第43話 激戦の爪痕
フリード戦後のお話です。
「……ん。……ここは……俺の家か?」
目を覚ますと12年間慣れ親しんだ、我が愛用の木製ベッドの上だった。どうやらビルは約束通り、村まで俺を運んでくれたらしい。
「さて、あれからどうなったのか」
とにかく現状を把握しないと。ベッドから起き上がって自分の体をチェックし、異常が無いことを確認する。
(ありがとう、エカテリーナさん。あなたの回復魔法のおかげで助かりました)
ヴォルクスのリーン教会へ向けて感謝を捧げていると、部屋の扉が開いた。
──ガチャ
「ルインっ!」
部屋に入ってきたのは母セラだ。
俺が目を覚ましていることに気付いた瞬間、フリード並の速さで接近してきて俺を抱きしめる。
「目を覚ましたのね。良かったわ」
「魔力切れで気を失ったんだって? 心配したよ」
さらに、兄ウィルも部屋に入ってきた。
「ごめん。もう大丈夫」
「もう。あんまり無理しちゃダメよ? あ、他の皆さんは宿屋で休んでるわ」
「みんな火傷を負っていたようだけど、何があったの?」
これは、まだ言えないかなぁ。依頼上の守秘義務とかもあるし。
「まだ言えないんだ。でも村の危険とかじゃないから、心配しないで」
「そう? じゃあ言えるようになるまでは、僕ももう聞かないよ」
「ありがとう兄さん」
相変わらず出来た人である。
「それよりもルイン。目が覚めたなら、皆に顔を見せてあげなさいね」
「あ、そうだった。じゃあちょっと行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
母の声に背中を押され、家を出て宿屋へ向かった。
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宿屋に到着した俺が見たのは、大なり小なり負傷している仲間たちの姿だった。
食堂に集まって、今後の話し合いでもしていたのだろうか。俺に気付くと笑顔を見せてくれた。
しかし、やはりと言うべきかアルの姿は見当たらなかった。ベッドで安静にしているのだろう。
爆心地付近にいたのだから無理もないよね。仲間達へはこの後回復魔法をかけることを約束し、ガルフを連れて彼らの使っている部屋へ。
入室すると、痛々しいアルの姿が目に入ってきた。
「思った以上に酷い状態だね」
「儂とカトレア、あとテレーゼは離れていたから幾分かマシじゃが、アルは酷いもんじゃ」
「アル以外のみんなも十分重傷だよ。先にアルを回復させるから、ちょっと待ってて」
「頼むぞぃ、ルイン坊」
アルが横になっているベッドに近づく。
「……ルインか。すまん、頼めるか」
「もちろん。遅くなってごめんね。【ヒール】」
柔らかい光がアルの火傷を癒していく。
「……1回じゃダメだね。もっかい【ヒール】」
再度の癒しの光。これでようやく目に付く火傷はなくなったかな。
「サンキュー、ルイン。それと、あの時は助かった。悔しいが。正直俺たちは手も足も出なかったわ」
「そもそも勝負になってなかったもんね」
「レベルにモノを言わせた身体能力で接近。炎剣による超威力の1撃で、辺り一帯丸ごと薙ぎ払う。シンプルだからこそ強いって訳だ」
「だね」
盗んだはいいけど、今の俺が【炎剣】を使ってもあんな威力は出せないし、数発で魔力切れになるだろう。レベルが足りんな。……何回目だよコレ思うの。
でも、言い訳をさせてほしい。
…………次から次へと、イベントが起こりすぎなんだよ!
まるで客離れを防ごうとするソシャゲみたいに、絶え間なくイベントがあるからレベリングする暇がないんだよ。
くそっ、時間さえ……時間さえあれば!(チラッチラッ)←リーン様に向けて必死のアピール
よし、言い訳タイム終了。
「他のみんなにも【ヒール】かけてくるね」
「分かった。それが終わったら、今後のことについて話そう」
そうして俺は、既に元気なビルを除いた全員に、回復魔法をかけて回ったのだった。
※ ※ ※
「さて、これから俺たちがするべきことだが……」
みんなが無事に回復したので、もはや恒例となりつつある宿屋の食堂にて会議を開催することになった。司会進行はやはりこの男、アルである(激うまギャグ)。
「ガーランド様に報告するのが最優先でしょ。というよりも、それ以外になんかすることあったっけ?」
心当たりが何もなかったので聞いてみる。
「ないな。だが、ガーランド様には一刻も早く知らせたい。怪我が治ったばかりのところ悪いが、明日にでもヴォルクスに向けて出発しよう。この話をしたかったのがひとつ。あとは、あの戦いが終わってから全員で顔を合わせてないだろ?」
「あぁ、そういうこと」
「どういうことよ?」
納得した俺と違い、よく分かっていないカトレアに教えてあげる。
「今回の依頼も無事に生き残れたぞって、お互いに確認するんだよ。『ちゃんと自分達の命がここにある』って自覚するのは、冒険者にとって大事な事だからね」
「そうなの?」
「そう。命の価値を軽く見る奴は早死にする。そういうことでしょ、アル?」
「正解」
「ほっほっほ」
俺の答えにアルとガルフは満足気だ。テレーゼは半分寝てるな。……今の話聞いてた? ちゃんと無事に生き残れたぞって、一緒に確認しようね。
前から思ってたけど、こういう会議でテレーゼはほぼ喋らない。少しでも話が難しいと、お昼寝を始めてしまうのだ。犬獣人だから仕方ないね。お昼寝大好きだもんね。
俺の思考が脱線したところで、アルが早々に会議を締めにかかる。
「まだ疲れも残っているだろう。今日は早く休めよ。ルインは家族に明日の出発を伝えておけ」
「了解。この後行ってくるよ」
それぞれが自分の部屋に戻っていく。休むようにとは言われたが、明日の準備など色々とやることがあるのだろう。
「さて、俺も行くか」
再び実家へと足を向けた。
「ただいまー」
「おかえりルイン! 目が覚めて良かったな」
家のドアを開けると、さっきは居なかった父さんがお出迎えしてくれた。
「父さん、さっきは畑に行ってたの?」
「おう。今日の作業はもう終わりだ」
「お疲れ様」
父さんを労っていると、母さんと兄さんも集まってきた。ちょうどいいから今話しちゃおう。
……
…………
………………
「ってことで、明日ヴォルクスに出発するね」
「忙しないわねぇ……」
「ルイン、そんなにあくせく働いていて体は大丈夫なの?」
「大丈夫だ、問題ない」
すごい心配されてしまったが、なんとか理解を得ることに成功した。
また近いうちに村へ顔を出すことを約束し(母さんにさせられた)、ようやく俺も宿で休むことにする。
宿の部屋に入ると、やはり疲労が溜まっていたのだろう。すでにビルがベッドの上で、窮屈そうに丸まって寝ていた。
……なんか冬眠中の熊みたいだな。
失礼なことを考えながら、俺も自分のベッドに潜り込む。伯爵に報告して、そのあとはどうなるか。
「どうせ忙しくなるんだろうな」という諦めの中、俺は眠りについた。
新イベント「ガタッ」




