員の準備が整ったところで、戦闘開始だ!
「【スタン】!」
初手はカトレアの雷魔法。最速の雷がリーパーに直撃し、ほんの一瞬だけその動きを封じる。……もう少し止められるかと思ったけど、見立てが甘かったようだ。
『カカカッ』
ここでリーパーの全身から『闇』が噴き出し、周囲全てを黒に塗りつぶす。
……これは【ダーク】かな。視界を封じる魔法か? いや、【気配察知】もできない。多分探知系の無効化だな。これは意外と便利な魔法だ。絶対に盗もう。
さらに闇に乗じたリーパーが攻勢に出る。しかし、
「ビル! カトレアに鎌が行く! 【カバー】を!」
「了解だ! 【カバー】、【鉄壁】!」
俺には『闇』の動きでリーパーの狙いが手に取るように分かる。ビルにフォローを頼むと、すかさず守りに入ってくれた。
──キィィィィン!
「ぐっ! 見た目の割に重いな!」
ガラスを引っ掻いたような高音と共に火花が散る。ここで生じた1瞬の隙を突き、俺が背後から接近し魔法を発動した。
はい、チェックメイト。
「【ヒール】」
『カッ!? カカ……カ──』
その癒しの光に触れた側から、リーパーが光の粒子となって溶けていく。うん、思った通りこれで倒せるなら、しばらく経験値の稼ぎ場はここだね。
空に還っていくリーパーを見送りながら、俺はおよそ1週間前のことを思い返していた。
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16階層に初めて到達した日の夜。
「さて、みんなはこれからどうしたい?」
夕食の席で、今後の方針を決める会議を開催することにした。
「その前に、もう一度私たちの目的を確認しておきましょうか」
「うむ。何よりも優先すべきは」
「レベルを上げることだぞ!」
「だぜ!」
「うん。その通り」
現状を再確認したら、次は議題を挙げてみる。
「今悩んでるのは、結論から言うと20階層ボスに挑むかどうかなんだよ」
「っ……続けて」
一瞬何かを言いかけたカトレアだが、とりあえず俺の発言を聞いてからにするようだ。本当に場を回すのが上手いよね。いつも助かってます。
「16階層から、おそらく19階層までは墓地エリアだ。出現する魔物も幽体系で固めてくるだろうね」
「うむ。そうだろうな」
「14階層でのスケルトン狩りだと、もう効率が悪いんだよ」
ダンジョンでのレベリングを始めてから分かったのだが、自分のレベル未満の魔物からだと、得られる経験値が激減するようなのだ。体感で10分の1くらいかな? 世の中に高レベルの人間が溢れていないカラクリはこの辺にあると思う。
「かと言って、16階層以降も物理無効だから狩りには向いてない」
「ボクのハンマー……」
あの元気なエルルが、こんな悲しそうになるくらいである。
「でも、いきなり20階層は危険すぎないかしら?」
カトレアの懸念も分かる……。でもね、
「考えなしで言ってる訳じゃないよ。むしろ、経験値を稼ぐなら20階層周回がベストだと思ってる」
「? どういうことかしら」
「11階層から多分19階層までアンデッドってことは、ボスも十中八九アンデッドだと思う。それなら……」
「っ! ……なるほど。その手があったわね」
さすがカトレア。理解が早い。
「どういう事だー!?」
「オレ達にも説明してくれないか」
分かっていない組に説明してあげる。……簡単な話だ。
「【ヒール】で封殺できる」
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ドロップはやはり魔石だった。今まで見た中で一番大きい。それを拾ってからみんなに声をかける。
「みんな、お疲れ様」
「ルインの考えた通りだったわね」
「レベルが上の相手でも、戦い方次第でこんなにあっさり倒せるんだな……」
「完封だぞ!」
「スキル多いのはやっぱずりーな」
ローグよ、俺に言われても困る。
「21階層の転移装置を開放しに行こうか。そんでレベル20くらいまではここに通おう」
『おー!』
後に、俺たちの間で『リーパー道場』と呼ばれることになるレベリング法が爆誕した瞬間であった。
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