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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第5章 ダンジョン都市『ファランダール』

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第50話 ファランダールのダンジョンルール(基本編)





「まず先に言っておこう。お前達にペナルティ等は一切ないから安心しろ」


 ギルド長室の来客用ソファに腰掛け、黙ってフィアーナの言葉を聞いている俺たち。……真顔の俺だが、内心は少しビクビクしていた。


 なぜなら、ディーンくんをぶん殴って地面に叩きつけた際に、勢い余ってギルドの床が割れてしまったからだ。

 ……ちょっとだけね。ほんのちょびっとだけ。目を凝らしてよく見ないと全然分からないくらい。


「盛大に破壊された床の修繕費も、先に絡んだディーンのバカに支払わせるから、そんなにビクビクしなくてもいい」


 秒でバレてた。


 隣でカトレアも呆れているので、彼女にも筒抜けだったようだ。どうやら俺にポーカーフェイスは無理らしい。


「それじゃ、なんの話があるの?」


 床のことじゃなければ、心当たりなど全く無いので率直に聞いてみる。するとギルド長フィアーナは、カラカラと愉快そうに笑って答えた。


「親切心と興味、だな。あんな雰囲気の中で、長々とダンジョンの説明なんか受けたくないだろ?」


 ごもっともですね。


 冒険者達の怯えた視線を一身に浴びて、恐怖に染まった顔の受付嬢からダンジョンの情報を仕入れる。……うん、誰も笑顔になれない地獄みたいな空間だね。


「理解したようだな。あとは馬鹿どもに釘を刺してくれた礼の意味もある」

「見るからにギルド側の人間が、冒険者達にビビっちゃってたもんね」

「頭の痛い問題だよ。私が睨みを効かせてはいるが、効果は気休め程度だ。いかんせん、数が多過ぎる。……言ってしまえばダンジョンというものは、国中の輩が集まる誘蛾灯みたいなものだからな」


 他の町のギルドの治安が良い理由の1つでもある。


 要はファランダールとは『力こそパワー』が大正義の、修羅の国なのだ。……都市だけど。


「ちゃんとスタッフの待遇は良くしてあげてね」

「そこは弁えてるさ。だからこそ、怯えながらも辞める者はいないんだ」


 なら俺が言う事は特にない。


「興味の方は簡単な話さ。エルルのことだな」

「む!? ボクかー?」


 急に名前が上がって、エルルがビクッとした。


 今寝てたろ、君。……反応が学校の机で寝てる時に、急にビクッとなって起きるアレと完全に一緒だったもん。


「そうだ。エルルの母親のリアラとは、私が現役の頃からの親友でな。その親友の娘のパーティーメンバーがどんな人間か気になったのさ。特にルイン、君はルーカスのお気に入りでもあるみたいだしな」

「そういう繋がりがあったのか」


 なるほどね。……ヴォルクスのギルド長であるガチムチ男、ルーカスのお気に入りというパワーワードは聞かなかったことにする。


「ガルフ老のお孫さんとも、話してみたかったしな」

「お祖父ちゃんを知ってるのかしら?」


 そっちにも話が飛んじゃったよ。しかし、「一向にダンジョンの話が聞けんなぁ」と若干集中力を欠き始めた俺を、1発で引き戻す聞き逃せない単語が飛び出した。


「一方的に私が知っているだけだ。大魔術師ガルフは有名人だからな」

「有名人!? あのガルフが!?」


 何もない所で急に腰をやっちゃう、あのお爺ちゃんが!?


「なんだ、知らなかったのか? 今は縁あって"フェザーテイル"に所属しているらしいが」

「全然知らんかった。……カトレアは知ってた?」

「当たり前でしょ。その話は今度ゆっくりしてあげるから、いいかげんダンジョンのことを教えてもらいましょう」


 最後に気になることができてしまったが、せっかく俺たちにとっての本題に入ろうとしているので、流れに乗ることにしよう。


「じゃあ教えてもらえる?」

「ハハハっ。雑談ばかりになってしまって悪かったな。もちろん教えよう」


 紆余曲折あったが、ようやく基本的なダンジョン知識を伝授してもらう事ができたのだった。




     ※  ※  ※




「…………とまぁ、こんなところだな」

「……ふむ」


 聞いた感じだと、俺が今まで散々(異世界転生もので)学んできたダンジョンのルールとそこまで違いはなさそうだ。



 ファランダールのダンジョンのルールはざっとこんな感じ。


・1階層ごとに適正レベルはおよそ1ずつ上がっていく。このレベルはパーティー基準なので、人数によって多少ブレる。最高到達階層は、確認されているものでは40階層らしい。


・ボス部屋は10階層ごとに存在する。ボス戦では部屋の出入りは自由だが、死亡以外の理由で人数の増減があった場合、その時点でボスの状態が戦闘開始時までリセットされる。


・倒した魔物はドロップアイテムや素材を残してダンジョンに吸収される。その際、飛び散って服に付着した血液なんかも消える。

 なお、ドロップアイテムや素材は必ず落ちるわけではない。下の階層ほどドロップ率が上がる。


・転移装置は1階を除き、各階層の階段を降りてすぐの広間にある。1度は直接転移装置に触れないと、その階層に跳べないという安心のテンプレ仕様だ。

 地上から各階層に跳ぶ場合は、ダンジョン入り口前にある『大転移クリスタル』の近く、通称"転移スペース"で行きたい階層を念じればいいとのこと。


・時間経過によるマップの変化はなし。宝箱や敵魔物のリポップは確認されているが、その間隔はランダムである。

 しかし、そもそも宝箱自体が滅多に見つからないらしいので、あまり気にする必要はなさそうだ。



 出現する魔物なんかは、情報屋から買うなり自分で確かめるなりしろ、とのことだ。これは別に意地悪で言っているわけじゃなくて、それを生業にしている者達への配慮だろう。


「悪いな。冒険者ギルド側からは、本当に基本的なことしか言えんのだ」

「十分だよ。ありがとう」

「そう言ってもらえると助かる。これから早速潜る予定なのか?」

「う〜ん、そうだなぁ。みんなはどうしたい? 俺としては、今日中に様子見はしておきたいんだけど」


 このフィアーナからの問いには、俺の独断で答える訳にはいかないので皆に尋ねる。


「私はルインに賛成よ。レベル上げのために来たんだもの。低階層は早く抜けておきたいわ」

「オレも同意見だ。まだ時間はある。明日に回す意味もあるまい」

「ここで怠けてたらお母ちゃんに怒られるぞー!」


 エルルの言葉が重過ぎる。潜る以外の選択肢が、たった今消し飛んだわ。


 実際に過去にここで扱かれた結果、15レベルという俺たちの中でも頭ひとつ抜けた地点に彼女はいるのだ。


「オイラも早く強くなりてぇ。せめてみんなに並ぶくらいに」


 満場一致だね。


「それじゃあ行ってみようか。俺たち"アルゴスアイズ"の初ダンジョンアタックだ」

『おー!』


 早速ローグもこのノリに付き合ってくれているようだ。


 これにはルイン君もニッコリです。



面白かったらブクマしてもらえると嬉しいです

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