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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第1章 辺境の村シーズ

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第6話 平和な村に迫る危機


「ルインが魔法を覚えてくれて、お母さん助かっちゃったわ〜」


 上機嫌にルンルンと話すのは、我が母・セラだ。


 宴会の時に【点火】を習得した俺を見て、真っ先にこう思ったらしい。


 『これはお料理の支度が捗るわ〜!』と。


 翌朝目を覚ました瞬間。「待ってました!」とばかりに俺の真横で起き待ちしていた母に、小脇に抱えられて台所へ連れ込まれた。


 そして、抱えられたまま【点火】で火起こしを終えたところに、冒頭のお言葉を頂戴したのである。……まだ俺、起きてから自分の足で立ってないんですけど。



 さて、母さんがここまで大はしゃぎしているのには、もちろんちゃんと理由がある。

 この世界は富裕層でもない限り、一般のご家庭に着火の魔道具なんかがないからである。

 庶民は無駄に洗練されたデザインの、スタイリッシュな火打ち石でカチカチ、カチカチとめっちゃ頑張って火を起こすしかない。


 やっていることは完全に原始人のそれなのだが、火打ち石の見た目のせいでやたらカッコよく見えるので、最初に目撃した時は今まで感じたことのないような変な気持ちになったものだ。




 朝食の席では、家族全員から魔法の件を突っ込まれたのだが、


『ガルフさんにコツを教わって、その後めちゃくちゃ練習した!』


 意味としてはこんな感じの、ふわっふわな説明をしたところ、


「さすが俺の子だな!」

「あらあら、うふふ」


 と、いともあっさり納得(?)してくれた。


 ちょろすぎない? ちょっと心配になるんだけど。


 ていうか母さん、今まで『あらあら、うふふ』なんて言ったことないだろうが。急に属性盛ってくるのやめーや。


 ウィル兄さんだけは、


「魔法って、そんな簡単なものじゃないと思うんだけどなぁ……」


 と、苦笑いしていた。


 さすが我が家の癒し(転生疑惑あり)である。兄さんはずっとそのままの兄さんでいてね。




 そんな一幕もあったが、今日も今日とて秘密基地にやってきた。


「さて」


 冒険者になると決めた以上、妥協は一切なしだ。


 いざ依頼を受けた時に『実力不足で死にました〜』なんて、つまらない終わり方だけは絶対に認めない。


 『最低限生き残れるレベルに〜』みたいな、甘ったれた目標はいらない。やるからには、この世界トップクラスの上澄みを目指す。


 どんな状況も余裕で切り抜けられるくらいにならないと『人生を楽しむ』ことなんて、できる訳がないからな。

 毎日必死こいて生きるのは前世だけでお腹いっぱいだ。もう2度とあんな人生は送らない。


「よ〜し! やったるぜ!」


 魔法に剣に体術に。今日の訓練メニューはワガママ欲張りセットじゃい! 必死こいて生きてやるぜ!


「怪我には気をつけて頑張るのよ〜」

「はーい!」


 微笑ましげに俺を見守る母さんからの、温かい激励を受けながら本日の特訓は始まった。


 死角になっているとはいえ、この秘密基地(秘密とは言っていない)は普通に我が家の近くにあるので、母さんが洗濯物を干しに庭に出た時とかについでに様子を見にくるのである。





☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



 その頃、森の奥では


「見つけたぞい」

「ほんとか! 意外と早く見つかったな」

「運が良いわね!」


 ガルフがついに、探知魔法でボアの巣のおおよその位置を突き止めた。


「う〜む、運が良いかは疑問じゃな。ちとまずいかもしれん」

「ん? なんか問題でもあったのか?」


 難しい表情のガルフを見て、2人にわずかな緊張が走る。


「群れのボスと思しきボアの魔力が、通常のボス個体よりも明らかに大きい」

「異常個体か?」

「直接見てみなければ分からんが、可能性はあるのぅ」

「場所はどのあたりかしら? 偵察してくるわ」


 弓士と斥候を兼ねているテレーゼが、そう提案する。


「すまないが頼む。いつもより慎重にな。……やばそうだったらすぐに引き返せよ」

「分かってるわ」


 ガルフから大体の場所を聞いたのち、テレーゼは素早くボアのねぐらへ向かっていった。



「……俺たちだけでやれるレベルか?」

「まだなんとも言えんな……。最低でもCランクはありそうじゃ」

「マジかよ……。方針を練り直す必要がありそうだな」

「うむ」


 通常のボアの群れなら、ボスの強さは単体でDランク下位といったところだ。ボアがEランクの魔物なので、そこに毛が生えた程度の強さでしかない。


 このケースなら巣を強襲して、ボスも雑魚も逃すことなく一網打尽にすることはそう難しくない。実際に自分達もそうしようとしていた。


 だが、群れを率いるボスが自分達と同等レベルとなると話が変わってくる。


 お供の雑魚どもを先に処理しようとすると、ボスに手痛い妨害を受けて戦闘不能に追い込まれかねない。


 ボスを先にどうにかしようとしても、雑魚に邪魔されて攻めの手が中途半端になってしまう。


 手間取れば、逃げられるリスクも当然生まれてくるだろう。


「とにかく今は、あいつが戻るのを待つしかないか」

「……そうじゃな」



 それから、どのくらい経っただろうか。


 緊張状態を保ちながら辺りを警戒することしばらく、音もなくテレーゼが現れた。


「お待たせ。戻ったわよ」

「おう、おかえり。どうだった?」


 優れない表情の彼女を見て、2人はある程度察しながら訊ねた。


「通常のボアは巣の付近に10体ほど。群れのボスもなんとか確認できたわ。体の大きさは通常種とほぼ変わらないんだけど。問題は……」


 そこで少し言い淀む。


「問題は?」


 アルが続きを促す。



「……全身が真っ白だったのよ」



 その情報にガルフがしばし目を閉じて黙考した後、該当する個体名を記憶の中から引っ張り出した。


「スノーボア……ッ」


 このルミウム王国では生息していないはずの『Bランク』魔物の脅威が、長閑なシーズ村に迫ろうとしていた。



あなたの中では、あらあらうふふ系キャラといったら誰ですか?

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