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その転生者はスキルも魔法も【視て盗む】〜異世界転生ものが大好きな男の異世界転生〜  作者: 空茶日
第4章 "炎"との邂逅

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第44話 約束のお茶会

セレナ回です


 シーズ村からヴォルクスへと帰還した翌日。


 もはやお馴染みになりつつある領主館の応接室にて、今回の依頼についての報告を行った。


「『炎剣のフリード』、か。またとんでもない大物が出てきたものだね」



 今回館を訪ねたのは、各パーティーを代表して俺とアルの2人だけだ。


 みんなの疲労がちょっと無視できないレベルだと感じたので、他のメンバーにはお留守番してもらった。

 逆に伯爵サイドは、グレースの他に1人増えている。


「坊っちゃま。いかがなさいますか」


 伯爵を坊っちゃま呼ばわりする白髪の老騎士。彼こそがダグラム伯爵家騎士団が誇る、騎士団長ステイルザードである。


「さっきルイン君も言ってたけど、しばらく大掛かりな行動は起こさないだろうね」

「ふむ。帝国側は抜け道の砦建設に注力するとみて、よろしいですかな?」


 こちらをチラと見ながら、伯爵へ問う。


「そういうことだ。帝国側も軍単位で森を抜けてくるのは難しい。もし仮に少数で村を占拠してきたとしても、すぐに私たちに奪い返されるのがオチだからね」

「だから地盤を固める、と」

「これまで7年間も水面化で活動をしてきたんだ。万全の準備が整うまで待つことくらい、なんてことはないだろうさ」


 なら、最低でも砦の完成まではこちらも準備する時間があるということか。できれば建設そのものを阻止したいけど、無理だろうな。


「その間にこちらも我が軍だけでなく、在野の戦力を集めよう。いざという時に、王国上層部がまともな戦力を寄越してくれるとは思えないしね」

「滅多なことを言うものではありませんぞ。……同感ですがね」


 2人揃って嘆息する。グレースさんは直属の上司がいるからか、会談が始まってからずっと空気に徹しているな。


「とにかく話は分かった。本当にご苦労だったね。これで依頼は完了だ」


 依頼完了証明書にサインをしてから渡してくる。


「ありがとうございます」

「また何か頼むとしても、少し時間が経ってからになるだろう。その時もよろしく頼むよ」

「分かりました」


 俺とアルが退室しようとすると、思い出したように伯爵に引き留められる。


「あぁ、そうだ。ルイン君は帰る前にセレナに会ってやってくれ。あの子、ずっと楽しみにしてたみたいでね。約束したんだろう? ……今度、お茶会するって」


 ……圧が、圧がすごい。アルはその隙に退室しやがった。絶対に許さんぞ!


「は、はい。お約束しました」

「ほ〜う。女の子と仲良くなるの上手だねぇ君。本当にすごいや。私じゃとても君のように、あちこちで女性を口説くことは出来ないよ。今度是非コツのひとつでもご教授願いたいものだね」

「め、めっそうもござらぬよ」


 ここにきて、いきなりピンチに陥る俺。そこへ思わぬ助け舟が。


「坊っちゃま。ダグラム伯爵家当主ともあろう者が、みっともない真似はやめなされ」

「ス、ステイルっ……」

「父親なら娘の幸せのために何が最善か、常に考えて行動されるがよろしいでしょう」

「……くっ。その通りだ」


 しゅ、しゅごい。あの伯爵がタジタジになってる。


「ルイン殿。セレナお嬢様のことをよろしく頼むぞ。……グレース! お主はいつまで空気の真似事をしとるか! ルイン殿をお嬢様の元へ案内せよ」

「ハ、ハッ!」


 グレースさんはビックゥ!ってした後、綺麗な敬礼で返事をした。


「ルイン殿、こちらへ」


 こうして俺は、やっと魔の応接室からの脱出を果たすことに成功した。ステイルザードさん、かっこよすぎん? ガルフよ、こういうのだぞ。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「ルイン様! ようこそお越しくださいましたっ!」

「こんにちわ。セレナ様」


 グレースさんに案内されて、領主館の裏手にある庭園まで行くと、満面の笑顔のセレナ様に迎えられた。


「さあっ、こちらへどうぞ」

「ありがとうございます」


 そのままガゼボに用意されている席に着く。対面に座るセレナ様の斜め後ろにグレースさんが控える。


「失礼します」


 どこからともなく現れたメイドさんが、カップに紅茶を淹れてくれる。途端に良い香りが辺りに広がった。


「ごゆっくりどうぞ」


 そして音も無く去っていくメイドさんを見て、俺が考えたことはただひとつ。


(今のメイドさんも戦えるのかな?)


 だった。


 だって異世界モノのメイドさんって大体「メイドですから」とか意味不明なこと言って鬼強いじゃん。この世界でもそうなのか、気になるってもんよ。


「ルイン様? よろしければ、こちらのクッキーも召し上がってくださいね」


 おっと、変なこと考えてる場合じゃなかった。


「それでは失礼して」


 一言入れてから紅茶を口に含む。……お?


「……いかがですか?」

「美味しいですね、これ。初めて体験する味です」

「ふふっ、村にはあまり流通する物じゃないですからね」

「そうですね」


 村どころか前世でも味わったことがない程だ。フルーティーな風味が強くて甘い感じ。この世界の紅茶ってこんなに美味いのか。どこで買えるのか後で聞いておこう。


「ところで、ルイン様も最近忙しそうでしたが、何をしていらっしゃったのですか?」

「あ〜、あっちこっち飛び回ってたかもしれませんね」


 話しても問題ない範囲で、最近何をしていたか教えてあげる。女の子にはつまらない話なんじゃないかと思ったのだが、終始ニコニコと聞いてくれた。


 なんだろう。こんなにもゆっくりした時間を過ごすのは、一体いつぶりだろうか。癒しだ。癒しの時間がここにある。


 美味しいお茶にお菓子も食べながら、他愛もない雑談に興じる。これだよこれ、俺はこういう人生のために頑張ってるんだよ。

 格上キラーよ、見てるか? 決して、この身が朽ち果てるまで格上と戦うために生きてるんじゃないぞ。


 完全に気を抜いて、リラックスモードに突入している俺。


 その姿をセレナ様はニコニコ見ているが、瞳の奥に獲物を見るかのような鋭い光が宿っていることに、俺が気づくことはなかった。



     ※  ※  ※



「もうこんな時間か。そろそろ行かないと」


 安らぐ時間というものは、あっという間に過ぎていく。


 名残惜しいが、そろそろ宿に戻らなくては夜になってしまう。みんなも心配するだろうし、帰らなきゃ。


「残念です。またお時間ができたら、私とお茶してくださいますか?」

「もちろん。今日はありがとうございました。楽しかったですし、疲れも取れた気がします」

「ふふっ、そう言っていただけると私も嬉しいですっ」


 冗談抜きで疲労が回復してる気がする。癒しの時間をありがとう、セレナ様。


「では、今日のところはこれで失礼しますね」

「ええ。ごきげんようルイン様。グレース、玄関まで送ってあげてね」

「かしこまりました」


 そうして俺は、グレースさんに送ってもらい、領主館を後にした。


 父親と話して疲れ、娘と話して癒される。よく考えたらマッチポンプじみた1日だったな、なんてことを帰り道で思ったのだった。



セレナは結構したたかです。

あと、このメイドさんはもちろん鬼強いです。メイドですから当然ですね。

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