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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第5章 ダンジョン都市『ファランダール』

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第53話 第5階層の攻略開始


ルイン復活


 俺が無我の境地にいる間に、第5階層へ到着した一行。


 まずは忘れないうちにと、この階層の転移装置を解放する。そして改めてフロアを見渡すと、目の前にはどこまでも続く青い空に緑一色の大草原が広がっていた。


 ここから先は草原エリアだ。


「ほー、いいじゃないか。こういうのでいいんだよ、こういうので」


 ダンジョンの中に青空があるのはおかしいだろって? 異世界転生モノのダンジョンなら、あって当たり前のことですがなにか?


「ちょっとふざけてる時の顔になってるってことは、元気になったみたいね」

「感謝しております」

「よろしい」


 ……ふざけてる時の顔ってなんだろう? 別にそんなつもりはないんだけど。


 若干気になったが、カトレアを筆頭にこの度ご迷惑をおかけしてしまった面々に平謝りする。


「みんな、ごめんよ。不甲斐ない俺を許しておくれ」

「ルインが平気ならもういいさ。切り替えていこう」

「元気になってよかったなー!」

「ヘヘッ、気にすんなよ」


 あったけぇ……。


「じゃあお言葉に甘えて切り替えさせてもらうね。この階層、草原があるだけで階段へのルートもくそもないと思うんだけど……。ローグには分かるの?」


 見渡す限りの草原だもん。目印なんかあるんか? とウチの斥候さんに聞いてみる。


「実はちゃんと攻略法が発見されてんだよ」

「ほう」


 『攻略法』、良い響きだ。……わたし、気になります!


「姐さん、探知魔法使えるんだよな?」

「【魔弾】」


──バチコーンッ!


「イッテェーーーッ!」


 カトレアを『姐さん』呼びしたローグのおでこに、ノータイムで【魔弾】が放たれた。手加減はしてるようだけど、初披露の魔法がそんな扱いでいいのか。


「今度ふざけた呼び方したら、雷飛ばすわよ」

「わ、わかりました……」


 かわいそうに。すっかり怯えちゃって……。


「それで? カトレアが探知魔法を使えるのと攻略法に、一体どんな関係があるんだ?」


 見かねたビルが助け舟を出してくれる。


「あ、ああ。この第5階層って、魔物は基本的に『待ち』なんだ」

「徘徊してないのか。なんで?」


 草原こそ徘徊しろよ。元気に野原を駆け回れよ。


「さぁ。それは分かんねぇ」

「そりゃそうだ」


 ダンジョンの魔物の習性なんて分かる訳ないか。


「今オイラたちがいるのは南の端っこだ。ここから探知魔法を使って、魔物の群れを北に辿っていくと階段に辿り着く」

「よくそんなギミック発見したな」


 発見者に尊敬の念を抱いていると、


「だいぶ前の話だけどよ。鍛治師の旦那にキレた冒険者が、この階層で憂さ晴らしに魔物を狩り尽くそうとした時に気づいたらしいぜ」

「……ん?」


 な〜んか、鍛治師の旦那にキレそうな人物に心当たりがありますねぇ……。


「その冒険者、今はAランクだってよ。聞いたことないか? "剛拳のリアラ"って」


 やっぱりな! 何してんだあの人……。


「ボクのお母ちゃんだぞ!」

「マジで!? エルルってあの人の娘だったのかよ! 今度サイン頼めねえかな!?」

「多分そのうち会えるから直接頼めー!」

「ホントかよ! ヤベェ、なんかやる気出てきたぜ!」


 待て待て待て、もはやツッコミが追いつかない! どうしよう、カトレア!


