第55話 デス☆キャッチボール大会開催のお知らせ
「やっぱり結構遠かったね」
「この木が大きすぎて、距離感が分かりにくかったわ」
現在地は世界樹っぽい巨大な木の根元に、ぽっかり空いた穴の前。もちろんこの穴の中に下層へ繋がる階段がある。
あれから何度かコボルトやグラスウルフに絡まれたが、増援を呼ばれる前に高火力で押しきるゴリ押し戦法に切り替えたので手間取ることはなかった。
「とにかくこれで今日の目標は達成だ」
「うむ。転送装置を解放したら、帰還してギルドに行くか?」
「いや、明日にしよう。帰る頃にはだいぶ遅い時間になってるだろうし」
「じゃあ帰ってご飯かー!?」
「そうだね」
1日フルで探索してたから疲労もあるだろう。夜はギルドも混んでいそうだし、明日に回そう。
「決まったのなら行きましょう。私も少し疲れたわ」
「ボクもだぞ!」
「エルルはめっちゃ元気じゃん」
そんな感じでワイワイしながら7階層へ降りていった。
※ ※ ※
地味に長い階段を降りると、目の前に広がっていたのはジャングルだった。
「森かぁ。これはまた戦いにくい環境を用意してきたね」
「はぁ……。木が邪魔で魔法が使いにくいから、森は嫌いなのよね」
カトレアがすごく嫌そうに言う。確かに魔法使いは森だとストレスがマッハになりそう。火魔法は火災になるから使えないし、他の魔法は障害物が多すぎて当てづらいからね。
「ボクのハンマーで吹き飛ばすぞ!」
「森林破壊が捗るなぁ」
大自然の天敵がここにいた。
ダンジョンの木々は、再生が異常に速いけど普通に壊せるらしいので、森で【ランドブレイク】とか使ったら大惨事が確定する。……後で注意しとこう。
「森林エリア最初のこの階層に出てくる魔物はエイプだぜ。木の上からやたら硬い木の実なんかを投擲してくる猿だ」
「なにそれ。害悪すぎる」
「オイラの元パーティーがこの階層で諦めたのは、コイツに対して有効な攻撃手段が無かったからだぜ」
「なるへそ」
小学生レベルの嫌がらせが殺傷力を持っちゃいました、みたいな感じかな。やられた側はたまったもんじゃない。
「まぁいいや。エイプをどう攻略するかは後で話し合うとして、ひとまず地上に戻ろうか」
「そうね。とにかくゆっくりしたいわ」
「オレは腹が減ったな」
「ボクもだぞ!」
「オイラもだぞ!」
そうと決まれば、いざ地上へ!
転移装置に帰還を念じると、視界は一瞬でダンジョン入り口の大転移クリスタル前に切り替わる。
「無事帰還、と」
辺りをキョロキョロ見回す。うん、ちゃんとみんないるね。
「それにしても、他の冒険者達も考えることは一緒か」
ゾロゾロとダンジョンから出ていく人の波を見て、前世の帰宅ラッシュみたいだなと思った。帰宅ラッシュの時間に帰れたことなんかほぼ無いけど。……くっ、嫌なことを思い出してしまった。
「当然よ。夜間に頑張る意味がないもの」
「眠いと集中力が落ちて、却って効率が悪いしな」
「それと、ダンジョンの中はいつも昼だからな。感覚が狂っちまうのが嫌って理由もあると思うぜ」
「なるほど」
ひとりで勝手にダメージを受けている俺に、みんなからの返事が届く。
たしかに言われてみればその通りだ。差し迫った事情でもない限り、夜に挑む意味はないよね。
そんな話をしながら俺たちも人の流れに逆らわず、どんぶらこ〜とダンジョンから出ていく。
さっさとおうちに帰って晩御飯を食べよう。
──帰宅後、夕食の席にて。
「「「「「いただきます!」」」」」
みんなできちんと感謝を捧げてから夕食が始まる。
今日の献立は市場で安売りしてたオーク肉のステーキとオニオンっぽい野菜のスープに果実水だ。
……時間が遅かったから、手抜きになっちゃってごめんよ。
そんな俺の内心など杞憂だと言わんばかりに、早速エルルとローグが元気いっぱいにがっついている。たんとお食べ。
後方腕組み保護者面をしていると、ビルからお声がかかった。
