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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第5章 ダンジョン都市『ファランダール』

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第59話 聖女が突然やってきた!


 無事に10階層を突破した翌日。

 この日は話し合いの結果、念願の休日となった。


「あ〜、幸せだぁ……」


 もうお昼近い時間になっているというのに、俺はいまだにベッドから抜け出せずにいた。今日はもう1日中このままでもいいかな……。


「いい訳ないでしょ! 早く起きなさい! お布団が干せないじゃない!」


 いきなり部屋に乱入してきたカトレアが【家事】スキルを遺憾なく発揮しようとしている。手早く布団を剥がされそうになるが、俺は必死に掴んで離さない。


「イヤだ! 寒い! 寒い!」

「今日は暑いくらいでしょうが! まったく、いつまで経っても起きてこないと思ったら。……早く布団から手を離しなさい!」


 しかし一向に手を離さない俺を見て、ついにカトレアが夜叉になる。


「いい加減にしなさい! 【魔弾】!」

「甘い!」


 首を傾けるだけで難なく躱す。


 遅いわ小娘が! 俺に飛び道具は効かぬと知れ。フハハハハッ!


 ──バシュッ


「はぇぁ?」


 避けた先、具体的に言うと枕がある辺りから、穴が開いたような音が聞こえた。…………ひょっとすると、これはまずいやつでは?


 恐る恐るカトレアの様子を窺うと、まったく目が笑っていない笑顔だった。本気で怒った時の母さんがダブって見える。


「ルイン」

「ごめんなさい」


 こういう時の最適解は、素直にかつ端的に謝ることだ。無駄な口を叩こうものなら、その文字数に応じて相手の怒りが増幅されてしまう。


 たとえ直接的に枕に穴を開けたのがカトレアであったとしても、そんなことは関係ないのだ。さっさと起きなかった俺が悪い。そういうことなのである。


「自分、さっさと起きて枕を買って参りますね!」


 お説教が始まってしまう前に、さっさとこの場を脱出しなければ。


 カトレアの怒りの声を背に受けながら、俺は街へと繰り出したのだった。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




「さて、どうしようか」


 荷物になるので、枕を買うのは後回しにする。


「とりあえずご飯食べるか。もう昼食の時間だしね」


 ──ドン!


「キャッ!」


 そんなことを考えながら歩いていたせいだろうか。修道女のような服装の小柄な女の子とぶつかってしまった。



 正直に言おう。既にこの時点で厄介イベントの気配が漂っているので、できれば無視したい。……だって今のわざとぶつかってきてたもん。考え事してたから避け損ねちゃったよ。


 しかし、流石にここで知らん顔するのは外聞が悪すぎる。


 なので尻餅をつくこの女の子に、手を差し出しつつ声をかけることにした。


「ごめん、大丈夫?」

「え、ええ」


 その女の子は手を取って立ち上がると、俺の顔をマジマジと観察し始める。……コレはどういう意図だろうね。


「何かな?」

「あ、ごめんなさい」


 その女の子は謝りながらも、好奇心を宿した瞳でこちらを見るのを止める様子はない。……これは気付いてると見ていいのかな? てことは、やっぱりこの子は。


「謝る必要はないけど……君、俺のこと知ってるの?」


 ちょっとピクっとしたな。はい、確定。


「いえ、会うのは初めてです」

「ごめん、言い方を変えよう。俺のことをどこまで知っているの?」


 今度こそ女の子は目を見開いて、驚きを露わにした。


「すごいですね! 流石転生者です!」

「やっぱりね。君、その服装からして聖女的な何かでしょ」

「申し遅れました。リーン教の聖女、セシリアといいます」

「俺はルインだよ」


 お互い自己紹介をする。なんとセシリアは俺と同じ12歳だった。物心ついた頃にはもう聖女として教会に所属していたらしい。


「【神託】でリーン様からあなたのことを聞いていて、前から気になってたんですよ。……ところで、なんで聖女って分かったんですか?」

「こういう類の話は、数えきれないほど見てきたからね」


 前世でね。


 初対面のシスターっぽい女の子が、俺の事を知ってる風でわざとぶつかってきた。これでただのモブな訳がない。


 となれば、一番ありそうなのが聖女関連だった訳である。多分【神託】とかで聞いて来たんだろうなぁ、と思ったらドンピシャだった。


「いるだろうなとは思ってたけど、リーン様はやっぱりちゃんといるんだね」

「もちろんですよ。何か困ったことがあれば、あなたに相談するように言われてます。よほど信頼されているんですね」

「…………」


 なんだろう。リーン様に信頼されてるって言われて、まず思ったことは『イヤだなぁ』だった。

 絶対、他にもっと頼るべき人がいるでしょ。雑に俺に振ってくるのやめてよ。


「ちなみに、転生者のことは他の人には言ってませんので安心してくださいね」

「そりゃ良かった」


 知られないに越したことはないからね。


「それで、聖女様はなんでこの都市に?」

「セシリアでいいですよ。普通に巡礼です。それで昨日の夜、【神託】でルインさんがこの都市にいると聞いて会いに来ました」

「よく見つけられたね」

「教会のみなさんに協力していただきました!」


 周りを見渡しながらそう言うセシリアの視線を追うと、買い食いしてる人や、通行人やらがペコリと会釈してきた。……覆面警察官か何かかな?


「なるほどね」

「とりあえず面識が持てたので、今日の目的は達成です!」

「面識を持ちたかっただけなら、わざわざぶつかってこないで普通に話しかけてくれば良かったのでは?」

「……」

「……」


 この聖女様、結構ポンコツかもしれない。


「ま、まぁいいじゃないですか! とにかく、お会いできて良かったです。それでは、あまりみなさんをお待たせするのもなんですので、これで失礼しますね。またお会いしましょう」

「……うん、そうだね。またね」


 その時はイベントもセットになりそうで気が重いが、再会を約束した後セシリアと周りにいた教会関係者は帰っていった。


「今度【神託】盗めないか聞いてみようかな」


 そうしたら俺もリーン様と話ができるようになるかもしれない。……聖女じゃないと使用不可っぽい気がするけど。


「結構話し込んじゃったな。ご飯食べて枕を買いに行かないと」


 俺は枕がないと寝れないタイプの人間なので、これだけは絶対に忘れないようにしないと。


 帰る頃にはカトレアの機嫌が直ってるといいなぁ……。


 リーン様にそんなお願い事をしながら、すっかり遅くなってしまったお昼ご飯を食べに向かうのだった。


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