第61話 異世界モノのド定番火魔法『ファイアボール』
初めて11階層のスケルトンを殲滅してからは、怒涛のレベリングの日々だった。
どうして急にダイジェスト形式で事を進めようとしているのかって?
それはね……、階層を降りていく度に追加される、魔物のラインナップを見てもらえれば分かります。
12階層では、剣を持ったスケルトンソルジャーが追加。【不死】を除く所持スキルは【剣術】のみ。
13階層では、槍を持ったスケルトンランサーが追加。所持スキルは【槍術】のみ。……これも持ってるんだよなぁ。使ってないけど。
14階層では、盾を持ったスケルトンガードが追加。所持スキルは【盾術】のみ。これは一応貰っておいた。……果たして俺が盾を使うかどうかは分からんけど。
武器を持ったところで所詮は近距離のみ。遠距離の攻撃手段を持っていない限り、正直なんの問題にもならない。
エルルのハンマーや、【シールドバッシュ】、【通打】でワンパンである。もはやただの歩く経験値と言っても過言ではないだろう。
つまりスケルトンを丁寧に殲滅していき、レベルが上がったら階層を降りていく。ただその繰り返しだったのだ。何か語るようなことがあるだろうか。いや、ない。
スケルトンは例え殲滅しても、次の日になったら「あれ、何かありました?」みたいな感じで、何食わぬ顔でリポップしているのでレベリングが捗る捗る。
そしていよいよ15階層。ここにきて、ようやく俺の心が躍るような出来事が起こった。
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「やっぱりこの階層もスケルトンかぁ」
目の前に、もはや見飽きた存在であるスケルトンが、5体セットの詰め合わせで現れた。若干レベリングにも飽き始めている俺が愚痴るように呟くと、後方のスケルトンから火の玉が飛んできた。
「ビル、お願い」
「任せろ」
前衛のビルが難なく盾で防いでくれる。それにしても、今の魔法はもしや……。
「まさか、ここで手に入るのかっ!? 【鑑定】っ!」
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スケルトンマジシャン
レベル15
魔法
【ファイアボール】
スキル
・パッシブスキル
【不死】
・アクティブスキル
なし
称号:なし
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「よっしゃ! 初級火魔法のド定番きた!」
ファイアボール……お前のことが好きだったんだよ!
「なんで【ファイアボール】でそんなに喜んでるのよ……」
「カトレア達にとってはただの初級魔法かもしれないけど、異世界ものを愛する者にとっては、絶対に押さえておきたい魔法なんだよ」
大体物語なんかでは最初に覚える魔法だもんね。……いったい誰だよ、最初に【点火】とか覚えた傾奇者は。
「というわけで、手出し無用でお願いね」
「はいはい」
「一応気をつけろよ」
「分かってる」
カトレアにはぞんざいな扱いをされてしまったが、優しい熊さんには注意を促されたので素直に頷く。
そして、
「邪魔な前衛を先にやっちゃうか」
剣も抜かずに敵の集団に一足で飛び込むと、右の剣持ちに【ヒール】をかけて成仏させる。と同時に、左にいる盾持ちに【通打】を放って粉砕した。
……スキルの同時発動。この前【並列思考】を手に入れてから可能になった戦法である。
相手に反撃する隙を与えず、残りの前衛2体も同じように処理。
そこで【危機察知】に軽い反応があった。おそらくまた魔法を使おうとしているな。……えぇい! チャンスを逃してなるものか!
残された最後のスケルトンの姿を、全力で視界に収める。魔法発動の瞬間には、どうにか間に合ったようだ。
さぁ来い! …………よし、スキルゲットの感覚!
