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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第5章 ダンジョン都市『ファランダール』

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第51話 はじめてのダンジョンアタック


 ところ変わってダンジョン前。


 有事の際にすぐ対応できるようにと、冒険者ギルドはダンジョンに隣接しているので1分と経たずに着いた。


 巨大な神殿を思わせるような建造物の入り口で、ギルドの職員さんに冒険者カードを提示する。


 無事に全員通過して建物内に入っていくと、野球ができそうなドーム状の空間が広がっていた。そして、中央にはデカデカとその存在感を示しているクリスタルが鎮座している。


「おー! 大転移クリスタルだぞ! 久々に見たけどデッカいなー!」

「すごいわね。どうやって出来たのかしら」

「最初からあったらしい。あのクリスタルもダンジョンの一部だそうだぞ」

「そりゃそうか。転移機能がそもそもダンジョンありきのものだもんね」


 会話しながら例の"転移スペース"の方を見てみる。


「次から次へと人が現れたり消えたりしてて、なんかシュールだな」

「慣れなさい」

「はい」


 雑に流されてしまったので、さっさとダンジョンに入ろう。


「俺たちは右も左も分からない、お上りさんみたいなもんだ。ローグ、案内してくれる?」

「ヘヘっ。まかせろルイン。1階層への階段はこっちだぜ。オイラについてきな」


 頼りにされたのが嬉しいのか、得意げに先陣を切るローグ。かわいいなこいつ。弟ってこんな感じなのかな。……年上だけど。


「なールイン! ボクに頼まなかったのはなんでだー?」


 ビルに乗っかりながら、エルルが不服そうに言ってくる。乗っかってるからだよ。


「あなたがビルに乗ってるからよ。エルルに任せたら、結局ビルに伝えることになるから2度手間でしょうが」

「なるほどなー!」


 俺がなにか言う前に、カトレアが全部代弁してくれた。


「いいから行くよ。ローグが『あくしろよ』って顔でこっち見てるし」


 急いで後を追いかけると、ある場所でローグが止まった。ってことはここがそうかな?


「ヘヘッ! この階段を降りればダンジョンの1階層だぜっ」

「ありがとうローグ」


 目の前には横幅が異様に広い下り階段。その先には高さ3m程もある両開きの扉が、開かれた状態で冒険者達を招き入れている。


 ここがダンジョンの入り口だ。


「確認しようか。今日の目的はダンジョンの空気感に慣れることと、なるべく階層を降りること。俺たちのレベルで低階層の狩りをしても美味しくないからね」

「目標はどこかしら?」

「まずはローグのレベルを俺たちに追いつかせたい。一応の目標は10階層の転移装置を解放して9階層でレベリングだな」


 ローグは現在レベル9だからせめて10、可能なら11まで上げたいね。みんなが慣れるまでは適正レベルぴったりじゃなくて、安全マージンを確保する方針だ。


「今日は時間的に軽くになりそうね」

「そうだね。とりあえず行けるところまで行こう。いいかな?」


 みんなを見ると頷いてくれる。


「無理と油断はしないように。んじゃローグ、先頭は任せたよ」

「おう! 3階層まではほとんど罠はないから、急ぎめで行くぜ。ルートは頭に入ってるから安心してくれよ」


 頼もしいね。


 走り出したローグの後を、俺たちは周囲を警戒しながら着いていくのだった。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 チュートリアル感溢れる石造りの1階層を駆け抜ける俺たち。


「おっと。みんな、魔物だ」


 不意に聞こえたローグの声に、一行はピタッと止まる。前方を確認すると、ゴブリンが3体こちらへ向かってきていた。まだこちらに気付いていないようだ。


「カトレアの魔力は温存したいし、エルルはオーバーキルすぎる。俺とローグでチャチャっとやろうか」

「おう!」


 示し合わせたかのように、2人同時にゴブリンの元へ駆け出す。俺たちのスピードなら一瞬でもう間合いだ。


「そらよっ!」


 存在感が希薄になったローグが、手に持ったダガーでゴブリンの背後から心臓を一突きした。……あれは【気配遮断】に【急所突き】かな。


「ふっ」


 俺も負けじと、スピードを落とすことなく放ったすれ違いざまの一振りでゴブリンの首を落とす。……あと1体。


「【ソニックスラスト】ォ!」


 もう1度ローグの方をチラリと見ると、スキルで最後のゴブリンの首を斬り裂いたところだった。


 恐ろしく早い一刀。俺でなきゃ見逃しちゃうね。…………カトレアさんに睨まれた。なんでネタに走ると彼女にはすぐバレるんだろうか。


 死んだゴブリン達は、光の粒子になって空中へ溶けるように消えていった。なるほど、こういう感じなのか。


「お疲れローグ。強いね」

「これくらいは当然だぜ。……ちぇっ、やっぱドロップは無しかよ」


 周囲を見渡したローグは、さして残念でもなさそうに言った。


「『やっぱ』ってことはゴブリンからはあまりドロップしないの?」

「ゴブリンからっていうか、そもそも低階層じゃほぼ落ちないぜ。だからオイラも、あんな状態で街を彷徨う羽目になったんだしな」

「あ〜、そういうことか」


 ローグの強さならソロでもそこそこ潜れるんじゃね?って、今の戦いで思ったんだけど、ソロで潜れるような浅い階層じゃドロップ自体が渋いんだね。納得したよ。


「それなら、ますます低階層に用はないね。さっさと奥を目指そう」

「おう!」


 他のメンバーに合流し、この辺の階層はドロップがほぼ無いので急ぐ旨を伝えると、異論は出なかった。

 なお経験者であるところのエルルパイセンは、この事を知らなかった。エルルらしいっちゃらしいけどね。


 その後も何度かゴブリンと遭遇した(1階層はゴブリンしかいないらしい)が、鎧袖一触で蹴散らしながらさっさと2階層への階段を目指す。



「にしても1階層なのに無駄に広いな」

「ドロップもほとんどないのに、どうしてかしらね」

「オレには嫌がらせとしか思えんな」


 ビルに完全同意。この階層を探索するメリットなんかないだろ。


「おっ、またゴブリン」

「オイラに任せろっ!」


 この階層はローグが大活躍だ。速攻で近寄って速攻で片付ける。もはや完全に作業である。戻ってきたローグを労ってから再び走り始めると、すぐに声がかかった。


「階段が見えたぜ!」


 たしかに前方に広い空間と、奥に階段らしきものが見える。やっと1階層は終わるらしい。


「ダンジョンをなめてたな。こんなに時間を食うとは思わなかった」

「そうね。今日はここまでにする?」


 1階層が広すぎて、外はもう夕暮れ時に差し掛かる時間だ。2階も同じ規模の広さだとしたら、撤収した方が良さそうだね。


「そうしようか。今日は様子見の意味もあったし、ちょうどいいか」

「帰ったらオイラが簡単な地図を描いてやるよ。少しは参考になるだろ?」

「それはすごく助かるよ」

「ヘヘッ」


 この日は2階層の転移装置を解放して帰還することにした。


 特に何があるわけでもなく、初めてのダンジョンアタックはこうして終わったのだった。


 ……2階層以降には期待していいんだよね?


面白かったらブクマしてもらえると嬉しいです

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