「それでルイン。エイプはどう対処するつもりなんだ?」
「ん? ああ。多分全く問題ないと思うよ」
「どういうことよ」
カトレアも加わってきたので、俺は自信満々にこう告げる。
「私にいい考えがある」
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翌日、7階層の探索を開始しておよそ10分が経過した頃。
「キキーッ!」
樹上から猿の鳴き声が聞こえてきた。エイプである。
「【気配察知】。……1体だけか。はぐれかな?」
周囲にコイツ以外の敵の気配はない。とりあえず【鑑定】を飛ばす。
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エイプ
レベル7
魔法
なし
スキル
・パッシブスキル
なし
・アクティブスキル
【投擲】【跳躍】
称号:なし
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おっ、所持スキルはたった2つしかないけど、どちらも有用そうだ。これは貰おう。
「それで、どうするの?」
「みんな俺の後ろに隠れて」
みんなが俺の後ろに下がっていく。……ビルがはみ出てるってレベルじゃないくらいコンニチワしちゃってるけど、これは仕方ないので諦める。
さぁ、『攻略法』を見せてしんぜよう。
「キキッ! キーッ!」
エイプがどこからともなく取り出した木の実を投げてくる。……うむ、【投擲】ゲットだぜ。
スキル獲得に喜ぶ中、とんでもない速度で迫りくる物体を俺は、
「ほいっ」
──パシッ
「キキッ!?」
なんなく掴み取った。
「こうかな? ふんっ!」
そして、それを【投擲】で投げ返す。
「キィッ!?」
まさかキャッチされた挙句、投げ返されるとは思っていなかったのだろう。大口を開けて驚愕するエイプのアホ面に木の実が突き刺さり、その衝撃で木から落下した。
「トドメお願い」
「…………はっ! ま、任せてっ。【アクアブレード】」
後ろのみんなも一様に呆けていたが、声をかけるとカトレアが最初に復帰。魔法で空中に水の剣を生成し、倒れているエイプの首を斬り飛ばした。
「とまぁ、あのくらいの速さなら余裕のよっちゃんです」
「「「「……」」」」
またドン引きされてしまった。
でも考えてみて欲しい。アイゼンリート戦では超至近距離から飛んできた棒手裏剣を普通に投げ返していたのだ。あんな遠くからの投擲なんか、俺にとってはキャッチボールとなんら変わらない。
「あなたの眼の良さをまだ甘くみていたわ」
「ルイン。言っておくが、よほど高レベルでもない限り今の速度に反応するのは無理だぞ」
「すごいぞ!」
「オイラが思ってたより、ずっとヤバい人なんじゃ……容赦なく腹パンしてくるし」
みんなにチヤホヤされてむず痒いぜ。あと最後のは自業自得です。
「とにかく行こう。奇襲と罠にさえ気をつければ、7階層はヌルゲーだ」
この階層は俺と相性が良すぎる。
ということで、エイプのドロップ品である尻尾(何に使うのか不明)を一応拾ってから先に進むことにする。
その後7階層を抜けるまでの間、エイプと俺による『デス☆キャッチボール』が幾度となく繰り広げられたのだった。
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ルイン
レベル 12
魔法
【点火】【氷の盾】【ウィンドカッター】【ヒール】【ライトニング】【ウォーターハンマー】
スキル
・パッシブスキル
【魔力操作】【剣術】【槍術】【危機察知】
・アクティブスキル
【視て盗む】【突進】【気配察知】【身体強化】【水鏡】【鑑定】【炎剣】
【投擲】【跳躍】
称号:転生者 格上キラー
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