第52話 ルイン、修羅に入る
ダンジョン生活2日目。
「ということでね。朝イチで2階層にやってきたのだ」
2階層からは洞窟エリアとなる。
さて、この階層にはどんな魔物が出るのかなんだけど。
ローグ先輩曰く、洞窟エリアの出現魔物はスライム系、バット(こうもり)系、ラット(ねずみ)系あたりのようだ。
「今日は1日中潜っていられるから、かなり進めそうね」
「おー!」
「ルイン、今日の目標はどの辺りだ?」
「そうだなぁ」
ビルからの問いに、少し考える。
「今回と次のダンジョンアタックで、10階層の転移装置を開放したい。後半は低階層ほどスムーズにはいかないだろうから、行けるようなら今日は7階層の転移装置まで行きたいかな」
「ふむ、なるほど。了解だ」
と、そこでローグが手を上げたので指してあげる。
「はい、なんだねローグくん」
「オイラが階段までのルートを把握してるのは6階層までだぜ。7階層は軽く見たことはあるけど、階段まで行ったことはねぇや」
「それでも十分よ。道案内は頼んだわ」
「おうっ!」
ちょっと申し訳なさそうにするローグだが、カトレアがすぐフォローを入れる。頼もしいね。
「ほいじゃ、今日も油断せずに頑張っていこう」
『おー!』
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「スライムばっかだな」
階段までの最短ルートを案内してもらいながら、今通り過ぎた魔物を見て俺は呟いた。
「2階層はスライムしかいねーぞ」
小さな声だったのに、ローグが耳聡くそれを拾ってくれる。
「そうなの?」
「2階層はスライム。3階層はケイブバットが加わって、4階層はさらに追加でビッグラットが出てくるぜ」
「なるほど。1階層につき1種類追加される訳ね」
「そうそう。洞窟エリアが終わったら、出現する魔物はまた変わるけどな。言わなかったっけ?」
聞いてないですね。どうせなら楽しみたいので、あまり深掘りしなかったっていうのもあるけど。
せっかくの初ダンジョンだからね。
油断はダメだけど、せっかく潜るなら楽しまないともったいないお化けが出ちゃうぜ。危険の少ない序盤くらいは許しておくれ。
……でも、ケイブバットか。こいつはなぁ。
「スライムもわざわざ倒すメリットが無いのよね」
話を聞いたカトレアが会話に参加してきた。
「一応試しに戦ってみたけど、カトレアの魔法1発で終わったしなぁ。時間と魔力を無駄にした感がすごかったね」
「ほんとよ。案の定ドロップもなかったし」
「ダンジョンで食っていくなら、せめて4階層くらいは余裕で探索できないと話にならねーからな。……おっ、階段が見えたぜ」
話していたら、階段に着いたようだ。ここで止まる理由も無いので、さっさと3階層に降りて転移装置を解放することに。
「さて、よいか? 今から3階層を探索する訳なんじゃが」
「いったい誰のマネよ。お祖父ちゃん?」
最近、カトレアがちゃんとツッコんでくれるようになってきた気がする。いいぞ。
「ここからはケイブバットが出るんだったか?」
「うん……そうだね」
「? どうしたルイン。何かあるのか?」
ビルが訝しんでいる。それだけ俺の表情が分かりやすかったのだろう。
「どうしたルイン! お腹痛いのかー!?」
「そうなのかルイン。少し休むか? オイラは構わねーぜ」
みんなにえらい心配されてもうた。こんな大事にされたら言い出しづらい事この上ないんですが……。
「大方、コウモリが苦手なんでしょ。大した理由じゃないのに、みんなが過剰に心配するから言い出しにくくなってるのよ、この子」
完全にバレてるじゃん。オカン並みの洞察力である。
「ふむ、そうなのか?」
「……」(コクッ)
「ハッハッハ! お前にも子供らしいところがあって安心したよ。それじゃあケイブバットの相手は俺たちがするか?」
みんなの温かい視線がこっぱずかしい。でも、心配はフヨウラ!
「問題ないよ。遠距離から【ライトニング】ブッパで処す。むしろこの階は俺がサーチアンドデストロイするから」
「ふっ、了解だ」
話はまとまったので、再びローグに道案内を任せ出発した。
これより我ら修羅に入る。
※ ※ ※
「しね(直球)! 【ライトニング】」
───バチバチィッ!
『キー!』
「よし、クリア。先を急ごう」
「そ、そうね」
「う、うむ」
「おー!」
「……す、すげぇ」
あまりにも鬼気迫る俺の顔に、全員ドン引きである。
……
…………
………………
『キ』
「墜ちろカトンボ! 【ライトニング】ゥッ!」
───バチバチバチィッ!
『キー!』
「出てこなければ、やられなかったのに!」
今の俺には歴戦のニュータ◯プ達が降臨している。どこから敵が出てきても、瞬殺する自信がある。
この後も、邪魔するものは全て薙ぎ払いながら、3階層を駆け抜けた。
「これで4階層にも、いつでも来られるようになったわね」
「ふーっ! ふーっ!」
「どうどう。ルイン、落ち着きなさい」
「ハッ! ……俺は一体」
正気を取り戻す俺。どうやらいつの間にか暴走モードに突入していたらしい。
「ふぅ、もう大丈夫だ。ごめんねみんな」
「いえ、それはいいんだけど……」
みんなを見ると、なぜか一様に微妙な表情を浮かべている。……え、なんです?
「普段のあなたなら絶対に気づいているはずなのに、まだ冷静じゃないのね」
「な……何を言って……」
カトレアの思わせぶりな発言の後にビルが続く。
「あのなルイン、さっきローグが言っていただろう。『2階層はスライム。3階層はケイブバットが加わって、4階層はさらに追加でビックラットが出てくるぜ』と」
「……」
……いやだ、聞きたくない。
「大丈夫だぜルイン! 洞窟エリアは4階層までだから、ここを抜けちまえばもうコウモリは出てこねーぞ!」
「……」
4階層までケイブバットが出てくるという事はつまり、この階層まではケイブバットが出現するという事です。
ひどいよ……こんなの……あんまりだよ……!
俺のソウルジェムが濁っていくのを感じる。
「仕方ないわね。私たちでルインをフォローするわよ。さっさとこの階層を抜けて、この子を正気に戻しましょう」
「賛成だ」
「おー! ルイン、元気出せー!」
「よっしゃ、んじゃ飛ばすから、しっかりオイラについてきな!」
みんなの献身的な介護により、俺が次に意識を取り戻したのは、5階層の転移装置の前であった。
……パーティーの大切さを、再確認したよ。ありがとうね。
何気にこの話だけで3階層も踏破している件。




