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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第5章 ダンジョン都市『ファランダール』

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第57話 夫婦喧嘩でスキルを使ってはいけない


 9階層に降り立った"アルゴスアイズ"の面々。


「さて、ここが豚肉の楽園か」

「豚肉! 夕飯はお肉かー!?」

「肉食いてぇ!」


 エルルとローグのお子様コンビ(見た目が)は、俺の発した言葉に大はしゃぎだ。


「オークを豚肉って言うのはやめなさい。なんかイヤだわ」

「お前達も楽しみなのは分かるが、ダンジョン内で騒ぐのはダメだぞ」


 カトレアとビルの大人組は俺と子供達を嗜める。……ピクニックに来た家族かな?


「はい注目。ここも基本的な戦法は8階層と変わらないと思う。敵の編成にエイプがいた場合は俺がその対応。いなかった場合はみんなのサポートに回るよ」

「分かったわ」

「じゃあカトレア、【サーチ】お願い」


 早速探知してもらって、魔物の反応を確認する。


「……いるにはいるけど、どの群れも他の冒険者と戦闘中よ」

「あー、みんな考える事は一緒か」

「オークの肉はそこそこ高く売れるからな」

「あれはいいものだぞ!」

「オイラも好きだぜ!」


 という訳である。


 基本的に8階層を抜けられる実力があれば、オーク肉がドロップする9階層を稼ぎ場にする。

 食べてよし、売ってよしの良素材だ。そりゃ人も集まるわ。うちの子供達も目を輝かせているしね。


「これは10階層も抜けちゃったほうがいいかもなぁ。ローグ、10階層を突破している冒険者ってどのくらいいるの?」

「詳しい数は知らねーけど、全体の6割くらいじゃねーかな」

「う〜ん、多いとみるべきか少ないとみるべきか」


 考え込む俺にカトレアから声がかかる。


「現時点で力不足を感じていないなら、10階層のボスと戦ってみてもいいんじゃないかしら?」

「オレも同意見だな。危険だと思ったら離脱はできるのだろう? なら1回挑戦してみるのはどうだ」

「たしかに。ちなみにエルルは前に来た時はボスと戦った?」


 リアラさんが拳圧で吹き飛ばしている可能性もありそうだったので、一応聞いてみる。


「お母ちゃんに『いつか自分で倒して達成感を味わえ』って言われたから、ボスとは戦ってないぞ!」

「おぉ……っ!」


 すごい良い師匠ムーブだ。一見ガサツに見えて、実は気遣いの人なのかもしれない。……家に匂いが残るレベルのぶっ飛んだ酒呑みだけど。


「じゃあ10階層に行ってみようか。もし他の冒険者達を抜けて襲ってくる魔物がいたら対処する感じで」

『おー!』



 ……そんな魔物はいませんでした。この階層は需要に対して供給が少なすぎるのかもしれない。


 肉を所望するエルルとローグに、帰りに市場で買ってあげることを約束してなんとか宥めていると、やがて階段を発見した。


 この階層に留まる理由もないので、10階層へ降りることにしてボス前の転移装置を解放する。広間を挟んだ反対側には両開きの大きな扉も見える。あそこがボス部屋だろう。


「これでボスへの挑戦権を手にした訳だ」

「9階層では1度も戦っていないから、余力は十分ね」

「オレもいつでもいいぞ」

「ボクもだぞ!」

「まさかオイラがボスに挑む日が来るなんてな……ヘヘッ、早く行こうぜ!」


 みんなも気合い入ってるみたいだね。よきかなよきかな。


 全員で広間を横切り、ボス部屋前へと移動してから最終確認を行う。


「安全第一だ。絶対に無理はしないようにね。無理だと思ったら即離脱。生きてさえいれば何度でも挑戦できるんだから」


 ……『帰ろう。帰ればまた来られるから』って誰かも言ってたしね。


「分かってるわ」

「よし、行こう!」


 扉に手を当てると、ゴゴゴ……と音を立てて勝手に開き始めた。


 警戒しながら、一塊になってボス部屋の中を進む。部屋は巨大な正方形をしていて、壁自体が発光しているのか明るさは十分だ。


 緊張感が高まる中。部屋の中心に変化が起こる……。


 どこからともなく黒いモヤのようなものが発生し、1ヶ所に集まり始めたのだ。それはやがて、人型のシルエットへと変化し、その正体を浮き彫りにしていく。


 あれは……


「オーガね。この赤い個体は、ダンジョンでしか確認されていないみたいよ」


 身長2mほどの全身真っ赤なオーガが、わずかに曲がった片刃の剣を持ってそこに佇んでいた。あの剣はたしかシャムシールだね。


 カトレアの解説を聞きながら、ボスに鑑定をかける。



───────────────


レッドオーガ


レベル10


魔法

なし


スキル

・パッシブスキル

【怪力】【頑強】【俊敏】


・アクティブスキル

【身体強化】【乱刀】【通打】【雄叫び】


称号:10階層・階層主


───────────────


 これは強い(確信)


 パワー・タフネス・スピードと、パッシブ3種の神器持ちの上にアクティブスキルもなかなか強力そうなものが揃っている。


 ……最低3周することが確定した瞬間である。後でみんなにお願いしなきゃ。


 と、その前に手早くオーガの情報を共有する。どうやらこちらが動かない限り、向こうも動き出さないようだ。謎の親切設計、助かる。


「って感じの能力だね」

「なるほど。……アクティブスキルでオレが知っているのは【身体強化】と【雄叫び】だな」

「私もよ」


 ビルとカトレアはその2つか。【身体強化】は言わずもがな、【雄叫び】は範囲内の敵を怯ませるスキルだね。


 【雄叫び】は来るって分かってさえいれば、簡単にレジスト(抵抗)できるので問題ない。ちなみに上位スキルに【威圧】などがあるらしい。


「ボクは【通打】も知ってるぞ!」

「お、ナイスゥ! どうして知ってるの?」

「お母ちゃんが親父に使ってたぞ!」


 興味本位で聞いたら、とんでもない答えが返ってきた。夫婦喧嘩でスキルを使うんじゃないよ。まぁでも、ゴルドフならいっか!

 ……俺はもし結婚するなら、絶対に冒険者じゃない人と結婚しよう。少しふざけた瞬間【通打】がとんでくる日常とか、嫌すぎる。


「それで【通打】ってどんなスキルなの? 大体予想はつくけど」

「あのな! 殴った時の衝撃が防御を貫通するらしいぞ!」


 うん、俺が知ってるのと同じだね。これを使ったリアラさんの、夫に対する不満が窺えて泣けてくる。

 ともかく、これはビルの天敵みたいなスキルだ。気をつけるように言っておこう。


 最後に、


「【乱刀】か。これは単なる乱れ斬りなのか範囲攻撃なのか、ちょっと判断できないな」

「見ない事には分からないわね」

「考えていても分からんのなら、とりあえず戦ってみないか? じっと見られていて居心地が悪いんだが」

「おっと、忘れてた」


 レッドオーガくんがまるで「はよせえや」とでも言うかのように、こちらの作戦会議をガン見している。待たせてごめんて。


「ビルの言う通りだな。まずは一回やってみよう。準備はいいか?」

『おー!』

「おっけ。いくぞ!」


 こちらが戦闘体勢に入ったのを見て、レッドオーガも身構える。


 動き出しは…………同時。


 10階層のボス、レッドオーガとの戦いが始まった。


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