第48話 5人目のパーティーメンバー 【挿絵 ローグ】
新たなメンバーが加わります
空が茜色に染まり始め、そろそろ日が暮れようかという時間に差し掛かった頃。
「ぅん……ここは、痛っ!」
明るい茶髪の癖っ毛少年ローグが、ひとまず寝かせた俺のベッドの上で目を覚ました。お腹が痛むようだ。
「目が覚めた?」
「お、お前は……」
声をかけた俺を見て、気まずそうな顔をする。罪悪感はあるらしい。
「俺の財布をスろうとした君を、気絶させて連れてきたんだ。衛兵に捕まるよりはマシでしょ?」
「……」
「さぁ、なんであんなことをしたのか話してごらん? きっと力になれると思うよ」
俺がローグの立場だったら絶対に信用しないであろう、胡散臭い笑顔と声色で優しく語りかける。
その時、この部屋に爆音が轟いた。
───グギュルルルルルッ!
「……」
「……」
オーケー、動機は分かった。
「先にご飯を食べさせてあげるから、その後なら教えてくれる?」
「っ! い、いいのか!?」
「もちのろん」
そこまで空腹にならざるを得なかった理由がハッキリすれば、案外簡単にうちのパーティーに加入してくれるかもしれない。
まだ少しフラつくローグを支えながら、みんなの待つ1階のリビングへ向かった。
※ ※ ※
「美味かった! サンキューな」
みんなへの挨拶もそこそこに、一心不乱に爆食したローグはようやく落ち着いたのか、こちらを見て礼を言った。
「おー! めっちゃ食べたなー!」
「それだけお腹が空いてたのよ」
「気持ちいい食べっぷりだったな」
エルル、カトレア、ビルがそれぞれの感想を述べる。全て同意見です。
「それで? そろそろ話してくれる?」
「おう! 実は……」
──ローグの話はこうだ。
彼は現在Dランクの冒険者で、元々パーティーを組んでダンジョンに潜っていたらしい。
ローグを含め、男4人のむさ苦しいパーティーだったが、実力は最低限あったようで食べていく分には困ることはなかった。
しかし、パーティーを壊すのはいつの世も女性の存在である。
ある日、冒険者ギルド内でパーティーメンバーを募集している美人さんがいたそうだ。その美人さんは斥候職で、火力面の問題から1人でダンジョンに潜れないとのこと。
……ここまで聞けば、もうこの先がどうなるかなんて誰でも分かる。
そう、ローグのパーティーメンバーは見事に美人さんに惑わされた。それはもう、お手本のように綺麗に惑ったらしい。
そしてついに、デレッデレのだらしない面構えで彼らはローグにこう言った。
『お前の実力じゃ、もう俺たちには付いてこれない。新しく実力者の斥候を入れたから、お前は今日でクビだ!』と。
……追放系かな? 『もう遅い!』系かな? なんにせよ、また無理やりテンプレを持ってきたな。
とにかく、その女性と立場が入れ替わってしまったローグは、ダンジョンに潜れなくなってしまった。
どれだけ探しても、都合よくローグを迎え入れてくれるパーティーは見つからない。いよいよ所持金も底をついて途方に暮れた時、俺たちを見つけてしまう。
『どうせこのままでも飢え死にするんだ。ならいっそ……』と覚悟を決めて、いざ実行! した瞬間に、休養タイムを奪われたくない俺の怒りの鉄拳により、意識を失ったという訳だ。
「なるほどなぁ」
納得している俺の隣で、カトレアさんから正論パンチが放たれる。
「同情はするけど、冒険者の世界じゃよくあることじゃない? この街から出れば良かったのよ。人の財布を盗んでいい理由にはならないわ」
「お、オイラが悪かったって……」
ローグの心のちょっと柔らかい部分に、クリーンヒットしてしまったようだ。泣きそうである。
……それにしても、この場のメンツって1人称が見事にバラけてるな。ある意味奇跡だ。
「それでローグはこれからどうしたい? もし良かったら、俺たちのパーティーに入らないか?」
「ほっ、ほんとか!? 俺なんかが入れてもらっていいのか!?」
ここ最近のどん底生活で、少し卑屈になってしまっているのかもしれない。なので訂正してあげる。
「違うよローグ。こっちが『入ってほしい』んだ。……俺たち"アルゴスアイズ"の斥候になってくれ」
「っ! ……うっ、うっ」
泣き出してしまった。でも、それでもだ。確かに何度も頷いてくれている。
「……はぁ。あなたって人は」
「はっはっは! ルインらしいじゃないか」
「おー!」
まぁ雰囲気は悪くないし、いいか。
この瞬間、"アルゴスアイズ"に新たなメンバーが加わった。
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「改めて、オイラはハーフリングのローグだ!」
『よろしく!』
ちなみにステータスはこんな感じ。
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ローグ
レベル9
魔法
【ウィンド】【ウィンドアロー】
スキル
・パッシブスキル
【短剣術】【罠察知】
・アクティブスキル
【身体強化】【罠解除】【気配察知】【気配遮断】【ソニックスラスト】
【急所突き】
称号:なし
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ここで少し気になったので聞いてみる。
「ローグって何歳? ハーフリングだから年齢が分かりにくくてさ」
「ん? オイラは13歳だぞ」
「なるほど」
俺の1個上か。
……それにしてもこのパーティー、見た目の子供率がひどい事になってるな。ビル以外みんな子供に見えるじゃん。カトレアは微妙なラインだが。
もはや熊さんに群がって遊ぶ子供たちの図である。
「……深く考えるのはよそう。それでローグって今どこに住んでんの?」
「風の届かない場所」
「かっこいい言い方してるけど風とか言い出したってことは野宿でしょ、それ。建物の陰かなんかの。……まだ部屋は空いてるから、今日からはこの家に住もうね」
俺がそう言うと、瞳を輝かせた。
「いっ、いいのか!?」
「もちろん」
「サンキューな! この借りはダンジョンでの働きで返すぜ!」
てことでローグの使用する部屋もささっと決めて、リビングに再集合。
そこで俺たちの目的や、それぞれのできることなど情報の共有を行う。
「ほ〜ん。よく分かんねえけど頑張るぜ!」
との意気込みを語ってもらったところで、そのまま歓迎会に突入する事にした。
うちのメンバーはビルとエルルが大食いなので、カトレアと協力して準備にあたる。その傍らで、ビルがエルルとローグと遊んであげている。まるで休日のパパだ。
大量の料理をせっせと作って振る舞うと、ビルとエルルに混ざってローグもまた泣きながら食べていた。よほど今日まで地獄を見たんだね。
これからはきっと、良いことがたくさんあるよ。
よろしくね、ローグ。