「【氷の盾】! から感謝の【ヒール】だ。さぁ、疲れたろう? もう天へお還り……」
空中に氷を生成して火球を防ぎつつ、癒しの光を発動。
慈悲の眼差しをもって、俺に【ファイアボール】という素敵なサムシングをプレゼントしてくれた、スケルトンマジシャンくんを送ってあげる。さらばだ、我が友よ。
「さぁ、進もうか」
「その無駄に聖者ぶった綺麗な顔やめなさい」
「いくらなんでもひどくない?」
……理不尽が過ぎる。
「真面目な話、この階層はちょっと面倒だね。俺たちならいくらでも対処できるけど、急に死角から火の球が飛んでくるのは鬱陶しい」
「同感だな。レベル上げには向かんと思うぞ」
「じゃあ先に進んじまおうぜ。オイラのレベルも16になったし、次の階層を見てみねーか?」
それがいいか。もしレベル不足を感じたら14階層に戻ろう。……今のところ、常に相手に対する特攻手段を持っているから、苦戦らしい苦戦はしてないけど。
「そうしようか。カトレアとエルルもそれで良い?」
「良いわよ」
「おー!」
「話はまとまったね。16階層への階段を探そう。ローグ、先頭をお願い」
「おう! 任せとけ!」
ローグを筆頭に15階層の探索に戻る。
俺たちはカトレアの探知魔法のおかげで不意打ちされることはないけど、もし不意打ちで魔法をくらったら、一気にパーティーが崩れる可能性もあるんだよな。……地味に嫌な階層だね。
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「なるほど。これは多分19階層まで続くだろうね」
16階層の様子を見た俺の感想である。
「ある意味分かりやすいわね」
「ここからは逆に、オレとエルルが何もできないんじゃないか?」
「ユーレイは叩けないぞー……」
「オイラも【ウィンドアロー】くらいしかねぇぞ」
そう。うちのメンバーの発言からお分かりのように、見渡す限りの墓、墓、墓。ここから先は墓地エリアのようだ。となると当然。
『オォォ……』
魔物は霊魂タイプとなる。
「う〜ん……まずは【鑑定】」
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ゴースト
レベル16
魔法
なし
スキル
・パッシブスキル
【霊体】
・アクティブスキル
【霊魂飛ばし】【ドレインタッチ】
称号:なし
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「って感じの能力だね」
「なるほどねぇ」
「ルイン、どれが習得可能だ?」
真っ先に俺のことを気にかけてくれるビルさん、まじビルさん。
「【ドレインタッチ】だけかなぁ。他は覚えられるとしても覚えたくない」
「それはそうだな」
「まずは有効な狩り方を探ろうか」
早速俺たちは検証に取り掛かることにした。
……
…………
………………
数十分後。
「大体分かった」
その辺を彷徨っているゴーストで実験を繰り返した結果、有効な手段が判明した。
「まずはカトレアの魔法全般は有効みたいだね。特に雷」
「そうね。水は効きが悪かったわ」
雷は特攻と言って良いだろう。【ライトニング】はもちろん、【サンダーボール】【サンダーアロー】でも1撃だった。
水魔法に関しては、どの魔法でも何発か直撃させないと、倒すまでには至らなかった。
「オイラはダメだったぜ」
「風は効かないみたいだね」
ローグの風魔法はほぼ効果がなかった。一応、ビルとエルルのスキルも試したけど、案の定物理攻撃はゴーストの体をすり抜けるという結果に。
「俺は結構選択肢あったわ」
「魔法もスキルも色々あるものね」
「いいなー!」
エルルに羨ましがられてしまった。なんかごめんよ。
ちなみに、俺の手持ちではやはり【ヒール】が特攻だった。次点で【ライトニング】と覚えたばかりの【ファイアボール】、何気に【炎剣】も通った。
「最後にちょっとスキル盗んでくる。そしたら今日は帰ろうか」
「そうね。良いんじゃないかしら」
「レベリングも順調だしな」
「おー!」
「夕食は肉にしようぜ!」
てことで、カトレアの導きによりゴーストを探知、発見し早速近づいていく。
すると、
『オォォォォ』
──ヒュンッ
「うおっ! 今のが【霊魂飛ばし】か。ノーモーションで来るからビビったわ……」
何度も飛ばされる弾丸のような物を、スレスレでかわしながら近づいていく。自分の体をちぎって飛ばすようなものなので、少し小さくなってきてる気がするな。
そしてゴーストの体に俺の方から触れてみると、魔力と……これは生命力なのかな? たしかに体から何かが吸い取られていくような感覚がする。
……おっ、生命力で正解っぽいね。習得した手応えを感じた。
「早速試そうか。【ドレインタッチ】」
『オォォォォ!!』
あれ、明らかに俺の方が吸い取る力が強い。なんでだろうと思ったけど、すぐに思い当たる。
「あ、【魔力操作】のおかげだなコレは」
まさかこんなところで活きてくるとは。転生したての頃が懐かしいぜ。
やがて魔力が尽きたのかゴーストは光となって消えていき、その場にはドロップの魔石だけが残された。……そう。ゴーストのドロップも魔石である。
このダンジョン都市に、まともな冒険者が集まらない原因の一端が、またひとつ垣間見えてしまった気がする。
言うほど美味しくないんだよ、このダンジョン。
魔道具なんかのための魔石確保が、このダンジョンの存在意義なんじゃないかな……。あとは次点でオークの肉かな。
今のところ、冒険者側にメリットが少なすぎる。深い階層に潜ったらまた話が変わるかもしれないけど。
まともに冒険者ランクを上げられるなら、絶対にそっちで依頼を受けた方が稼げると思う。
とにかく無事にスキルもゲットできたことだし、みんなと合流して街に戻ろう。
帰りに市場に寄っていかなきゃね。ローグ御所望の美味しい肉料理をご馳走してあげようっと。
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ルイン
レベル 17
魔法
【点火】【氷の盾】【ウィンドカッター】【ヒール】【ライトニング】
【ウォーターハンマー】【ファイアボール】
スキル
・パッシブスキル
【魔力操作】【剣術】【槍術】【危機察知】【並列思考】【盾術】
・アクティブスキル
【視て盗む】【突進】【気配察知】【身体強化】【水鏡】【鑑定】【炎剣】
【投擲】【跳躍】【通打】【乱刀】【雄叫び】【ドレインタッチ】
称号:転生者 格上キラー
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カトレア……レベル17
ビル ……レベル17
エルル ……レベル18
ローグ ……レベル16
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