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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第4章 "炎"との邂逅

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第45話 修行に欠かせないテンプレスポットといえば?


 昨日は伯爵へ報告しに行ったりしていたので、村からの帰還後に全然休めていなかった俺は、ワガママを言って1日お休みをもらった。


 ……もらったのに。


 宿の食堂で、ちょっと遅い朝ごはんをもしゃもしゃ食べていた俺は、朝から襲来したエルルに無慈悲な一言を告げられた。


「は? エルルの母ちゃんが呼んでる?」

「おー! お母ちゃんがみんなを連れて来いって言ってるぞー!」

「……」


 たしかに会いたいとは思ってたけど、今じゃないんだよなぁ……。


 俺のお休み……終わっちゃった。


「…………準備してくるから、ちょっと待っててね」


 エルルに呼ばれてこの場に同席しているカトレアから、割とガチめに憐れみの視線を向けられつつ、外出準備をしに一旦部屋へ戻った。


 そして、身支度を整えながらふと思う。


「エルルの母ちゃんかぁ。いったい何の用なんだろ」


 というより、そもそもどんな人なんだろうか。


 ……以前『アマゾネスみたいな人だったりして』とか失礼なこと考えちゃったんですけど。

 ラノベとかでありがちな、超直感的なナニカでそれがバレたんじゃないだろうな。


 戦々恐々としながらも準備が完了した俺は、1階で待つ2人と合流を果たす。


「お待たせ」

「おー! じゃあ行くぞー!」

「ビルとは現地集合だそうよ」

「ビルの宿、エルルの家のそばだもんなぁ」


 一瞬でお別れすることになってしまった休日に、後ろ髪を引かれる思いが無い訳ではないが、いつまでもくよくよしてはいられない。


 俺たちはゴルドフ鍛冶屋にて待つ、エルルの母ちゃんに会いに『渡り鳥の止まり木』を後にした。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 そんなこんなで鍛冶屋の前まで行くと、デッカい熊さんが既に待ち構えていた。軽く挨拶を交わした後、揃って店内へ足を踏み入れる。


「ちわーす」

「キチンと挨拶もできんガキは帰…」


 ゴルドフと恒例になりつつある、無駄なやりとりが始まろうとした瞬間。第三者の声が割って入った。


「おい、アタイの客だぞ」

「す、すまん! こいつが「俺が来たときはお願いだからこうしてください」って、土下座しながら泣いて頼むもんだから仕方なくっ!」


 おい。流れるように嘘つくな。


「黙れ。アンタの戯言は聞き飽きてるんだよ。アタイの前でふざけた事をほざくと、どうなるかは分かってるはずだろう?」

「……」


 ゴルドフをいとも容易く黙らせた。このエルルそっくりの女傑こそが母ちゃんだろう。……いいぞ、もっとやれ!


「すまなかったね。ここはバカがいるから落ち着かないだろう? 奥で話そうか」

「はい姐さん」


 なんでも、奥に応接室があるらしい。ゴルドフの性格的に全く使ってないらしいが。俺たちはエルルの母ちゃんの後を、カルガモの子供達のようについていった。



     ※  ※  ※



「さて、自己紹介といこうか。アタイはエルルの母親で、Aランク冒険者のリアラだ」


 実はさっき見た瞬間、フリード級の強者の雰囲気を彼女から感じた。

 なのでAランクと言われて、納得はあっても驚きはない。


 改めてリアラさんを見る。


 赤茶色のロングヘアで、鋭いつり目が印象的な女性である。体型はやっぱりロリで、エルルと並ぶと姉妹みたいだ。



 続けて俺たちも自己紹介をして、さっそく本題に入ることにする。


 ……1日丸ごと休むのは諦めたが、俺にはまだ半休という可能性が残されているのだ。手早く済ませよう。


「それでリアラさんは、なんで俺たちを呼んだの?」

「エルルに聞いたんだが、お前ら『炎剣のフリード』とやり合ったんだってな」


 昨日俺が伯爵に報告しにいっている間に、カトレア達もエルルに話してきたみたいだから、そこから聞いたのだろう。


「その戦闘の様子を詳しく教えな」


 Aランクの先達から助言がもらえるかもしれないのだ。喜んで話そうじゃないか。



 ……かくかくしかじか。



「なるほどねぇ。あんた達には悪いが、母親としてはエルルがその場にいなくて良かったよ」

「でしょうね」

「……お母ちゃん」


 俺は共感。エルルは複雑な表情を浮かべる。


「しかも、ルインは名前まで覚えられたんだろう? また戦いになる可能性は十分考えられる」

「……でしょうね」

「だから今のまま、エルルをあんたらのパーティーに参加させておくのは少し怖い」


 リアラさんの表情から、これは単純にエルルをパーティーから抜けさせろって話じゃないだろうな。となると、


「もしかして良い修行場でも紹介してくれる、とかですか?」


 リアラさんが驚きに目を瞠る。


「へぇ、大したもんだ。この子に聞いてはいたけど、アンタ本当に察しがいいんだねぇ」


 リアラさんがエルルの頭を撫でながら言う。エルルは目を細めて気持ちよさそうだ。……とても微笑ましい光景なんだけど、エルルって今年で21歳なんだよなぁ。


「御明察だ。ヴォルクスの西門を出て、南西に馬車で1週間ほどの距離にある都市のことは知っているかい?」

「ええ」


 もちろん知っている。いつか絶対に行こうと思っていた場所だ。


 異世界ものには絶対に欠かせないテンプレ・オブ・テンプレ。


 それは、



「『ダンジョン都市ファランダール』ですね」



 そう。言わずと知れた、あのダンジョンである。

 リアラさんはニヤリと笑って俺たちを見渡し、そして言った。


「"アルゴスアイズ"には、しばらくダンジョン都市で生活してもらう。とにかくダンジョンに潜ってレベルを上げてきな」


 ……おっと、嫌な予感がしてきたぞ。


「えーっと、いつからで?」

「こういうのは早い方がいいだろう? 出発は明日だ。住む場所はアタイが提供するから、今泊まってる宿の手続きや持っていく物の準備、あとは挨拶回りなんかも今日のうちに済ませときな」

「アッハイ」


 予感的中。この瞬間、俺の半休も消えてなくなった。世の中って残酷だね。


「私、この前の戦いではほとんど何もできなかったもの! 必ず強くなってみせるわ!」

「オレも次こそは、あの攻撃を防いでみせるぞ!」

「ボクもだぞ!」


 あかん、みんな今までで一番やる気が迸ってる! 俺のお休みが完全に消滅したことなんて、頭の片隅にも残っちゃいない。


 もう今更、お休みをくださいなんて俺にはとても言えない。……えぇい! もうどうにでもな〜れ!


「よーし! みんなで強くなって、次に会ったら『炎剣のフリード』を絶対にボコボコのボコにするぞ!」

『おー!』


(……俺の休日を奪った恨みは必ず返すぞフリード! 貴様だけは何があっても絶対に許さんからなぁ!)


 憎しみの全てをフリードに向けることによって、心の安寧を取り戻した俺は、早速ダンジョン都市『ファランダール』へ向かう準備に取り掛かるのであった。



 ……人、これを逆恨みという。



第4章はここまでとなります。

ここまでお読みいただきありがとうございました。


第5章公開日に登場人物紹介も投稿しますので、

よろしければそちらもご覧ください。


今後とも『その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜』をお楽しみいただければ幸いです。

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