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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第5章 ダンジョン都市『ファランダール』

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第56話 8階層にて、また少し【視て盗む】の仕様を知る


 イージーモードの7階層を楽々突破した俺たちは、そのままぶっ続けで8階層の攻略を開始した。


 そして早々にカトレアが魔物の反応をキャッチしたので、この階層から追加された魔物の可能性を考えて見に行くことにする。


 茂みに身を隠しつつ、魔物の様子を窺うと。


「8階層で追加されるのはこいつかぁ」

「記憶に新しいわね」


 フォレストコングくん2体が仲良く徘徊していた。


 そういえば、以前依頼で討伐した時は鑑定するの忘れてたな。ちゃんと初見の敵は鑑定する癖をつけないとね。どれどれ、【鑑定】。


───────────────


フォレストコング


レベル8


魔法

なし


スキル

・パッシブスキル

【怪力】【頑強】


・アクティブスキル

【投擲】


称号:なし


───────────────


「……ほーう」


 基礎能力を底上げしてくれる素晴らしいパッシブスキルが、なんと2つもあるじゃないの。これは是非いただかなければ失礼にあたる。ということで、早速コングを"視る"が……。


「…………あるぇ?」

「どうしたの?」

「スキルが盗めない」

「えっ……」


 どんなに凝視しても、一向に成功した時のあの感覚が訪れない。なして?


 「う〜ん」と頭を捻ってみると、ひとつの可能性に思い至った。


 俺がこの世界に転生した直後、【視て盗む】を料理人の世界に例えていたのを覚えているだろうか? それに当てはめてみると分かりやすい。


 例えば包丁の使い方や料理の盛り付けなんかは、先輩料理人から"視て盗む"ことで大なり小なり自分の技術にすることが可能だ。


 しかし、その料理人の筋力や敏捷性、五感なんかの身体能力を、視ただけで真似できるかと言われたら「無理」と答えざるを得ないだろう。


 つまり、


「いわゆる"技術介入"の余地が全く無いスキルは盗めない、か?」


 この考えはしっくりくる。おそらく正解だ。自分の中でひとまずの結論が出たところで、こちらを見つめるメンバーに声をかける。


「先にあいつらを処理しよう。その後に詳しく話すよ。カトレア、一瞬だけでいいから2体の動きを止めてくれる?」

「任せてちょうだい」

「他のみんなは待機で」

「お前たちだけで大丈夫か?」


 ビルが確認するように聞いてきた。


「うん。すぐに終わると思うから見ててよ」

「了解だ」

「みんなもいい?」


 全員が頷いたのを確認して、俺は静かに移動を開始する。


 そして、2体がちょうど横並びになるポジションに背後を取るように回り込むと、カトレアに合図を送った。


 頷いた彼女が魔法を発動する。


「【スタン】」


──ビリビリビリッ!


 行動を阻害することに特化した雷魔法が、フォレストコング2体に絡みつく。


『ウボァアッ!』


 強烈な痺れによって少しの間、行動不能に陥るフォレストコング。その致命的な隙を、俺は決して見逃さない。

 抜剣から流れるようにスキルを発動。


「【水鏡】」


 淡い水色の光を帯びた剣が、真一文字に振り抜かれる。


『ウホッ! ウ──』


 コング達の威嚇の声が、最後まで紡がれることはなかった。2体まとめて上半身と下半身がお別れした彼らは、光の粒子となって空中に溶けていく。


「やっぱ強いなぁ、このスキル」


 ……後に残ったのは、かつての依頼でギルドに提出したものと同じ『フォレストコングの尻尾』だけであった。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




「なるほどねぇ。あなたのスキルも『なんでもアリ』って訳ではないのね」

「そりゃそうでしょ。制約というか縛りは何気に結構あると思うよ、【視て盗む】」


 戦闘後、約束した通り【視て盗む】について考察したことを共有すると。


「オレもその考えは的を射ていると思うぞ」

「筋は通ってる!」

「俺はよく分かんねぇぜ!」


 こんな感じの感想がそれぞれから返ってきた。


 でもまぁ、多少の縛りがあったところで充分強力なスキルだからね。また少し【視て盗む】への理解が深まったって、前向きに捉えることにしよう。


「話はこんなところかな。みんなから特に何もなければ先に進もうか」

『おう!』


 ローグを先頭に俺達は8階層の探索を再開した。


 ……

 …………

 ………………


 その後の探索も順調に進んだ。


 罠はローグが発見・解除するので全く問題にならない。


 魔物に関しては、初めてエイプとフォレストコング混合の群れと遭遇した際は若干手間取ったものの、パーティー内の役割分担ができてからはスムーズだった。


 俺がデスキャッチボールでエイプを封殺し、落ちたところにローグがトドメを刺す。

 コングに関してはビルが挑発スキルで1箇所に集めてからカトレア・エルルの攻撃で殲滅。……この流れで問題なく対処できる。


 そしてついに、その時が訪れた。


「あ、レベルが上がったわ」


 何度目かの戦闘の後、カトレアのレベルが上がったようだ。


 これで俺たちのレベルは現在こんな感じになった。


 ローグがレベル10。

 俺、カトレア、ビルがレベル12。

 エルルがレベル15となる。


 なお、エルルは以前リアラさんにここで鍛えられたことがあるらしく、レベルが1人だけ高くなっている。


「おめでとう。8階層って意外といい狩場なのかもしれないね」

「ありがとう。普通はエイプの対処に苦戦するでしょうから、厳しいんじゃないかしら」

「オイラたちは二手に別れて、それぞれに集中できるからな。ここまで楽に狩れるパーティーは滅多にいねーと思うぜ」


 言われてみればそうだった。つまり競合の冒険者が少ないってことだ。ここはレベリング候補地に入れとこう。


「そういやエルルが前に来た時は、どこでレベル上げてたの?」


 今更気になってきちゃったので、聞いてみることに。


「9階層でひたすらコングとオークを叩いてたぞ!」


 9階層で追加される魔物はオーク、と。ドロップ素材は美味しい豚肉だな(確信)

 それで、レアドロップで霜降り的な良い肉が出るんでしょ? 俺は詳しいんだ。


「オレ達にはルインがいるが、その時はリアラさんしかいなかったのだろう? エイプの投擲対策はどうしてたんだ?」

「お母ちゃんが拳圧でエイプごと消し飛ばしてたぞ!」

「世紀末覇者拳王かな?」


 やっぱあのレベルまでいくと、いちいちやることが頭おかしい。フリードは軽く大爆発起こすし、リアラさんは拳圧で離れた場所にいる魔物を消し飛ばすし。少しは常識を学んでほしい。


「まあいいや。この階層は狩り場候補に入れておくとして、まずは9階層を目指そうか。行けるところまでは行っちゃおう」

「そうね。歩いてきた距離からして、階段はもう遠くないと思うわよ」

「オレも同感だ。ローグ、最後まで気を抜くなよ」

「了解だぜ!」



 予想通り、俺たちが次層への階段を発見したのは、それからまもなくの事だった。




【視て盗む】については結構疑惑の判定もあったりしますが、おおむねはルインの考え通りです。

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