「知らないわよ」

「ですよね」


 めんどくさくなってきたのか、傍観する構えのようだ。


 それはそうと、普通に心の声に対して返事をし始めるようになってしまった。カトレアがどこまでいくのか、末恐ろしい限りである。


 とりあえず、落ち着くまで待つことにした。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




「じゃあ、改めて出発といこうか」


 落ち着いてきたところで、みんなに声を掛ける。今日は7層まで行きたいんだから、あまりのんびりしていられない


「オイラについてきてくれよ。この層の罠はパッと見じゃ分からねぇからな」

「草原の罠……ねぇ」


 いくつか思いつく物はあるが、ひとまず黙ってついていくことにした。魔物と不意に遭遇することがないので、かなり飛ばして走ることができる。


 ちなみに他の冒険者の反応もあるにはあるが、あちこちに散らばっているらしい。


 これは出口に向かうルートが10近くもある為だ。じゃないと渋滞したり、諍いが発生したりと、色々不都合が出てくるからね。



 ……うん、冒険者側に配慮されている感じ。ここまでのダンジョンの造りとか諸々を考慮すると、──これは『いるタイプ』のダンジョンだな。



 ある推測が確信に変わったところで、ローグが俺たちを止める。


「ストップ。これが罠だぜ」

「? どこにあるのよ」

「全く分からんな」

「おー?」


 見抜くことができるメンバーは、俺を含めて誰もいない。……これはすごい。本当に斥候がいないと攻略難易度が爆上がりだ。


「ほい」


 ローグが近くに落ちている石を、前方の地面に勢いよく叩きつけた。すると、


 ガコンッ! っと、地面に円形の落とし穴が現れた。みんなで仲良く覗き込んでみると、鋭利な刃物の数々がこれでもかと天へとその切っ先を向けている。


「……殺意高いね」

「ローグがいて良かったわ」


 他のみんなも冷や汗を流して黙りこんでしまった。あのエルルまでもが、だ。


「あの日、俺をスリのターゲットに選んでくれてありがとう」

「それは素直に喜べねーんだけど。情け容赦無くボディーにいいのを叩き込まれたし」

「ハハハ、こやつめ」


 チクリと刺してくるじゃないの。話を変えちゃおうね。


「とにかく行こう。ぐずぐずしてたらあっという間に日が暮れちゃうよ」

「……まぁいいや。それじゃ姐……カ、カトレア。魔物まであとどのくらいだ?」


 カトレアから一瞬、覇気が発せられたのを察し、慌てて言い直すローグ。


「もう数分もしないうちに遭遇するわ。準備はいいかしら?」

「もちろん」


 返事をして、ローグに目配せする。彼も頷いて、再び走り出した。




 やがて、草が少し低くなった広場のような場所に出る。中央付近には待ち構えるコボルトが5体。……5階層はコボルトだけの階層ってことかな。まぁ、問題はなさそうだね。


「一応見とくか。【鑑定】」


───────────────


コボルト


レベル5


魔法

なし


スキル

【ひっかき】【噛みつき】


称号:なし


───────────────



 全個体が同じステータスだった。


 何か使えるスキルを持ってたらいいなと思ったけど、色々な意味で使えないものしかない。もっと深い階層に行かないと、有用なスキルは手に入らないか。


 なら、もう用はない。


「さぁ、やろうか。エルル、デカイのをかましちゃって。撃ち漏らしが出たら各自、臨機応変に」

『おー!』


『グルルルゥ!』


 向こうもこちらの戦意に反応して散開しようとするが、エルルの一撃の方が早い。


「【ランドブレイク】!」



──ズガァァァン!!



 相変わらずとんでもない威力だ。……っと、2体も生き残ったか。俺とビルの方に向かってくるな。


 先に接敵したのはビルだ。


「【シールドバッシュ】」


──ゴキボキィッ!


 淡い光を帯びたビルの大楯が正面から叩きつけられ、コボルトの骨を粉砕する。……俺が思ってたシールドバッシュとちょっと威力が違うけど、気にしたら負けだ。



 さて、俺もここらでひとつ試しておきたいことがある。強敵にぶっつけ本番で使うのは怖いので、ここら辺の敵が手頃だろう。


「【炎剣】」


 ゴルドフに作ってもらった黒鋼の剣に炎が纏わりついていく。フリードのものと比べるとあまりにも貧弱な炎だが、それでもなお強い"力"を感じる。


 向かってくるコボルトを見据えると、


「はぁっ!」


 上段から真っ直ぐに、炎の剣を振り下ろした。


──ゴォォォッ!


『グ──』


 悲鳴は途中で途切れ、最後まで発せられることはない。

 まるで鉄を溶断するかのように、コボルトを燃やしながら真っ二つにした。


「これは思ったより使い勝手が良さそうだ」


 魔力消費も思ったほどじゃない。これは多分俺の熟練度が低いせいで、比例して炎の出力も低いからだろう。


 イメージとしては【水鏡】が鋭利な日本刀で斬る感じなら、こちらは超高温のバーナーで『焼き切る』感じだろうか。


 新たなおもちゃを手に入れた子供のように、ワクワクが止まらない。


 だって、ここまで厨二心をくすぐるスキルは中々お目にかかれるものじゃないからね。炎の剣とか、ドリルやパイルバンカーに並ぶレベルのロマン武器である。


 心の中でスキップしながら、みんなの所へ歩いていく。


 こうして、俺はまたひとつ新たな手札を手に入れたのだった。


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